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夏ノ桜  作者: あかねっしー
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〜ナツノサクラ〜

こんにちは。初投稿になります、あかねっしーです!(ゝω・´★)

初投稿なので、わからないことが多々ありますが、がんばっていきたいと思います!

ぜひ、よろしく願いしますヽ(´∀`*)

 1.記憶


  私は無機質な空間にいた。

  どこまでもどこまでも続くかと思われるような、ただひたすら白い空間。

「白よりも黒の方が好きだな……」

  誰にともなく呟く。呟く言葉など何でもよかった。そうしなければ…自分の存在を意識しなければ、この無機質な空間の一部になってしまいそうだった。

  そうだ、自分の存在。身体はあるだろうか。自分の顔は覚えているだろうか。年齢はいくつだっただろうか。様々な思いが駆け巡る。

  まずは髪。元は黒だったけれど、今は明るい茶色。人生で初めて染めたのだ。長さは、肩より下くらいのセミロングだ。元はストレートだったけれど、今は緩く巻いていたっけ。体型は小柄な方で、太ってはいなかった…はず…。語尾が尻すぼみになってしまうのは気のせいだ。年齢は17歳。高2だったか。

  ここまで考えて、もっと単純な方法があったことに気がつく。

  名前だ。何だったか……そう、夕音だ。朝霧 夕音。読み方は、あさぎり あかね。自分の存在を証明してくれる存在を得たことで、私は安心した。

  そしてふと、ここは空に浮かんでいるのだろうと感じた。地上ではありえない、妙な浮遊感がある。

  いつからここにいるのか。

  自分は立っているのか、横になっているのか。

  はたまた、座っているのか。

  そして……ここは何なのか。

  悶々とただひたすら、疑問が浮かんでは消え、また浮ぶ。そんな、果てしない思考の海をさまよっていると、空間に変化が現れた。何だか、歪んでいる。

  すると、1人の少女が現れた。小学4年生くらいに見える。誰だろうか。何だか見たことがあるような気がする。色白で、腰くらいまでありそうなストレートの黒髪を、高い位置で2つに結んでいて、体格は小柄で………あ。

  …自分?…いや、違う。私のセミロングの髪の長さは、変えたことがない。…誰だ?

「忘れたの?」

  突然その少女が声を発したので、考え込んでいた私は驚いてしまった。

「え?あ、あ〜……うん…ごめん…ちょっと思い出せないかな……。」

「……そっか。」

  小4の子どもがしょんぼりしているのを見ると、何だか胸にぐっとくるものがある。これが罪悪感…。今まで静かだったのが気にならなかったのに、沈黙が痛い。私は耐えきれず、その子に話しかけた。

「ね、ねえ。名前、なんて言うの?」

「××× ×××だよ。」

  先ほどまで、この子の声は確かに聞こえていた。恥ずかしがっているのだろうか。緊張を解くために、自分から名前を言ってみる。

「あ、そうだよね。自分の名前から言えって感じだよね。私は、朝霧 夕音だよ。えっと…もう1回聞いていい?名前、なんて言うの?」

「え?だから、××× ×××だよ。」

  やはり聞こえない。何かおかしい。そう違和感を感じ始めた瞬間。

  キィィィン………!!ボーーーーー!!!!

  突如、不協和音がした。電車のブレーキのような、黒板を爪で引っ掻いたような、そんな音だ。そして何も無かった空間に、もくもくと霧のようなものが湧いてきて、汽笛のような大きな音がした。

「な、何?すごく眠くなってきた……。」

  何ということだろう。こんな不協和音の中にも関わらず、私は眠くなってきてしまった。

「なんで?こんな早く来るなんて聞いてないよ!」

  すると同時に彼女が焦り始めた。何をそんなに焦っているのだろう。来る?何が?

「ねえ、私のこと思い出して!」

「え、思い出す?だって、初対面でしょ?」

「違うよ、違うの!」

  もう彼女は、ほぼ叫んでいるに等しい。さっきから続く、大音量の不協和音のせいだ。私も実際、彼女の声が断片的にしか聞こえていなかった。

  すると彼女は、こちらに何かを投げた。私はもう、眠気で立っているのがやっとの状態だったけれど、彼女の必死さに押されて、投げられた物に手を伸ばす。

  そして、掴んだと思った瞬間、糸が切れた操り人形のように倒れた。

  遠ざかる意識の中で私が見たものは、黒い蒸気機関車から降りてきた車掌らしき人が、彼女の腕を引っ張って力ずくで汽車の中へ押し込めているところだった。

「……や、やめ…て……!」

 必死に声を出したけれど、掠れて大して声が出なかった。

 ジリリリ……ジリリリ……

 車掌が鳴らしたのだろう、発車のベルが響き渡る。

 彼女を乗せて動き出そうとする蒸気機関車の車窓から、彼女が必死に顔を出して口を動かしている。

  はやま きりね……?…はやま……羽山 霧音!

  私は思い出した。さっきの彼女のことを。あの子は私のよく知っている人物だった。

  あの子は……私の親友だった!

  最後に思い出した瞬間、真っ逆さまに落ちていくような感覚に襲われた。

  今、思い出したことを忘れないように、あの子からもらった物をしっかり握りしめた。そして、対照的に私は意識を手放した……。




 

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