第22話 巣立つ時
時間というものは不思議なもので、楽しいと思う時間はあっという間に感じ、逆に苦痛な時間はこれでもかというほど長く感じるものである。
精霊誕生から百年の月日が流れた。
精霊たちとの家族ごっこはまだ続いている。
百年なんて時間は世界樹である俺にとってはほんの一瞬であるが、同時に人間としての意識をもつ俺にとっては一生分の長い時間でもある。
この世界に生まれてからおよそ二百年。人間としての感覚の自分は薄まってはいるがまだ存在している。しかし、同時に木としての感覚の自分の割合も強くなってきており、今や気づけば数ヶ月経っていたということも珍しくない。
しかし、それでは使える時間がもったいないことや、人間と変わらない時間感覚をもつ精霊たちと一緒に暮らせないこともあって、最近では作り出した精霊体に人間としての時間感覚を、同時に並列思考でマナの循環などを操作する本体には木としての時間感覚を持たせることでその時間を有用に使っている。
本当は人間としての時間感覚に全て合わせたほうが、時間は有用に使えるのかもしれないが、数十万年、数百万年生きる世界樹の寿命を人間の感覚のまま生きた場合、千年も経たないうちに発狂するとアリアに言われた。
仕方ないので、一日の終わりに精霊体側の人間としての自分を、木としての自分に併合することで、最終的な時間感覚は木に合わせつつ、同時に経験だけは人間的な時間感覚で手に入れるというチート的な抜け道で解決したわけである。
「人間カエデとしての君と、世界樹メープルランドとしての君の分離だね」
アリアはそう言っていたが、実際、別人格というわけでもなく、適宜生まれる人間的意識の裏側に常に木としての意識が働き続けているようなものなのである。
故に、俺がその状態で精霊体を複数作れるようになったからといって……
「父上! 遂にオリハルコンを生成することに成功したのじゃ!」
「お父様、絶対零度を起こすことができるようになりましたわ!」
「パパー、マナ力学におけるぅー、属性普遍値の測定に成功したよぉー」
「お父さん、……遊ぼ?」
「カエデ。樹液ちょうだいー。樹液樹液樹液樹液樹液樹液樹液樹液樹液樹液」
「あー。もう、うるさい!!!」
全員の話を同時に聞けるとか、そういうことは一切無いのである。
というか、訓練の邪魔だから、皆向こうに行ってくれ!
「皆、少し、静かにしてもらえますか。今、忙しいのですが」
「「「「「えー」」」」」
ああ、もうこいつらは……
「静かにしろっ!」
「「「「「はーい!」」」」」
そう怒鳴って、やっと、みんな笑いながらバラけていった。
全く。誰に似たんだか。……いや、間違いなくアリアだが。
皆、最近、妙に、人のことをおちょくるようになってきた。
今回だって、俺が少し精霊体の新しい訓練として、同時に四つの精霊体を作っていたら、これ幸いと子供たちが皆で目配せしあって、それぞれの精霊体に、違う話をふってくるのである。
最初はなんとかちゃんと受け答えしていたのだが、それぞれの場所が近く互いの声が混ざりやすいことや、精霊体を四つ作ったからと言って、別に俺が四人になったわけじゃなく、単に右手と左手を同時に違うことをさせるようなもので、一つの意識を分散させているということもあって、次第にごちゃまぜになってしまった。
俺は聖徳太子ではないのである。
特にシルなどは俺には理解できないような難しい話をしてくるものだから、それだけ聞いていても頭が混乱してしまう。
その上、さらに、アリアが俺が混乱している隙を突いて、樹液を飲ませるという言質を取ろうと、本体にまで話を降ってくるから、もう大変だ。
大パニックである。
最初は穏便に、静かにするように言っていたのだが、あまりにしつこいので怒ってしまった。
しかし、それにしても、ここしばらくは、精霊たちのじゃれついてくる割合が増えすぎな気がする。
あの素直だったはずのソラまで、その周りの悪い影響を受けたのか、悪ふざけに乗ってくるのである。
勿論他の子達に比べたら躊躇いがちではあるのだが。
あの純真で恥ずかしがり屋だった君はどこにいってしまったんだ!
ちなみに、勿論一番絡んでくるのはアリアだ。
あいつはもっと自制心と大人になるという言葉を覚えたほうがいい。
妙に、精霊体や本体にくっついてくる回数が多いのである。
なんでも、夫婦間のスキンシップなんだとか。
いつから、俺たちは夫婦になったんだ!
寄るな。しっしっ!
しかし、何か最近ではアリアがくっついていても、全然気にならなくなってきている。
始めの頃は、少しくっつかれただけでも恥ずかしかったのに、慣れというものは恐ろしいものだ。
本当、もう少し、距離感を持ちながら生きてほしいものである。
「皆、別れが近いのを感じているんだよ」
噂をすればなんとやらだ。
というか、離れていったように見せかけて、ずっと本体の枝に腰掛けていたらしい。
気付かなかった。
元々、現れるときはいつの間にか現れていることが多いアリアだったが、最近では、それは近寄る時にも適用されるらしく、ふと気が付けば隣からこちらを見上げていたりする。
少し、ホラーだ。
「アリア。まだいたんですか? 早く、帰りなさい。どんなに粘っても、今日は樹液をあげませんよ」
今日は、アリアに前に樹液をあげてから二日目である。
ちょうど次の樹液の日との中間の日だけあって、一番樹液が欲しくなるのだろう。
妙に、しつこい。
「まあまあ、そう邪険にしないで。それに、今日は樹液だけの話をしに来たんじゃないんだよ」
おお、樹液の話ではなかったらしい。どうやら、俺の早とちりだったようだ。
うーん、アリアも成長したものだ。
いや、俺よりずっと長く生きているアリアに、俺が上から目線で成長を語るのも、本当はおかしいんだけどね。
それがおかしいと思えないのが、アリアの怖いところである。
「そうですかそうですか。――じゃあ、今日は樹液いらないんですね?」
「それは欲しいっ!」
「……帰りなさい!」
期待した俺が、馬鹿だった。というか、もう条件反射になってないか?
俺が樹液と言うだけで、すぐに反応するように調教されたロリ女神――
――おっと! 怪しい気配がするので、考えるのはここまでだ。
「――はっ! いや、そうじゃないんだって! 話があるの。大事な話!」
「何なんですか」
樹液を欲しがったり、そうじゃないと否定したり。
随分忙しない奴である。
「忘れたの? あれから百年経ったんだよ?」
「何がですか? 百年前にタイムカプセルでも埋めましたっけ?」
「いやいや、そんな黒歴史の発掘の話じゃないから!」
いやいや、本当、あれは黒歴史の発掘と言えると思うのだ。
大概、あれをするのが卒業の時ということもあり、明らかに黒歴史になるようなものを入れてしまっていたりする。
特に中学生時代。
本当に、今思い出しただけでも恥ずかしい。
ただでさえ卒業文集という立派な黒歴史があるのに、その上タイムカプセルまで加われば、俺のライフはもうゼロを通り越してマイナスである。
数年ごとの同窓会では、いつ発掘するという話が出るか、常にビクビクしていたものだ。
まあ、俺はもう死んでしまったから関係ないんだけどね。
あ、でも、自分でそれを隠滅できないということは……
止めよう。考えても絶望しかできないことだ。
後悔しか湧いてこない。
「へー、何入れたの? 気になるなー、って、そうじゃなくて! あれだよ! 子供たちの巣立ちの時という話だよ!」
「……そういえば昔、そんなことも言っていましたね。忘れてました」
アリアがはっきりと言ってしまったので、俺はちゃかすのをやめて、さも今思い出したかのように、そう言った。
――いや、正直に言えば、全く忘れてなどはいなかった。
アリアが話を切り出した時から理解していたといってもいい。
今日が、あのアリアが百年待てといった日からちょうど百年目だということくらい。
精霊たちが、巣立っていく日だということくらい。
忘れるわけがないのだ。
俺はその日が来るのをずっと数えていたのだから。
その日が来るのをずっと待ち望んでいたのだから。
その日が来るまではと決めて、自分を偽り、父親をし続けてきたのだから。
忘れるわけがないのだ。
俺は何より、その日が来ることを常に恐れ続けて百年を過ごしてきたのだから。
この百年間は、俺にとって――
「どうだった? この百年は。君は何かを見つけられたかい?」
アリアが世界樹に優しく触れながら、そう尋ねる。
その表情は柔らかに微笑んでいて、まるで聖母のようである。
俺は、その問い掛けの答えを深く考える。
「何かを見つけれたのか……、それは分かりません。――でも、楽しくはありました。彼らが、育っていくのが。立派になっていくのが楽しくって、そして怖かった」
この百年、色々なことがあった。
精霊たちは、無事に大きくなり、当初十センチしかなかった体が、今では一メートルを越えるくらいにまで大きくなっている。
肉体面だけでなく、精神面も同様に成長を遂げている。
シルはずっとみんなに馴染めるようになった。というか、周りがある程度シルの考えを読み取ることが出来るようになったのだ。イタズラの数も大幅に減った。まあ、まだ無くなってはおらず、たまに思い出したかのように、それを行うのではあるが。でも、それでも、随分周囲に配慮出来るようになっただろう。
ノンは少しずつ、周りを気にしだしている。特にウィズの意見は一応聞くようにはしているようだ。まだ、たまに自分だけで動いてしまい、ウィズともめることはあるようだが、それでも少しずつ変わっている。
ウィズは、ますます他人に気配りできるようになった。ソラも、少しずつ強く自分を出せるようになっている。
みんな、みんな立派に育った。育ってくれた。
「頑張ったね」
アリアは、優しそうに微笑み、そう言うと、俺にゆっくり近づいてきた。
そして、考えている内に、いつの間にか力が抜けて、しゃがみこんでしまっていた俺の精霊体の頭を、ギュッとその小さな腕で抱え込んだ。
「何するんですか!」
「ん? 君がこうして欲しいのかと思って?」
「そんなことは……」
そんなことは、何なのだろう。
俺は、それ以上言うことはできない。
なんでだろう。こんなに小さな腕なのに、抱かれていると何故か安心する。
小さく息づく呼吸の音。
しっかりと抱かれた腕から伝わってくる体温。
密着した小さな胸から微かに聞こえる鼓動の音。
精霊体には肉体は無いはずなのに、でも、確かに俺はそれらを感じている。
アリアの呼吸が、体温が、鼓動が生む、温かさ。
肉体的な意味では無い。心が癒されるようなそんな暖かさだ。
俺はそのアリアの温かさを感じることで、少しずつ、自分の心が落ち着いて行くのを感じた。
「ねえ、アリア?」
「なんだい、カエデ?」
そして、俺は、ついつい尋ねてしまう。
気になっていたこと。
俺の弱さ。
「俺は、上手く父親を演じられたでしょうか? いい父親役でいられたでしょうか?」
俺は、彼らを上手く導けたのだろうか。
こんな俺が。
誰かを心の底から信用することができない俺が。
猜疑心の中でしか生きられない俺が。
常に演じ続けている俺が。
こんな俺が。
彼らを上手く、育て、導けたのだろうか?
彼らが立派に育ったというのは、俺の勘違いなのではないだろうか?
俺は、本当にいい父親だったのだろうか?
そんな俺の不安を打ち払うかの如く、アリアははっきりと、ためらうことなく宣言する。
「君は彼らにとって、いい父親だったよ。それはわたしが保証してあげるんだよ」
「……アリアが保証してくれるんですか? それは何とも心強い話ですね……」
「そうだよ。神様の保証なんだよ! だからカエデは安心していいよ」
アリアはそうおどけたように、でもはっきりと俺の迷いを断ち切る。
その強い肯定に、俺は気が付けばに泣いてしまっていた。
無意識の内に精霊体の頬を流れる一筋の涙。
俺はそれに気がつき、必死に手で拭うが、それは拭っても拭っても留まることなく零れ続けてくる。
どうやら俺は、自分が思っている以上に、誰かを育てるということに関して責任と重圧を感じていたらしい。
上手く演じきれるか。立派に育て上げられるか。
そのプレッシャーは大きなものだったのだろう。
アリアに肯定されて、俺ははじめて自分がやりきったのだと思えた。
俺は、父親役を演じ切れたらしい。
精霊たちにとって、子供たちにとっていい父親でいれたらしい。
――誰かを信用できない俺でも、誰かを育てることができたのだ。
「アリア、俺は……」
「ほらほら、泣かないの。力を抜いて?」
俺は、こわばっていた肩の力を抜いて、そっとアリアに身を任せる。
アリアも、まるで俺を包み込むかのごとく、その小さな腕でしっかりと俺を抱きしめてくる。
しばらく、このままゆっくりしていたい。
このまま眠ってしまいたい。
俺は安心したように、そっと目を閉じて――
ガサッ!
――その瞬間、背後で大きな音がした。
その音で我に返った俺は、咄嗟に顔をあげる。
そして急いでまだ頬に残っていた涙を拭うと、素早く音のなった方に振り向いた。
――ソラだ。ソラが転んでいる。
俺の根に足を引っ掛けたらしく、顔から地面に突っ込んでいる。
「ソラっ!」
俺が、慌てたようにそう声をかけると、ソラは泥だらけになった顔をあげ、こちらを見て少し涙目になった。
そして、罪悪感に満ちた目で言った。
「お父さん、邪魔して、ごめんなさい」
ん? 何の事だ?
「お母さん、と、二人で、愛の営み?を、していたのに、僕が、邪魔、しちゃって、ごめんなさい」
なんだそれは!?
誰が、そんなことをしていた!
咄嗟にそう怒鳴りかけたが、そんなことをしたら、ただでさえ泣きそうなソラが余計に泣いてしまう。
それに、そこまででないにせよ、甘えてしまっていた事には違いはないのだ。
俺は、ついつい恥ずかしさから、言い訳してしまいそうになるのを必死に抑え、そして考える。
どうやら、ソラはこちらをずっと覗いていたらしい。
しかし、どうだろう。あの純心なソラが、そんなことしようなどとを考えるはずがない。
誰か主犯がいるはずだ。そして、そいつがソラに変なことを吹き込んだに違いない。
俺は咄嗟に正面を見た。
アリアがニコニコしながらこちらを見ている。
一番主犯として怪しいのは、勿論このアリアだ。
しかし、今回に限ってはどうだろうか?
あの会話の流れは、自然なものだ。周囲に、それを吹き込んでおくだけの時間もなかっただろう。
大体、本人が先ほどの言葉が演技だったとも思えない。
アリアは、ああいう真面目な話をしているモードの時は、こういうイタズラはしない。
俺は一応アリアに対し、訪ねかけるように目配りする。
アリアは、一度小首を傾げ、それから少しして、ああ、と言わんばかりに頷くと、はっきりと首を横に振った。
やはり違うらしい。
まあ、あくまで本人の否定であるから、それを百パーセント信じることはできないが、そもそもあのアリアが、イタズラを仕込んでそれを自慢げにしないはずがない。
ということは、ソラにこれを吹き込んだのは……
俺は、再びソラに目をやる。
そして、そのまま少し視線をあげ、さらに後ろの方をよく意識してみると――
――やはりあの三人か。
俺は、気づかずに視線を逸らした振りをして、こっそりそちらを観察してみた。
すると、世界樹の陰からシル、ウィズ、ノンの三人が慌てて姿を出し、必死にソラにこちらに来いと手招きしているではないか。
そして、俺が自然を装って、再びそちらに視線を向けたとたん、急いでまた幹の影に隠れて、そこからこちらをチラチラ覗き見している。
あのバカども!
俺はじっと、そちらの方を睨みつける。
あっ。ノンと目があった。
目を逸らすな。もう気づいているから!
俺が、そういう思いを込めてより一層強く睨みつけると、三人は感念したのか、ゆっくり木の陰からのそのそ這い出てきた。
「あのー、悪気はなかったんですのよ? 後学のために愛の営みとやらを見てみたかったのですわ」
「うむ、実に興味深いものであったのじゃ」
「愛の営みぃー、愛の営みぃー」
「うーんと、愛の、営みで、僕達が、生まれたん、だよね? もしかして、弟か、妹が増えるの?」
「それなら、わたくしは妹がいいですわ!」
「いや、弟なのじゃ!」
「どっちも、生まれれば、いいと思う」
「「それじゃ!」ですわ!」
「愛の営みぃー、愛の営みぃー」
おずおずと這い出てきたかと思えば、全く悪びれず、立板に水の勢いで会話が弾んでいる。
あの? あなたたち、全く反省してませんよね?
というか、知らない間に勝手に新しく弟と妹が生まれることになってるし。
そもそもシルは、さっきから愛の営みとしか言っていないじゃないか。
「あー、もう、うるさいっ! さっきのあれは愛の営みとかではありませんし、子供も生まれませんっ!」
「「「「「えー」」」」」
皆して、そんな不満そうな声を出すなっ!
というか、不満そうな声の中に、アリアまで混ざってるじゃないか。
お前も一応、当事者だろっ!?
「うーん、だって、ねー?」
「うむ、二人はとても仲睦まじかったのじゃ」
いやいや。そういう問題じゃなくて!
……と、そこで俺はふととても重要な事実に気が付く。
考えてみれば、こいつらはずっと世界樹の幹の影に隠れて、こちらを見ていたわけだ。
俺が、弱音を吐いている時も。ホッとして泣いてしまった時も。安心しきったようにアリアに抱きしめられている時も……
なんだそれ。
超、恥ずかしいっ!
ヤバイ。俺、もうあいつらと顔合わせられない。
無理無理無理無理無理。
大体、冷静になってみれば、なんで俺あんな事してたの?
弱音吐いたり、アリアに慰められたり。
まして、その、抱きしめられるとか……
ちょっと、待って!
今、こうして考え直してみると、俺すごくおかしいよね。
アリアの実年齢は知らないが、外見年齢は辛うじて二桁に見える程度である。
そんな幼女に抱きしめられて、安心していた俺って……
考えるなっ!
それ以上は考えたらダメだっ!
「大丈夫じゃぞ、父上。二人は夫婦なのじゃ。あれくらい当然じゃ」
「そうですわ。二人の仲の良さはわたくし達が一番知っていますわ。今だって……、きゃ~」
「愛の営みぃー、愛の営みぃー」
「僕達、もしかして、お邪魔虫、だった?」
「大丈夫だよ、カエデ! またいつでもしてあげるからねー」
好き勝手に騒いでくれちゃっている。
何だ何だ。俺には、恥ずかしがる暇さえ与えられないのか。
それにしても、みんな実にいい笑顔で楽しそうに先ほどの話で盛り上がっている。
そのことが、ますます俺を苛立たせていくのだ。
そして――
「皆、一度黙りなさいっ!!!!!!!!」
あー、もう……
しばらく世界樹に引きこもって、表に出てきたくない!
こうして俺に、新たな黒歴史が刻まれたのであった。
これ以後しばらく、俺は皆の顔を見るたびに、自分のしたことを思い出しては、悶え回ることになるのである。
うがぁーーーー! 恥ずかしぃいイいぃィーーーーー!
ちなみに。
その後、ある程度落ち着いた後。
アリアから正式に精霊たちに向けて、一週間後に巣立ち、すなわち創造を行うことが話された。
突然の知らせに、子供たちは騒ぐかと思っていたが、アリアの言うとおり薄々勘付いていたらしく、一瞬静まり返りはしたが、それ程騒ぎになることやショックを受けることなく、思ったよりすんなり納得した。
全員、どこか寂しそうであったり不安そうなのは、見ているだけでも伝わって来るほどではあったが……
一週間。
それが、俺たち家族全員が一緒にいられる最後の時間だ。
俺たちは、今まで以上に、戯れあい、からかい合い、その時間を楽しんだ。
別れ別れになってしまうことの怖さ、寂しさ、不安さ。
そういったものを吹っ切るかの如く、触れ合った。
そして……
遂に、一週間の最後の日が訪れる。
というわけで、今流行りの子育てファンタジーにはならずに、子育て編は始まった途端、終了しました。
うーん、実は少し考えたんだけど、グダりそうだったのと、まだ何もないこの世界では子育て向きのイベントが起こるはずもなく、多分ひたすら駄弁るだけの話や、喧嘩する話ばかりで物語性が薄そうだったのでやめました。
そのうち、閑話とかですこしは書くかも。
何か物足りない方は、他の子育て物の名作を読んで脳内補完していただけるといいかもしれません。
今は、さっさと創造します。
ということで次回、第23話「創造前夜」。
説明回です。




