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生まれ変わるなら木になりたい!  作者: 神の狸
幼木の章 生まれる世界
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第19話 精霊の住処

 土の精霊ノン。


 琥珀のような目。

 黄土色で腰ほどまである綺麗なストレートの髪。その長い髪には一切の飾りつけなどはないが、それを感じさせないほどに艶やかなサラサラの髪をしている。

 服装は、少し巫女服に似た変わった服装。色合いは白をベースに、赤に近い茶色をしており、長い髪も相まって、少し和風な美少女である。

 声は少しかすれたアルト。「じゃ」や「のう」などと言った少し古風な喋り方をするが、そもそもがとても落ち着いた声色や雰囲気であることで、周りは決してその喋り方に違和感を覚えない。

 性格は冷静沈着。常に落ち着いており、物事を客観的に判断することが多く、感情がほとんど見えない。その為、正反対とも言える性格をしているシルとは少し折り合いが悪く、逆に近い性質を持つウィズとは非常に仲が良い。だが、決して情が薄いわけではなく、様々な面で気の効くタイプである。はっきり言えば、アリアを含めた中で一番人間的に(精霊的に)大人なのである。


 これはそんなノン達、四精霊が生まれてから少し経ったある日のその後の、とある一幕である。







「ぅうん……」


「気がついたのじゃな、父上!」


「ここは……? 俺は一体…?」


「父上は気絶しておったのじゃよ」


「気絶? ……何で?」


「父上が失礼なことを言うからじゃ!」



 …と、そこまで話して、俺はやっとしっかりと覚醒した。

 そうだ、俺はノンとウィズの怒りに触れて、刺されて気絶したのだった。

 刺されて気絶というとすごく大事に聞こえるのだが、すでにその傷もふさがり、痛みもない。世界樹の生命力はだてではないのである。

 でも、刺されたという響きだけで何となく痛そうで、そういう気分になってくるようだ。



「全く、父上がいかんのじゃぞ。花も恥じらう乙女に男なぞといいおって」


「ははっ、まあ、そのことは大変失礼しました」



 しかし、気絶までしてしまうとは驚きである。

 気を失ったのなんてどのくらいぶりであろうか。

 ここしばらくは木としての意識が強くなってきており、睡眠すらほとんどとった記憶がないのだ。

 まして、気絶とは……

 人間時代ぶりであろう。


 それで、俺はどのくらい気絶していたのだろうか?



「うむ、大体十五分程度かのう」



 十五分。それを十五分も気絶してしまったと捉えるべきか、十五分ですんだと捉えるべきかは難しいところである。



「それで、アリアやウィズ、シルはどうしたんです?」


「うむ。シルはウィズに引きずられて、ソラのところにイタズラの謝罪にいったのじゃ。母上は気付いたら消えておった。だから我が父上の様子を見てたのじゃ」


 

 そうか。シルはソラに謝りに行ったか。

 それは良かった。

 何だかんだ面倒見のいいウィズが一緒なら安心だろう。

 それに、シル自身もとらえどころのない子ではあるが、比較的素直な子ではある。今回もなんだかよく分からない理屈ではあったが、良かれと思ってやったみたいだし、怒られたら謝るくらいの素直さはある。しっかりとソラに謝罪するだろう。一安心である。

 アリアが、いつの間にか消えているのは、いつものことだ。どうせ色々と飽きたのだろう。お腹一杯に樹液を飲んで、眠くなったのかもしれない。あの野郎め!

 まあ、とにかく、それで、ノンが俺の様子を見ていたということか。この子もそういう気のきく子だしな。ノンはシルと、少し折り合いが悪いみたいだし、そういうところでこの役割分担になったのだろう。



「それは色々お世話をかけましたね」


「まあ、それはよいのじゃ。もともと我らのしたことじゃしな。

それよりも、父上に一つ頼みがあるのじゃが…」


「頼み、ですか?」


「うむ」


「出来ることならしてあげますが……」



 今回の件もあるし、あまり難しいことでもなければ叶えてやりたいが……

 しかし、俺は木なのである。あまりたいしたことはしてあげれないと思う。そういうことはアリアに頼んだほうが、確実なのではないだろうか。彼女も彼女で、我が子には甘いようであるし。大抵のことなら何か考えてくれるだろう。



「いや、この頼みは父上にしか出来んことなのじゃ!」


「そこまで言われたら断れませんが……

一体何なんです?」


「うむ。実は我の寝床のことなのじゃ」



 寝床?

 ああ、住処のことか。


 精霊は睡眠もとるし、樹液という食事もする。肉体構成がマナでできている以外は人間とほとんど変わらない生活を送っているのだ。当然、どこかに住処が必要となる。

 しかし、ここではないどこかにある、住処に自由に往き来できるアリアと違い、精霊はこの世界の住人である。この世界の何処かに住まなければならないのだが、あいにくこの世界にはまだ、世界樹()と天地しかない。必然的にほとんどの精霊は世界樹の何処かに住処を構えることを希望し、俺もそれを受け入れたのである。


 ノンはウィズと一緒に、世界樹の根の隙間の穴に住んでいる。彼女達自身が十センチ程と小さいこともあって、それほど大きくない隙間でも、そこそこ快適に暮らしているようだ。

 世界樹の一部ということもあって、俺も覗こうとすれば覗けるのだが、そこはまあ、プライバシー的な意味でなるべく控えるようにしている。

 ちなみに、シルは世界樹の天辺近くの枝を結び合わせて住処としているし、ソラは何故か俺の傍に住処を構えるのを嫌がり、少し離れた場所に穴を掘って暮らしている。

 ソラには嫌われているみたいで少し悲しかったが、しきりに謝っていたことを考えると何かあるのだろう。まあ、男の子だしな。

 とにかく、そういうわけで、彼らはほとんど俺の元に暮らしているのである。



「それで、その住処がどうかしたんですか?」


「うむ。まずは、一回見てもらいたいのじゃが……」


「分かりました」



 そんなわけで、俺はノンと一緒にノンとウィズが暮らす根の穴に行くことにした。

 行くことにしたと言っても、俺の根元だ。そもそも、ノンが俺の様子を見ていたのも、俺の根元から見上げていただけだし、実はそこから裏側に回ればすぐだったりする。

 それに、再度言うが、俺の根元なのだ。俺は、少し意識を向けて、そこに精霊体を出現させるだけですぐに着くのだ。なので、まあ、どちらかと言えば先に来てノンが来るのを待っているに近い状況だろう。



「すまぬな、父上。待たせたのじゃ」


「いえ、今来たところですよ」


「そうか」


「そうです」


「……」


「……」


「……ぷっ、ははっ! 何か恋人のようなやり取りなのじゃ」


「ふふっ、そうですね」



 何だろうか、期せずしてやり取りが典型的な形になってしまった時のこの楽しさは。勿論、本当にそのつもりがあるわけではない。でも、この偶然というシチュエーションが何でもないことをより面白く感じさせるのである。

 しかし、ノンのこういった人間的な常識はどこから出てくるのだろうか?

 生まれたばかりだよな?



「うん。それはね、君から受け継いだ意識の欠片の記憶だよ。いうなれば、君の一般常識を受け継いだとも言えるのかな。はじめからある程度の自我を持たせるために、わたしとカエデの意識の一部を混ぜ合わせて作った意識がこの子達だからね」


「……どこから現れたんですか。この神出鬼没の幼女神」


「ひどいなー。二人が、楽しそうだったから、わたしも仲間に入りに来たんだよ!」


「お帰りください」


「えー、ひどい」


「母上、帰るのじゃ」


「ノンまでそういう意地悪言うんだー。わたし、拗ねちゃうよ!」


「………」


「………」


「……ダメ?」



 うぐっ!

 だからその上目遣いは反則である。


 チョロいと言われるかもしれないが、実際に見たら分かるだろう。

 金髪幼女が、目一杯に涙を溜めて、必死に上目遣いしてくるのである。

 ロリコンでなくとも、いやむしろロリコンで無いからこそ、胸の中が何とも言えない罪悪感で一杯になることは間違いない。

 それが、アリアの策略だと分かっていてもどうしようもないものなのだ!



「……はぁ。分かりました。大人しくしているんですよ」


「やったー!」


「むー。父上は、母上に甘すぎるのじゃ!」


「カエデはわたしにメロメロだからね!」


「やっぱり、帰りなさい!」


「ヤダよー」



 そう言って、アリアは、逃げ回る。


 ああ、うっとうしい。いてもいいから、そこで大人しくしていなさい!


 さて、そういうわけで、ノンとウィズの部屋である。……どういうわけなのかは聞かないでくれ。

 とにかく、ノンとウィズの部屋である。


 さっきも言ったが、二人の部屋は俺の根元の根の隙間の穴である。

 誇らしいことに、俺は六十メートルもある大木だ。まあ、世界樹としては小さいかもしれないが、それでもかなりのものである。六十メートルというと大体二十階建ての超高層ビルに相当する大きさだ。その根元の隙間もそこそこ大きなものである。高さ五十センチはあるだろう。奥行も二メートル近くある。

 精霊の大きさが十センチくらいだと考えると、その大きさは彼らにとって相当なものだということがわかるのではないだろうか。ちょっとしたホール並の大きさである。

 しかし、まあ、俺の精霊体や、アリアからしたらかなり狭い空間なわけで、流石に足を踏み入れることはできない。なので、今、俺たちはその部屋の正面にいるわけである。


 さて、その問題の穴の前だが、まず驚くのは、その穴が土の扉で覆われていることだ。先程も言ったように、穴の高さは五十センチもあり、彼らからしたら大きい。当然その入口も大きすぎるわけで、そこにノンが土で蓋をしたのだろう。その大きな扉の下の方には十センチ前後の小さな扉があり、これが彼らの勝手口だと思われる。

 というわけで、その勝手口から覗くには、俺たちはあまりにも大きすぎるのだ。

 俺は木であり、別に精霊体を使わなくても、自分の根元の穴の内部程度知覚できるからいいのだが、アリアは一体どうするつもりなのだろうか。

 もし中が見れないというなら、今すぐ帰りなさい。



「……」


「……」


「……えいっ!」



 ドシャッ!


 ……

 壊しやがった!

 この野郎、自分が中を見れないからって、正面の扉を破壊しやがった。

 

 ちょっ、アリア!? 娘の作品を壊して、恥ずかしくないの?



「さ、さすが、母上じゃ。ちょうどリフォームしようと思っていたのじゃ」


「ふふんー」



 なんだこのご都合主義。


 いや、ノン? お前も大概、アリアを甘やかしすぎですよ?



「いや、だって父上。母上を見ていると子供を見ているみたいで責められんのじゃ」


「そうだ。そうだ。もっと甘やかせー」



 あのアリア? あなた、自分の子供に子供扱いされてますからね? それでいいんですか?


 ふう。全くしょうがない奴である。

 まあ、腐っても神様なのだ。このくらい甘やかしても問題はなかろう。

 多分。絶対。うん、そうだと信じてる……


 とは言え、アリアもそこそこはまともな奴だ。自分が壊したものくらいは自分で直す。むしろ前よりも機能性が上がるのではないだろうか。そう考えると、ノンの言うリフォームは間違っていないことになるな。まあ、それがいいことか悪いことなのかは分からないが……


 ともかく、アリアが扉を壊したことで正面からでも内部が覗けるようになった。

 パッと見ただけでも、二人の部屋は中々凝っているのがわかる。


 まず驚くのが、その家具の多さだ。

 ご存知の通り、この世界はまだ何もない世界である。しかし、その何もないはずの空間に、趣向を凝らした椅子なり、ソファーなり、テーブルなりがこれでもかと置いてあるのである。まあ、精霊は服を着替えることはないので、クローゼットなどはないし、お風呂やキッチンなどもないのだが、それでもベッドやソファーなどは、普通に元の世界で売っても高値が付くくらいの彫刻が施されているように見える。

 まあ、残念なことに原料はすべて土であるらしく、その装飾の巧さに比べて、色合いはどうも侘しいものに過ぎないのであるが。


 しかし、二人の部屋のすごいところは家具だけでない。

 壁があり、間取りが分かれているのである。しかし、まあ、天井一杯まで壁を築くのは面倒であったらしく、大体三十センチのところで切れていて、上から見れば覗けてしまうのであるが。だが、十センチの精霊二人がプライベートを守る分には申し分ない壁だろう。上から見ていると、少し豪華な一階建てのミニチュアハウスみたいで中々面白い。

 とにかく、ふたりが予想以上にいい暮らしをしていて俺は驚きである。

 俺の根元こんなに魔改造されてたんだなぁ…… 覗かないようにしてたから全然気付かなかった。

 まあ、子供たちのためだから、別にいいんだけど。


 しかし、こんないい暮らしでいい住処なのに、俺にどんな相談があるというのだろうか?



「うむ。まずはあれを見て欲しいのじゃ」



 ノンが部屋の奥の方にある大きな桶のようなものを指差す。

 ん? あれはなんだ? 

 お風呂にしては少し小さすぎるし、そもそも精霊にお風呂は必要ないはずである。

 なんだあれ? 水瓶?



「うむ、あれの上の天井の部分が問題なのじゃ」



 そう言って、ノンが指さした先には、僅かに亀裂が走り、ぽたぽたと雨漏りならぬ樹液漏りしている天井の姿が。

 あれ? もしかして欠陥住宅?

 


「うむ。実は数日前から、あそこにヒビが入ってしまってのう。我の土で塞いでみたりしたのじゃが、どうも父上の樹液の高圧力には敵わないらしく、すぐに元通りじゃ。なので、今はああして下に液受けをおいて溜めておるのじゃ」



 なんと!

 そ、それはどうも申し訳ない。間違いなく、それは俺の責任です。

 多分、三日前体内のマナの循環路をいじった時に、ここに高圧力がかかりすぎて亀裂が入ったのだろう。

 まさか、せっかくの豪華スイートルームを雨漏りの欠陥住宅化させてしまっているとは。

 これは、謝罪しても謝罪しきれない。



「いいこと思いついたんだよー!」


「はいはい。アリアは黙っていてくださいね」


「酷い! 妙案なのにー」


「はいはい。どうせ、毎日アリアが舐めに来るとかそういうくだらないことでしょ」


「なんでわたしの考えが分かったの!?」


「もう、慣れました」



 本当に黙っていて欲しい。いや、マジで。



「なら、わたしと部屋を交換するというのは……」


「黙れ。そして帰れ!」


「遂に、敬語が消えた!?」


「もういいから黙っててください」



 大体、誰がアリアの部屋に行けるというのだ。この世界じゃない部屋をもらっても、アリア以外の誰もいけないのだから全く意味はない。

 そんなくだらないことより、可愛い我が子のためにこの液漏りをどうにかしなくては。

 本当に申し訳ない。



「いやいや、父上。別にそれほど謝ってもらうほどのものではないのじゃ。我らも、こうして溜めて、食事以外の時でも樹液を食べることができるという環境を楽しんでおったのじゃからのう」


「あー、それズルい!」


「そうですか、では何故こうして相談しにきたのですか?」


「無視するなー」


「それなんじゃがのう」


「無視するなー。無視するなー。無視無視無視無視、無視するなー♪」


「アリア! 黙りなさい!」


「うぅ……」



 なんだろう。ノンといるとアリアの幼児化が進む気がする。

 ノンがしっかりしているせいか、アリアは逆に甘えていいと認識するのだろうか。


 いやっ! あなた母親ですからねっ! 子供に甘えちゃダメでしょ!


 さてさて、話がずれてしまったが、アリアが静かになったところで、ノンの話を聞こう。



「うむ。それなんじゃがのう。まあ、ここに溜まった樹液は、我とウィズが役得として、仲良くわけておったんじゃが、生憎それがシルに見つかってしまってのう。シルが拗ねてしまったんじゃよ。今回のソラへのイタズラも、そこで我らに味方したソラへの、意趣返しのようなものじゃったみたいでのう。

 まあ、そのことに関しては、父上を気絶させる流れでストレスを解消したのか、スッキリしたシルが納得したから良いのじゃが、我はどうも、このままにしておけば、これからもこの樹液が原因で問題が起きるのではないかと思うのじゃよ。それで、独断ではあるが、こうして父上にこの亀裂をどうにか治してもらおうと思ったわけじゃ」



 ふむ。どうやら、今回のイタズラの一端はここにあったらしい。正直、シルの気持ちもわからなくはない。特に今のアリアの不満げな顔を見れば、樹液を独り占め、いや二人占めされることはそれほど重大なことなのだろう。

 しかし、俺を刺したことで仲直りするのはどうなんだ。

 何か? 俺は友情の為の犠牲になったのか? 

 

 ……あれっ? ちょっと格好良いかも

 

 うん、ありだな!


 とまあ、そんなことはどうでもいいのだ。問題は、この判断が、ノンの独断だということだ。

 正直に言って、ノンの判断は間違っていないと思う。これは今は全員で分けるという形に落ち着いたとしても、いずれ別の問題を生むだろう。何しろ二人はここに住んでいるのだ。皆に分けるといったところで、ネコババしていないという保証はない。どこかで、その問題は起きるだろう。その問題の芽を先に摘み取っておくのはむしろ正しい判断である。

 しかし、この考え方は全員ができることではない。むしろ、ほとんどのものが思ってしまうのだ。そんな起こるかも知れないことより、今樹液を得られることを優先したいと。

 

 ノンは冷静な子だ。そして、物事を客観的に見て判断できる子だ。今回の件を経て、この決断をすぐに下したのだろう。

 だが、他の子はそうではない。なんだかんだ言っても精霊たちはまだ生まれて少し、精神的にも肉体的にも子供なのだ。あの面倒見の良いウィズでさえ、時に感情的になることもあるのである。

 それ自体は決して悪いことでは無いが、この件での解決を皆で話し合うとなると話は別だ。感情的な面に流され、恐らく他の子達は残すことを選んでしまうだろう。そしていずれ問題が起こる。

 だからこそ、ノンは独断で俺に明かすことにした。他の子が隠すことを決める前に明かしてしまうことにしたのだ。

 それは一つの自己犠牲なのだろう。しかし、それは他の子との間に溝を生みかねない危険な行為だ。

 彼らなら最終的には大丈夫だろうとは思うが、父親としてはやはり心配なのである。

 

 それに、ノンの頼みを聞いて、すぐにこの亀裂を治せるかといったらそうではない。この亀裂は、そう簡単なものではないのだ。

 これが、先のナイフで刺されたような、外部から与えられた傷であれば問題はなかった。世界樹の治癒力はそれをすぐに直しただろう。だが、これは内部のマナの流れが破裂しかけて起こっているものだ。むしろ世界樹の治癒力の源であるマナが原因なのである。その為、これを治すにはまずマナの流れをイジり、バランスを整えなければならない。だが、それには時間がかかる。

 そして、それだけの時間があれば――



「ノン! あなたどうして勝手なことしていますの!」



 ――こうなってしまうことは目に見えていた。

 これがすでに治った後であれば、そのことに関してノン以外の精霊たちも、ある程度冷静に考えることができ感情はともかくとしても、それを理屈として納得するだろう。

 しかし、まだ治ってない今、それは現在の問題である。彼らは理屈よりも感情を優先してしまう。


 かくして、事態はノンとウィズとの姉妹喧嘩へと繋がっていくのであった。

四精霊編全四部予定のこれが第二部です。


姉妹喧嘩。

どちらが姉で、どちらが妹なのかは作者にもわからない。

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