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マガイモノ〈未改訂版〉  作者: 海陽
マガイモノ
7/60

痛感 side.框矢

今の俺にちょうど合った大きさのリュックサックを背負い、左肩に竹刀と瀧宗が入ったケースを引っ掛けて歩く。チェストハーネスやヒップベルトを締め、ゆっくりと表の道路へと足を踏み入れた。


「腹が減ったな……」


道路に出るまで、何度も路地を抜け歩いてきたけど。たった一度も食品を売っている店が無かったんだ。

ポツンと呟けば更に腹が減ってしまう。施設で空腹には慣れてたはずなのに、ダイルの家での生活が良過ぎたんだな。慣れが薄れた気がする。


真っ先に探すのは、スーパーもしくはコンビニ。食い物が食べたい……。


道沿いに漸くコンビニを見つけ、その入口に近付いた瞬間。ガラスの自動ドアが開いていらっしゃいませ、と声を掛けられる。


「?!」


な、何だ?!何で勝手にドアが開いたんだ?ダイルから自動ドアの存在は聞いていたけど。どうやって人が居るってわかったんだ?


自動ドアを見つめながら、店内に入る。

とにかく、まずは食べる物を買わないと。そう思って店内をぐるりと見て回り、食べれそうな物を物色した。

他の客がカゴを持っているのを見て、取り敢えず自分も重ねてあったカゴを手にする。


そうして目に止まったのは、ランチパックと書かれた携帯食。たまご、ハムマヨ、ピーナッツバター……何種類も並ぶランチパックを睨むように眺め、漸く選んだのは、ハム&チーズとたまごだった。


「美味いのか、これ?」


呟きながら袋の裏表と繰り返し眺め、カゴに入れた。


会計を済ませ、ありがとうございましたー、との店員の声を背にコンビニから出るとビニール袋を片手に再度歩き出す。


食える味だと良いんだけどな。

そんな事を思いながら。


公園のベンチに座り、ランチパックを意を決して口にして、思わず目を見開いた。


「美味いな、これ。……後でまた買いに行くかな」


のんびり食べ終えて近くにあったゴミ箱に抜け殻の袋を捨てて荷物を背負い、公園を後にする。


ダイルの言葉を思い出し、コンビニなどの入口に置かれた求人情報誌を手にしては眺め、また歩く。あっという間に、右腕は求人情報誌で使い物にならなくなってしまった。


「18時過ぎ、か。寝るとこ探さないとな」


コンビニで買った安物の時計を眺め、また歩き出す。ビルが建ち並ぶその中で、出来るだけ安そうなホテルを探して見つけたのは一泊2000円のカプセルホテル。


「一泊ですね?代金は2000円です」


代金……あ、金の事か。


慌ててリュックサックのヒップベルトから財布を取り出し、2000円払う。受付で渡された鍵を手に階段を上がった。


人一人がやっと横たわれるカプセル内で、頭元に瀧宗やリュックサックを置いてやっと一息吐いた。


求人情報誌を片っ端から見ていき、年齢が合うもの、学歴不問のもの、運転免許が不要なものに印をつけていく。


「時給820円の週四日で……ん?幾らになるんだ、これ」


独り言を繰り返しながら、ひたすらページをめくっては印をつけ、カプセルの鍵を締めて夜を明かした。


道路に時々立っている地図で地名、現在地を調べつつ、そしてダイルがつてで手に入れてくれたプリペイド携帯を片手に歩き回り、バイト探しを続ける。


疲れた、なんて言ってられない。


けれど中学中退の形を取っている俺を採ってくれる所は無く、何日もカプセルホテルに寝泊まりしてはコンビニで食事を済ませた。


「悪いが中学中退だと、ちょっとね。他を当たって見てくれるかい?」


「そうですか。……ありがとうございました」


ダイルがくれた金は、ホテルや食事代で底を付きかけて来ていた。


「ヤバいな……。あと5000円しか無い」


財布を確認し、俺は焦り始めていた。

食事代やホテル代もそうだけど、プリペイド携帯の代金だって馬鹿にならない。


本体の代金はダイルが払っていてくれたから良かったものの、面接先との通話でプリペイド残額は、かなりの速さで減っていく。

それだけじゃ無い。ある程度は身なりに気を付けとかないと、採ってくれる所も無いんだって痛感したんだ。


だから時折銭湯とか言う、でかい風呂場に行きながらバイト面接を梯子して受けて回る。


そうして漸く、日払いの夜間工事と工業部品製造のバイトに雇ってもらえたんだ。


日払いの夜間工事は文字通り学歴不問。だけど戦力にならなければ切り捨てる、との条件付き。

部品製造の方は中学中退だから、とその勤務時間に比較して時給は800円と安め。でも働きによって時給が上がる能力給らしい。


やっと働けるんだ。文句なんて言うもんか。


翌日から昼間は部品製造を、夜は夜間工事とバイト漬けになった。


この時、俺の所持金は2000円を切っていた。ギリギリで間に合った、ってところだよな。

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