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レポート34

 本田がアーマーロイド部隊を引き連れてトンネルを潜ってシールド内部に潜り込むと、すぐに琴乃が近寄ってきた。


「良かった。今、向こうで玉子と葉月が戦っているんです。早く応援に行ってあげて」


 琴乃は血の気の失せた不安そうな顔をしていたが、ぎりぎりの所で踏ん張って気丈に振舞っていた。そのすぐ後ろには制服を着た五人の女生徒が固まって震えているのが見える。

 琴乃は生徒たちを誘導している時にシールドに閉じ込められて、塀に沿って植えられているポプラの木陰に隠れて身を潜めていたのだと言う。


「よく頑張ったね。外に僕の仲間が待機してるから行って」


 本田は琴乃と女生徒たちをシールドの外へ逃がすと、小人の軍隊を引き連れてグラウンドへと足早に向った。

 そしてまず本田の目に飛び込んできたのは、別々の結界に閉じこもっている葉月と女王だった。そしてそのほぼ中間の位置で勝ち誇った様に立っているディッツの姿が見えた。


 その足下に人影が倒れていることに気がついて、胸にナイフが深く刺さった様な痛みが駆け抜ける。


「う、動くな……!」


 本田の声は震えていた。

 それが悲しみからなのか恐怖からなのか自分でも良くわからなかった。一言では言えない感情が激しい濁流となって胸に押し寄せてくる。

 それでもなんとか自我を保ちつつ右手を上げると、小人たちのアーマーロイド部隊は周りを取り囲んで、全長一メートルの機体よりも遥かに長いプラズマキャノンを一斉にディッツに向けた。


「連邦警察に小人さんが寄ってたかってどうするってんだよ! この俺を止められるもんなら止めてみろよ!」


 しかしディッツは一向に怯む気配を見せず、むしろさらに興奮したように左手を振り回して叫んだ。そしてその左手が赤く染まっていた。その手に握られている物に気付いて本田は言葉を失った。


 それはどう見ても心臓だったからだ。

 そしてディッツの足元に倒れているバトルコンバットスーツを着た人影は玉子に間違いない。


「……まさか、そんな……おまえ、なんてことを……!」


 ディッツはその本田の動揺を楽しむ様にニヤニヤと横目でみながらクレトに指示を出した。


「クレト、その体で思い切り暴れろ! 腕の一本や二本はなくなったってハシト人の野郎には文句は言わせねえ!」


「了ー解、ボス」


 ドーム状の結界の中で女王の美しい顔が卑しく歪んだかと思うと、おもむろに右拳を結界に叩き込んだ。衝撃波で女王の体は吹き飛ばされ、壁に当たって跳ね返るボールの様に後ろの結界へ背中からぶち当たる。その耳を突き刺すような雷にも似た衝撃音がグラウンドに響き渡った。


 周囲を取り囲んでいる小人たちに動揺が走った。

 アーマーロイドのパイロットたちがハッチを開けて、コクピットから身を乗り出して目の前で繰り広げられる女王の乱行を呆然とした様子で見守っている。


 そして立ち上がった女王が今度は結界にタックルをして弾き飛ばされると、ピンクのドレスが衝撃波でボロボロに引き裂かれて、小人たちからどよめきが沸き起こった。


「本田殿!」


「本田君!」

 

 副指令と葉月が同時に悲痛な叫び声を上げた。

 特に葉月はいつもの強気の彼女ではなく普通の十七歳の少女の顔に戻っていた。目の前で友達が殺されて、更に自分の想像を越えた展開に決断する力を失っている。すがる何かを欲していたのだ。

 そして震える指先で印を結ぼうとしている。


「止めるんだ! 玉ちゃんの死を無駄にする気か!」


 本田が怒鳴った。怒りに唇が震えている。


「……警官になって初めてだよ、この手で犯罪者を捕まえたいって心から思ったのは! お前等全員ここから一歩も逃がさないからな!命を賭けてでも、この手でお前を捕まえてやるよ、ディッツ!」


 そう言い終えると共にバイザーとマスクが閉じて、本田は戦闘体制に入った。表情が隠れて見えなくなったが、全身からは怒気と闘気が滲み出ていた。

 そしてベルトに装着されているライトサーべルを静かに構える。


「温室育ちの警官風情が…… 望み通り殺してやるよ!」


 本田とディッツが対峙した。そして今にも互いに仕掛けようとした時、グラウンドに声が響き渡った。


「双方、待たれよ!」


 本田が振り向くと、少し離れたところにマリスと琴乃が立っていた。マリスは琴乃の頭に銃口を押しつけている。そしてその肩にはウェザーニが乗っていて、指先から伸びた触手がマリスの耳に繋がっていた。


「まさか、あんた……」


 本田は神様を呪うかのように天を仰いだ。

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