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レポート28

 登校する女生徒たちに紛れて、私たちは桜吹雪女子学園へと向かった。

 校門の前までやって来ると女生徒の人だかりが出来ていて、皆怯えた顔で「変質者」や「黒コート姿のトカゲみたいな怪物」を見たと口にしている。

 そして葉月が校舎を見据えたまま絞り出すような声を上げた。


「――ビンビンに気配を感じるわ! しかももうかなり犠牲者が出ているわよ……!」


「どこ!? 場所はわかる!?」


「校舎の三階の向かって左端! で、どうする訳!?」


「葉月と琴乃ちゃんは校門を閉めて、もうこれ以上女の子たちが入れない様にして! あと生存者の誘導も! もし教師が現われても適当に言い繕っておいて。とにかく学校からの避難を優先で。あとはすべて終わった後にタッキーが事後処理で上手くやってくれるから!」


 そう言い終えると私はブレスレットのスイッチを押して、スーツの首筋に収納してある形状記憶合金で出来たヘルメットを装着した。ヘルメットの前面は透明カバーになっていて、そこにはレオや各銃火器と連動して照準や各種データが表示される仕組みになっている。


「琴乃ちゃんも今のうちに装着しておいて!」


「わ、わかった……」


 私は琴乃ちゃんもヘルメットを装着するのを横目で確認しつつレオパルドに指示を出す。


「レオ、フェードアウト! 皆を追い払って!」


「了解デース」


 レオパルドがステルス機能を解除して姿を現すと、自宅の地下倉庫からこっそりと持ち出して腰に装備させておいたマシンガンを掴んで空に向って威嚇射撃をする。

 銃器側で設定した距離を弾丸に組み込まれているディテクター信管が読み取って、設定距離に到達すると炸薬が炸裂する面制圧に適したマシンガンで、カンナニラでもポピュラーなシリーズであり、その名称である「聖剣」を地球風にするならば差し詰めエクスカリバーと言ったところか。


 いま距離は30メートル前後に設定されているのか、私たちのすぐ頭上で20ミリ炸裂弾が次々と爆轟を起こして重低音の炸裂音とともに火球を生み出して朝の空気を引き裂いた。


 しかし周囲の女の子たちは呆気にとられた顔で、遠目に奇異の視線を投げ付けてくるだけだった。

 彼女たちから見れば、ただのコスプレした変人が朝早くから花火で遊んでいる様にしか見えないのかもしれない。しかも今の騒ぎを聞き付けて通学路の遠くに居た女生徒たちが、何事かと校庭の方へと駆け寄ってくる。まったくの逆効果だった。


「もう、これじゃあ埒が明かないわ。琴乃ちゃん、校門を閉めるよ!」


「うん!」


 葉月と琴乃ちゃんが次々と集まってくる女生徒たちに見兼ねて校門へと駆け出す。

 その時、遠くから地鳴りの様な轟音が聞こえてきたかと思うと、校門の所に居た女生徒の一団が悲鳴を挙げて、モーゼが渡った海の様に左右に別れた。

 そしてその中を一台のタンクローリーが猛スピードで校庭へ突入してくる。

 校庭に居た女生徒たちが悲鳴を上げて散り散りになって逃げ回り、校庭は一気にパニックと化した。 


「な、なんなのよ!?」


 私は思わず驚きの声を上げた。その隣りでレオバルドが射撃体制に入ったので慌てて手で制する。

 タンクローリーが私たちの前をすり抜けていく時、助手席に居た男と視線がぶつかった。傷だらけの血まみれの顔をしていたが敵意に満ちていて、執念深いヘビの様な目をした男だった。


「ディッツ……!?」


 直感がその男がディッツだと告げる。

 タンクローリーが玄関前に止まると、今度は上空から全長五十メートル程の流面型の宇宙船が姿を現した。しかも宇宙船は轟音と共に校庭の砂を巻き上げながら、タンクローリーの横へ着地する。


「あいつらピックパークを拾って、このまま逃げる気だわ! でもそうはさせないわよ! レオ、タンクローリーの中の奴を止めておいて!」


 私はレオパルドの背中に引っ掛けてあるライオットガンを掴んだ。元々は連邦警察が暴徒鎮圧用に開発した銃で、特殊シリコンで出来た球状の弾丸を圧縮空気で発射する代物だ。特殊シリコン弾は標的に当たって砕けると、周囲に通電性の高い特殊粉塵を撒き散らしながら、1000万ボルトの電流を発する。

 山のような大男でも、この銃を見たら泣いて逃げたすと言われるほど一部の人間にとっては悪夢の様な銃だった。

 握り拳程の太さのある逞しい銃身の感触が心強い。


 私はライオットガンを肩に引っ掛けると、タンクローリーに向かって走った。そして一気にタンクの上へ飛び乗ると、助走をつけてそのまま四階へとジャンプをする。

 目標はあくまで当初の予定通りピックパークの確保だ。

 今は確率の高いルートを確実に攻めるのみ。

 

 ベランダへ着地すると同時に、教室の中をそっと確認する。

 目の前の教室には誰も居ない。

 私は地続きになっているベランダを横切って、隣の教室へと向かう。

 すると、「ひぃっ!」 と、短い悲鳴が聞こえてきたかと思うと、まるで深い穴へと滑り落ちて行くみたいに悲鳴が遠ざかっていく。


 私は息を殺して窓の隅のカーテンの陰に隠れて教室の中を伺った。

 黒いコートを着た人影が背中をこちらに向けて、教室の中央で机の上で胡坐をかいているのが見えた。そしてその頭部の辺りでジタバタともがいている二本の白い足があった。

 まさに女生徒が飲み込まれる瞬間だったのだ。

 私はガラスを蹴破って教室の中へと飛び込んだ。


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