都市伝説の少女
自殺等の表現がありますので、苦手な方はお控え下さい。
ねぇ、貴方は本当に死にたいの?
だったら、選ばせてあげる。
さぁ、選んで。
本当に死にたがっている者の前にしか現れない少女。死神と呼ばれ、都市伝説になっている。その少女とのコンタクトを取る方法はある街の掲示板だった。
とある少女が掲示板を指でなぞる。
「・・・この人は死ぬ気はないな」
そう、この少女が死神である。彼女は指でなぞるだけで書いた人物の奥底の心が読み取れる。
また指でなぞる。
「・・・はずれ」
今日はいないかと思いながらも指を動かす。
「あ、いた」
一人だけ、死を本気で望む者がいた。
「さぁ、貴方はどんな死を望む?」
少女、否、死神はふらっとその場を後にした。
とあるビルの、とある屋上。
そこには傷だらけの少女がいた。
「貴方が死神さん?」
「そう呼ばれているようですね」
「それは、死神装束?黒地に青い彼岸花のワンピース、素敵ね」
「ありがとう」
「髪も長くて、真っ黒で。本当に死神みたい」
「・・・」
彼女は会話をして、生きているが
目はすでに生気を失い、死んでいた。
「私ね、誰にも愛されてないの。死神さんは、一番望む死に方をさせてくれるって評判だから掲示板に書き込んだの」
この人の望んでいることは、すでに詠んだ。
偽りでもかまわないから、愛を。愛がほしいと。笑顔を向けてほしいと。それが彼女の、最後の願い。なんて儚い願いなんだろう。
「貴方の望みを叶えたい。願いを、すべて私に託して」
彼女は、やはり生気の無い目で語り続け
「もういいよ。もう十分。ありがとう」
私は終始、笑顔でいた。彼女の会話に耳を傾け、否定することも肯定することもなく、ずっと笑いかけていた。
「ここからの飛び降りでいいんですね?」
「私は自由になりたいの。だったら、やっぱりお空を飛ばなくちゃ」
彼女は両手を広げた。
私は最後の言葉を贈る。
「逝ってらっしゃい。愛してるよ」
満面の笑みと共に。
彼女は少し振り返り、微笑みながら泣くという器用なことをしながら、落ちていった。
下の方で何かが潰れる音がした。
後に残されたのは、さっきまでの笑顔がまったく窺えない、無表情の死神と呼ばれた少女だけだった。
彼女は最後に確認に行き、死んでいることを確かめると何事もなかったかのように遺体をそのままにその場を後にした。
これが彼女の日常。
貴方は本当に死にたいですか?
本気ならば掲示板に書き込みを。
きっと最高の最後を貴方に贈ります。
それが、都市伝説である死神の役目ですから。
読んで頂き、ありがとうございました。
自殺者が増えている中、このような題材にしてみました。
実際は、生きている時に何かしらの幸せを感じて頂きたいです。
お気に召した方がいれば幸いです。