表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

さぁて、みんなにご報告!

作者: あゆ

今日は三年ぶりの大学サークルの同窓会。


同窓会って言っても、同回生だけでなく一時期そのサークルにいた先輩後輩も集まる。OB・OG会っていうには世代が限定されるから……こういうのなんていうんだろう?要するに、久しぶりに会った仲間との飲み会だ。50人超の大所帯になるみたい。



私の同期は半分くらい来るらしい。みんな社会人になった今、けっこうな参加率だと思う。

同回生とは連絡を取り合ってて誰が参加とか聞いてるけど、先輩後輩は誰が来るのかよく知らない。

ツイッターであの人は行けないって悔しがってたな、とかはあるけど。誰に会えるのかなー。


何にしても、ものすごく楽しみだ。




飲み会は学生時代よく使ってた居酒屋で、19時から。

……なのに、遅々として進まないバス。後でわかったことだけど、交通事故があったらしい。くそぅ、それなら電車で行ったのに!





結局私が居酒屋についたのは、19時25分だった。

「遅れてごめん!」

遅れる旨はメールで伝えたけど、幹事をしてくれている後輩に改めて謝り、会場である部屋の前で会費を払う。



…ん?何か見られてる。そんなに迷惑かけちゃったかな?


「ゆき先輩…」

「う、ごめんってー。人員把握大変にさせちゃったよね?あ、もしかして乾杯が遅れたりした!?」

「いや、それは大丈夫なんですけど」


「そう?よかったー。あ、誰が来てる?どっかてきとーに座っちゃっていいのかな?席決まったりしてる?」

「あ、てきとーですよ。入って右端のほうに空いてるとこあったと思います。」


「りょうかーい。ありがと!また後でゆっくり話そうねー」



後輩はまだ何か言いたげな目をしてたけど、とりあえず私は早くみんなに会いたかったから、目の前の引き戸を開けて部屋に入った。






「遅れてすみませーん!佐藤ただいま参りました!」

「あ、ゆき。遅いよー。」


席についたら正面に同回生のちさとが座っていた。周りには一つ上の和也先輩とか、二つ下のみずきとか…男女も回生もばらばらで座っているらしい。仲のよいサークルだったから、珍しいことではない。



「いやー、バスが遅れちゃってさ。あ、今日はビールじゃなくて烏龍茶がいいなー」


お茶をもらって、周りととりあえず乾杯!久しぶりに見る顔だらけで、うきうきする。約30分の遅れを取り戻さねば!!

と意気込んだところ……。



「ねぇ、ゆき。早速だけどちょっときいていい?」

「何よちさと。とりあえず同回生めぐりしようと思ってたのに。まぁもちろんちさととも話したいからいいんだけど。」


何か、周りの先輩後輩たちも会話の輪に混じるように身を乗り出している。


「あのさ…えっと…太った?」

「聞き方ひどっ!あー、体重は増えた。できるだけ動くようにしてるんだけどねー」


「いや、そうじゃなくて」

「何さー」


「あーもう!勘違いだったらごめん。…お腹出てない?その……まさか妊娠?」

「あっはは。やっぱりわかる?なるべく目立たない服選んだんだけどねー」



………。




「えっ、先輩。やっぱり妊娠なんですかそのお腹!触っていーですか!!」

「おー、みずき。ういやつめ。いいぞー」

沈黙を破ったのは可愛い後輩だった。

ちさとも和也先輩もびっくりしたのか、まだ目を見開いている。


みずきの発言でようやく頭が働いたのか、ちさとが復帰した。

先輩はまだ何とも言わない。妊娠ネタとか、男性にはつっこみにくいのか?



「ちょっと、私、彼氏がいるとか聞いてないんだけど!いつの間にそんなことなってんのよ!!」

「ごめーん。ひっそりこっそり付き合ってたの。サークルメンバーには誰にも言ってないもんなぁ。あ、だから、ぽっと出の男にやられてうっかりとかじゃないから。安心してー」


おー、ちさとびっくりしてる。なんか楽しい。



「なっ…そんなの当然よ!でも、あんたぽやぽやしてるから、変な男に引っかかってないか心配だわ」


ため息をつきながら、落ち着いてきたちさと。

びっくりしつつも心配してくれる彼女が、私は大好きだ。

やっぱり仲間っていいなーとによによしてしまう。



「そうだ、相手って誰?職場の人?」


和也先輩、驚きから復帰。


「そーよ、誰なの?紹介しなさいよ。結婚はどうすんの?」


ちさとはまたスイッチが入っちゃった。ちょっと声が大きいなぁ。

周りの目をひきつつある、この集団。座ってるから、私のお腹は見えてないっぽい。



「相手ですか?えへへー、実はみんな知ってる人なんですよ。結婚は、年度末に私が仕事辞めてからー。」



周りが一気にざわつく。

うぉ。みんなの反応楽しい。




今まで会話の輪にすら入ってなかった同回生のひろくんが、どこからともなく混ざってきた。


「で?で?誰なの結局!今日来てる?」




さて、そろそろ潮時か。私はにこーっと笑って、言い放つ。


「斎藤先輩」




………



…………



………………





「「「「「はぁぁぁーーー!!!???」」」」」





あーあ。部屋全体の視線を集めちゃった。

まぁ、今回の会で報告するつもりだったから、気にしない。



今まで黙ってるの面倒だし、何もないって嘘つくの申し訳ないし、もやもやしてたけど、やっと言えてすっきり!




「さいとうー!」


一つ上の和也先輩が、同回生の…つまり私にとっては一つ上の斎藤先輩に突撃しにいった。


「佐藤ちゃんと結婚ってまじか!!」




いじられキャラで、シャイな私の彼氏さん。

モテないけどみんなから慕われる人気者で、キャラじゃないからと周りに秘密にしてきたこの関係性。


つまり、恋愛候補としてなかなかあがらないわけで。

いい人だけど、周りより早く結婚するとは思われてないわけで。





和也先輩が斎藤先輩に詰め寄ったことで、私の周りでざわついていたその内容が、みんなに広まったらしい。



それを見計らって、私は立つ。



「皆さま、お久しぶりです。平成○年入学の佐藤ゆきです。本日は遅刻しまして、始めから参加できず、すみません。

えー、この度、このように子どもを授かりまして。斎藤先輩と結婚することになりましたこと、ご報告させていただきます。


佐藤が斎藤になるとか一文字増えるだけですし、これからも今まで通り佐藤って呼んでもらって全然かまいません。

…ってことで、みんな祝ってー!」



最後ははっちゃけてみた。

てへっ☆



みんなが、おーだの、わーだの、まじでー!?だの言っている。


二つ上の回生の代表だった先輩が声をあげて、まとめてくれた。


「何かもう、わけわかんないけど、まずは二人の幸せに乾杯!」


「「「「「かんぱーい!」」」」」




その後ようやく、同回生のみんなやら、仲良かった先輩後輩やらと喋れた。

私から話しに行かなくても向こうから来てくれて、なんか楽した気分。



うん、やっと報告できて、みんなに祝ってもらって、よかったなぁ。ほっこりほくほく。






あ、彼氏さんはというと、上の方の回生の方に囲まれて、酒をつがれいじられ可愛がられていました。


できちゃった結婚じゃなくて、プロポーズの後にわかったんで、できちゃってた結婚ですよー…なんて弁明している声が聞こえる。


うーん、回収が大変そうだなぁ。とか思いながら、相変わらず仲良しな先輩集団を眺めて、にやにやする。




うん、楽しい同窓会だった。

……このあとの二次会(回生ごと)で、しっかり馴れ初めを吐かされたのは、まぁご愛嬌ってことで。

うぉぉ、みんな容赦なかった。妊婦には優しくしてよね!とか、言ってみる。




そんな私の、結婚報告。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ