そのさんじゅうさんっ! ルナ、頑張る!
ルナがある奮起をする回です。・・・とは言っても贅沢な理由の奮起なんですけどね。
「・・・あぅ・・・」
昼休み、いつもの屋上で俯きながら声を上げたのはルナ。彼女は今、屋上である部分を摘んで唸っていた。
「・・・ちょっと・・・太ったような気が・・・」
摘んでいたのは自分の脇腹。彼女は元々小食であり、そこまで太る要因はないのだが・・・
「ふえぇ・・・やっぱりお腹がぷにぷにしてるような・・・」
ルナは、自分の脇腹から手を離して制服を直した後、ある宣言をした。
「私・・・ダイエットします!!」
「え・・・?」
早速教室で咲夜華にそう告げたルナ。案の定、咲夜華からはぽかんとした表情で返された。
「ルナちゃんって・・・ダイエットしなきゃいけないって感じじゃないと思うんだけど・・・」
「しなきゃいけないんですっ!!脇腹なんか・・・もう・・・ぷにぷにしてて・・・」
「そ、そうかなぁ・・・」
咲夜華にはとてもダイエットしなきゃいけないようには見えない。が、ルナはしないといけないと言いだす。
「それにルナちゃん、体育祭近いんだから体調崩すわけにもいかないでしょ?無理なダイエットって体に悪いって聞くけど」
「それでも・・・それでもぉ・・・」
ルナの顔を見た時、既に目が潤んでいるのを見た咲夜華は、『これ以上言うと絶対泣く』と確信した。だが、無茶をさせるわけにもいかず、ある意味四面楚歌な状態となった。
「あまり無茶して、体育祭出れなくて、敏豪君に嫌われてもいいの?」
「あうぅ・・・」
ルナには悪いが、思った事を告げた咲夜華。踏ん切りつけばいいのに、と思っていたが、それは・・・
「・・・やっぱり痩せます!!」
甘かった。
「・・・で、あたしに聞きに来たってわけ?」
「は、はい!」
咲夜華に聞いても応えてはくれないだろうと考えたルナは、プロポーション抜群な音羽に聞いてみた(実質彼女は出てる所は出て引っ込む所は引っ込むという立派なモデル体形だ)。
「そう言ってもさ、あんたってそこまで急激に痩せようって体じゃないよ?寧ろ贅沢で全世界の女の子を敵に回すような発言な気もするくらいだし」
「でもぉ~・・・」
音羽は少し思案にふける。何かいい策はないのかと。策というよりは彼女を納得させ、かつ他の方向に気を向ける方法はないか、という感じだが。
「ダイエットって言ったら・・・絶食だけは絶対にダメだかんね?」
「え・・・」
音羽が当たり前のことを言った時、ルナの顔が一気に絶望に染まった。
「『えー』も何も、絶食したらダイエットどころか死んじゃうって・・・」
「じゃ、じゃあ他に何かやれることって・・・!!」
「それに、聞いた話だけど、ダイエットすると胸から痩せるらしいよ?」
「う・・・」
とりあえず自分の持つ記憶を全て言う。
「あと、ダイエットダイエット、とか言って無理にやるとリバウンドして一気に太っちゃうって聞いたし」
「あうっ・・・」
三段重ねの攻撃で一気に言いくるめた・・・つもりだったが。
「む、胸はマッサージして大きくしてますもん!!」
「だからその胸に行く脂肪が痩せた時に燃焼してなくなってくってのに・・・。て言うかやってんの!?」
「だって小さいような気がしたから・・・!」
「いやあんただって十分大きいって・・・はぁ・・・」
仕方ないから多少は効果がある・・・と思う方法を列挙した。
「まず運動。やり過ぎてもダメだから適度にやること」
「う、運動・・・」
「そーねー、ウォーキングだったら1時間歩いて大体200kalだったっけ?そんなもんだった。で、あとはご飯食べる時に30回以上噛むとか」
「・・・や、やります!!」
とりあえず掲示した妥協案に乗ったルナを見て、一応何とかなるかな、と思った音羽であった。
(ちなみに実際には散歩を110分かけて行って300kalです。=通常歩(通学とかそういう類で)90分、=速歩1時間ですby作者)
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「えっと・・・私の家から敏豪さんの所までが歩いて大体20分、私の家から学校までが18分・・・敏豪さんのお家から学校までが38分くらい・・・うぅ・・・私の家と敏豪さんの所を往復したとしても1時間ない・・・」
自宅に帰り、早速思慮に耽るルナ。いつも自分が行動する範囲で計算してみて、朝と帰りで運動すればいいんじゃないか、と思いついたルナ。が、ルート的には単に敏豪の家と自宅の往復を追加しただけ。
「他に方法は・・・ないのかな・・・?」
他に思いつく方法が無いため、ネットを使ってみた。検索はもちろん、『運動 カロリー』。
「階段の上り下りでもOK・・・水泳・・・あぅ・・・今の時期にやりたくないですよぉ・・・」
慣れぬマウス手つきでカチカチと情報を得ていく。しかし得られるのはルナにとって苦手とするものばかり。
「うー・・・どれも運動・・・けど・・・やらなきゃ・・・!」
ルナは一旦PCから目を離し、カレンダーを見た。カレンダーには翌日は土曜と示されていた。
「・・・マラソンコース・・・走ってみよう!!」
ルナは決意した。明日(土曜)、真剣に走ろうと。
土曜、ルナは朝起きてジャージに着替え、早速走ろうと玄関に立った時だった。
「・・・そういえばそろそろ食材が切れそうだった気が・・・」
流石に食糧問題だけは回避できず、土曜は諦めて買い物に行った。しかし日曜、この日ばかりは本気で走った。マラソンコース3.5kmを2時間30分かけて。
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翌月曜日。
「お、おは・・・よう・・・ござい・・・ます・・・」
「・・・ルナ・・・ちゃん・・・?」
足取りが非常に重いルナを見て、思わず言葉を失う咲夜華。
「ど、どどうしちゃったの!?」
「い、いえ・・・両足・・・筋肉痛で・・・」
「き、筋肉痛?」
とりあえず教室まで連れて行き、席に着かせて話を聞いた咲夜華。
「・・・昨日本当にマラソンしたんだ・・・」
「は、はい・・・3.5km、本気で走って2時間半・・・」
咲夜華の目には、今目の前で椅子に座っているルナが、とてもつらそうに見えた。脚が生まれたての小鹿のようにぷるぷるとしており、机の上に体をべったりとくっつけてしまっている所からである。
「あうぅ・・・ダイエットがぁ・・・」
「だから、ルナちゃんは元々ダイエットする必要のある体じゃないんだってば・・・。敏豪君、多分だけどちょっとぷにっとした子が好きかも知れないよ?」
「うー・・・」
流石に動いて反論はしないが、呻き声が反論な雰囲気を醸し出していた。
その後敏豪が現れ、咲夜華から事の顛末を聞いた彼はルナに「今のルナがいいんだけどな」といったところ、ルナは顔を真っ赤にして「あぅあぅ」と言いだし、頭から煙を噴き出していた・・・
ちなみに余談だが、咲夜華はあまり好きじゃない牛乳を飲むようになっていた(夏休みが過ぎてから)。理由は単純、自分が一番(ある部分が)小さいから。それで馬鹿みたいにがぶ飲みした(一日にパック牛乳を2パック空ける)結果、よく不調を訴えるようになったりもしていた。
様々な手段がある中、効果があるかが分からない「牛乳を飲む」という方法に出たその理由は、アリアネルゼの「牛乳が好きで、よく飲んでたから」という発言から。アリアネルゼはその話を聞いた時、「牛乳飲んでたからこんなふうになったわけじゃないのにな・・・」と言っていたとか。
次回から体育祭編、まずは開会式まで(ただし!開会式はカットします!簡単に済ませます!あの長い話を抽出して書くのが面倒なので!!)。
さてフラグが乱立しそうなこの体育祭、一体どうなることやら。