そのさんっ! 代永咲夜華親衛隊の恐怖
この小説最大のネタキャラ軍団、親衛隊の登場です。キモかったり笑いのつまみになったりなど、お好きな扱いでどうぞ。
「敏豪、今朝フラフラしてたけど一体何があった?」
「・・・気にすんな、昨日寝るのが遅かっただけだよ・・・」
朝、いつものように一樹と歩いていた。
「ま、気にしないでおいてやるよ」
「助かるぜ、とっつぁん」
「バカ、まだ老けてねーよ!まだピチピチの15歳だっつの!」
「・・・わり、さすがにそれは引くわ・・・」
「・・・すまなかった・・・」
お互いからかい合いながら(最後は見事にすべらかした一樹に引きながら)校門をくぐって玄関に着いた時だった。
「あ、榊君おはよ♪」
「お、おう・・・おはよう、代永・・・」
玄関ですれ違った代永に挨拶され、俺も(半ば怯えながらに)返した。それを一樹にしっかりと見られていた・・・
「・・・なぁ、敏豪」
「・・・なんだ?」
「お前いつ代永と仲良くなったんだ!?昨日まで挨拶されることもなかったじゃねぇかよ!!」
「昨日転んだ所に俺がいて下敷きになったのを助けられたと思われたんだよ、それ以外に何かあるのか!?」
一応あのことは伏せておいた。代永との約束だし。
「・・・お前、今日が命日になるかもな・・・」
・・・今日って・・・ああ、そう言えば代永には親衛隊がいるっていってたっけ・・・。・・・さらば、俺の人生。
「敏豪、俺はお前と共に死んでやるからな、だから安心して死んでこい」
「・・・どうしてだろう、目から汗がだらだらと・・・」
正直、一樹の心ないような気遣いが心に染みたその瞬間だった・・・。道連れ大歓迎だが、先に死ねっていうのは・・・
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「貴様っ!我らが姫を誑かしたな!?」
そして悲劇は起きた。マジ悲劇。どうしようもないくらい悲劇。はっきり言おう、これが今後の俺の学校生活の障害になった。階段登ろうとしたら踊り場に変人がいた。
「・・・なぁ、もしかしてあれ・・・」
「もしかしてももしかしなくてもあれだな、というか「我らが姫」って・・・」
「「・・・ぷっ」」
「笑うな!!」
俯いて笑いをこらえる俺と一樹。・・・いや、だってな?一人称「我」って今まで聞いたことないぞ!?しかもポーズがキモい(俺達に向けて指をビシッ!と突き付けている。脚も変にクロスさせて・・・なんかキザっぽい感じでやってるけど・・・如何せん基盤がキモいからキモさも当社比三割増し)!んでそれが笑いを助長させてんだよ!!
「ええい、そんなことはどうでもいい!榊敏豪!今すぐ我らが姫から離れろ!!」
「・・・なぁ、今・・・」
「明らかに名前間違えたな。というか普通は敏豪って呼ばないけどな」
「・・・シャラーップ!!」
・・・どうしよう、冗談抜きで我慢の限界きそうな・・・
「・・・面倒だしスルーしようぜ、スルー」
「そうだな、こんな奴に構って遅刻とか恥以外の何物でもないしな」
俺達は階段を上ってさっきから「ビシィッ」と指先をこっちに突き付けたままのポーズをとった変態(笑)を大袈裟に避けて進む。
・・・第一こんなのと関わっていたら一体どれだけの俺が笑い死ぬか・・・
「・・・・・・」
そして変態は呆然と立ち尽くす。何一つ言葉を発することもしない。
・・・ザマミロ。
「き、貴様!我らを敵に回してこれで済むと思うなよ!!」
「あーはいはい。敵にでもなんでも勝手に回せー」
後ろからあの変態の「ぐぬぬ」という声が聞こえたが、俺達は一切合切無視して教室へ向かった。
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教室に入ってからも悲劇は続く。
・・・つか親衛隊って、こんなにいたのね・・・
「「「「殺せっ!!」」」」
「開口一番に「殺せ」って!たかが挨拶だろうがよ!!」
「さすが親衛隊、自分達がされないことを他人がされると途端に殺戮マシーンに早変わり・・・」
俺は教室から走って逃走、それを追いかけ始めた親衛隊、総数15人。全員釘バット所持がデフォルトなのはご愛嬌。
「我らが姫を誑かす輩はーっ!!」
「「「Search and Destroy!!見敵必殺!!」」」
「だからなんで殺されなきゃならねえんだってのーっ!!」
ちなみに俺は始業ベル直前で先生に保護してもらえた。親衛隊の奴らは皆説教。・・・通称『生徒指導室の化け物教師』に・・・
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「・・・さすがに昼に現れるなんてことはないだろ」
「だよな。代永はいねぇし、落ち着いて飯も食える・・・あ」
鞄を開けて気付いた。朝、昨日のことでグロッキーになっていたから昼飯作ってくんの忘れた・・・
「・・・一樹、悪ぃ。先に飯食っててくれ。購買でパン買ってくる」
「おー、気をつけてなー。くれぐれも代永に会って話したり親衛隊にあったりするなよー」
「うーい」
一樹の忠告を背に教室を出た瞬間だった。
「発見、我らがEnemy!!」
「うわ、ダサっ!何処の日本語習いたてな外国人だよ!!」
「捕まえろ、そして殺せ!!」
「捕まるかっての!!」
そして第二次逃走劇が始まった。・・・なんか朝より人数増えてる気がするんだけど!?
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「・・・はむっ」
教室の、自分の席(隅っこ)で女子が一人、黙々と弁当を食べていた。
「・・・代永、咲夜華・・・。魔族類に該当する可能性大・・・尻尾を掴み次第討魔を開始する必要あり・・・なのです・・・あむ」
何やら物騒なことを言っていた・・・が、その後の一言が物騒さを打ち消してしまっていたのはご愛敬だ。
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「な、何とか、撒いた、か・・・」
購買で、俺は一息ついていた。親衛隊の奴ら、便所を上手く使って逃げ切ることが出来たようで・・・
「あれ、どうしたの榊君?」
「・・・マジで?」
声をかけられてそっちを見た時、そこにいたのはもう一つの危険因子(俺的に)、代永だった。
親衛隊の奴らは・・・きっちり撒いたな、いない。
「・・・親衛隊の奴らに・・・追われてたんだよ・・・」
「親衛隊?」
どうやら代永は親衛隊の存在は知らないらしい。・・・というかあんな馬鹿騒ぎしていて全く知らないってのもどうかと思うんだが。
「・・・気にすんな。ホントなら飯買いに来ただけなんだよ・・・」
「そっか。その親衛隊って人達に気をつけてね?」
「・・・気をつけるよ・・・」
適当にサンドウィッチを二つ買って立ち去る俺。いつまでも代永と一緒にいたら何ればれるからな・・・居場所。
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放課後。あいつらは本当にしつこかった。
「榊敏豪ぇっ!!本日昼、姫と会って話をしたというのは本当かっ!?」
「・・・敏豪、マジか?」
「・・・購買行ったら偶然・・・というか元はというとお前らなんだよ!!お前らが追いかけ回したりしなきゃ何事もなかったんだっつーの!!」
生徒玄関を出て数メートル歩いたところで・・・奴らの群れと鉢合わせ。・・・つかいつ昼に会ったのを知った?俺誰にも言ってないぞ?
「問答無用!我らの姫を汚す輩は・・・死してその罪を償うべしぃっ!!」
「だからって簡単に死ねるかよぉっ!!」
恒例釘バット軍団が突撃しようとしたその瞬間だった。
「あれ、これって一体何?あ、榊君も」
彼らにとっての姫、俺にとっては・・・救世主・・・とでも言うのか?代永がいた。
「ひ、姫・・・」
「今日も・・・神々しい・・・」
「ああ・・・これで何時死んでも・・・いい・・・」
「え、えーと・・・どういう・・・こと?」
突然ひれ伏したり崇めたりなどなど、なんかよく分からない行動(というかあいつらにとっては崇拝している感じだが)に代永は困る。
「・・・昼に言ってた親衛隊だよ。代永の。」
「え、えぇっ!?わ、私の!?そ、そんなの困るよ・・・」
本当に困り果てた様子の代永。しかし目の前にいる連中は行動を止めようとしない。
「代永、解散っていってみたら?」
一樹が助け船を出した。簡単に言えば、崇拝している奴らなのだから、『解散』とでも言えば散る、という考えだ。
「え、えと・・・か、解散!」
代永が恥ずかしそうに「解散」というと・・・
「「「了解しました、姫様!!」」」
「ひ、姫!?」
盛大な崇拝ボイスと共に軍隊さながらの解散を見せた。というか靴音を揃えて立ち去る奴らを初めて見た。
そして去り際の「姫」発言に代永は困っていた。
「・・・姫・・・そんな大層な人間じゃないよぉ・・・」
・・・否、照れていた・・・
今回ちょっぴり出てきた、ちょっと特徴ある口癖の女の子。彼女は2話ほどくらいで大きく関わってきます。なんとなーく雰囲気はあれですけど。
一話あたりの文字量は大体1400~5000の間にするつもりです。少ないなどあるかもしれませんが、そこは勘弁していただけると幸いです。
そして最後に。
急展開過ぎる展開は、目をつぶって頂けると嬉しいです!!