そのにじゅうよんっ! なんてこった!?まさか『アイツ』に恋人が!?
あいつとは・・・ちょくちょく出てくるモブ一号、と言っていいあいつです・・・ヤツです・・・
タイトルでも分かると思いますが・・・その『ヤツ』に・・・恋人が出来ます・・・
それは、ある日の電話から始まった。俺が知りうる全ての事情を見たとしても、あり得ないと思っていたこと・・・
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「あ、敏豪君?ちょっといいかな?」
「咲夜華?どうしたんだよ、こんな遅くに?」(現在22時)
夜、突然俺の携帯に咲夜華から電話が掛かってきた。
「なんだよ?もうじき寝ようと思ってたのに」
「あー・・・ちょっと相談受けちゃってね?友達から」
「・・・なんだ、まさかの『請負人』?」
まさかの依頼が来た。・・・しっかし、いつもなら女子からの依頼は一樹から来るのに、なんで咲夜華から・・・?
「あれ?なんか変だった?」
「いや、依頼主女子だろ?」
「え!?なんでわかったの!?」
「今までの傾向。男子は俺に直で、女子は一樹経由だったから・・・おかしいとは思ってっけど」
「敏豪君の思う通り、女の子から。・・・だけど、その子すっごい人見知りが激しくて恥ずかしがりだから・・・」
・・・なるほど・・・ね。
「で、話はなんか聞いてんのか?一体如何したいから頼んできたのか、って」
「私もそこまでは聞いてないんだ・・・」
「・・・とりあえず話だけ聞いてくれ。恋愛絡みなら手段を手当たり次第に考えねーとダメだろうし・・・」
「あ、うん、分かった。明日私の家にその子遊びに来るから聞いておくね」
「OK、じゃおやすみ・・・」
「おやすみー」
簡単に電話口で別れ、俺は早々に眠りに着いた。・・・恋愛絡みだったら・・・どう動くかで決まるからな・・・
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後日。敏豪は人気のない公園に来ていた。当然、咲夜華の指定で。
「ごめん敏豪君!無理言って人気のない公園に来てもらったのに遅れちゃって!」
「別に待ってねーよ、俺も寝坊して家出るの遅れちまったから。・・・そっちの女子が?」
「うん、アリアネルゼちゃん。私はアリアちゃんって呼んでるけど」
「・・・」
【初めまして、アリアネルゼ・トーラレイアです】
何処からか取り出されたスケッチブックに敏豪は驚いていたが、しっかり読んで把握した。・・・名前を。
「・・・何故スケブ?」
【人と話すのが苦手で、恥ずかしくて、すぐ緊張しちゃうから】
「・・・っ」
・・・ああ、なるほどね、と心の中で理解した敏豪だった。
「・・・ところで、告白したい相手ってのは?」
【桐生君】
「・・・桐生?あれ?俺に思いっきり思い当たる節があるんだけど?」
「・・・アリアちゃん、私にも思い当たる人が・・・」
【誰?】
顔を赤くしながらも、スケッチブック両手に首を傾げて聞くアリアネルゼ。そして、敏豪と咲夜華は同時に同じ人物を言った。
『桐生一樹』
「・・・!・・・!!」
こくこくと頷いて肯定の意を示すアリアネルゼ。そして同時に溜息を吐いた敏豪と咲夜華。
【どうしたの?】
「ううん・・・大変な人に恋しちゃったなー・・・って・・・」
「・・・あいつ・・・極度の胸好きだから・・・なぁ・・・」
「・・・?」
まったくわけが分からない、と言った感じで首をかしげるアリアネルゼ。
「私は今までよく奇行してるとこ見たから分かるけど・・・凄いよ、桐生君って・・・」
【海での事は見てたけど、それ以上なの?】
「・・・まあな。1-B変態集団の頭やってるし、部屋にエロ本はある・・・つか全て胸関連で・・・。で、最後に・・・」
アリアネルゼは敏豪の言葉を待った。食い入るように。
「『死ぬ時は老衰かさっきゅんみたいなきょぬーっ娘の上で死にたい』つってたからな。・・・あ、さっきゅんってのはサキュバスのことな?どっかのSNSで出たやつだと思うけど・・・」
「・・・」
顔を赤くしたアリアネルゼ。
【私もおっぱいなら自信があるから】
「いや、そこは張り合っちゃいかんと思うぞ・・・」
「あ、でもアリアちゃんの話はホントだよ?今は抑えつけてるからそうは見えないけど、実際は凄いよ?」
「・・・は?どういう・・・」
「結構大きいから。多分・・・桐生君の好みかも」
敏豪は何も言えなかったりした。
「・・・とにかくだ、告白するなら・・・まずは手紙とかどうだ?」
【手紙?】
「自分が思った事を素直に書いて、アイツの家のポストかなんかに突っ込んどけばちったあ効果あるだろ?」
【そうかな】
何処かしら怯えのような感じで聞くアリアネルゼ。顔が赤いのはご愛敬。
【でも、アルバイトのついでに一緒に入れるのもあり、かな】
「アルバイト?」
【新聞配達やってるの 私、貧乏で学費も免除してもらってるから】
「じゃあそのついでに手紙突っ込んでみたら?」
【そうしてみる ダメだったらまたお願いしていい?】
「何度でも手伝ってやるよ、成功するまで」
「・・・あり・・・がと・・・」
アリアネルゼの口から出た感謝の言葉に、敏豪は目を丸くしていた。あまりにも意外過ぎたからだ。
「・・・ま、まあ、頑張れ」
「・・・!・・・!!」
盛大にかぶりを振って頷くアリアネルゼ。少し不安になる敏豪であった。
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「・・・桐生君のお家は・・・ここ・・・はぅ・・・」
アリアネルゼは一樹の家の前にいた。残っていたのは一樹の家の新聞のみ。
「新聞受けに・・・手紙も・・・一緒に・・・」
アリアネルゼは新聞受けに手紙も一緒に入れ、顔を赤くして帰路に着いた。
「気持ち・・・伝わるといいな・・・」
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「まったく・・・お袋のヤロー人使い粗いんだから・・・おろ?手紙?なんで新聞受けなんかに?」
一樹は新聞受けに入れられた手紙を見つけ、宛先人を見た。そこには・・・
「『桐生 一樹君へ』・・・って俺宛?誰からだ?部屋戻ってみてみるか」
一樹は部屋に手紙を持って戻っていった。新聞はちゃんと母親に渡して。
「・・・で、差出人が分からない封筒、と。可愛らしい柄なんだけど」
封筒を破り、中の手紙を取り出し、読み始めた。そこには・・・
【突然のお手紙で驚かせてしまい、申し訳ありません】
の出だしで書かれた文が。
「・・・これ・・・え、マジで!?うっそ、ついに!?俺に春が!?って出したの・・・うおぉっ!?これは夢!?夢なのか!?」
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「・・・うー・・・ん・・・」
朝7時ごろ。敏豪の携帯に電話が鳴った。
「・・・一樹・・・?なんなんだよ朝っぱらから・・・」
『敏豪、聞いてくれ!俺・・・俺告白されたんだけど!!つか完全じゃないからお呼び出し!!まさか西条東おっぱいランキング1位のトーラレイアから告白されるなんて思わなかった!!』
「・・・なに?何ランキング?」
『まともないいかたすりゃ西条東バストサイズランキング!誰がまとめたか知らん西条東の女子のバストサイズのランキングだよ!!
男子にとっちゃ夢をまとめたランキング!それの1位のトーラレイアから告白されるって・・・俺幸せ過ぎんぜ!?』
「あっそ」
『まーお前には3位の音羽とか推定16位のリーアフォルテに30位のヴェイルフォールがいるしな、興味無いんだろ?』
「それ抜きでもどうでもいい」
バッサリと切り捨てた敏豪だった。強いて言うならば、ランキングすらどうでもよかったり。
「まーとにかく行ってやれよ、来て欲しいって言ってんだろ?」
『当然行く!行くっきゃねーだろ!!よーし、マシな服着てくぞー!!』
そして、ブツンと切られた電話。
「・・・大丈夫かな・・・トーラレイアのやつ」
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「ちょっとばかし早く着いちまった。でも・・・やべぇ、にやけ顔が消えねぇ」
一樹はアリアネルゼから指示された公園に既にいた。時間は2時50分。来て欲しいと言われたのは3時。明らかに気持ちが先行していた。
「早く来ないかなー・・・そだ、近くをぐるっと歩いてよ。少しは時間つぶせるかも」
一樹は近くを歩き始めた。・・・とはいえ、足取りは非常に軽く、浮かれているのが誰の目にも分かった。
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「・・・な、なあ咲夜華・・・」
「どうしたの、敏豪君?」
「・・・何で俺達、こんな覗きみたいなことしてんだ・・・?」
敏豪と咲夜華は一樹をこっそりとつけ回し(一樹は一切気付かなかった)、告白会場を突きとめて、絶対に見えない位置から覗くようにしていた。
「だって心配だもん、アリアちゃん、すっごい恥ずかしがりだから逃げだしたりしちゃわないかが・・・」
「でも決意したんだろ?だったら信じてやらねーと」
「でも・・・」
お前はトーラレイアの母親か、と心の中で突っ込む敏豪だった。なお、アリアネルゼにはこのことを一切伝えていない。
「・・・あ、桐生君が戻ってきた」
「時間は・・・2時58分、時間的には問題ないな・・・お、トーラレイアも来たみたいだ」
奥の方からとてとてと歩いてきたアリアネルゼ。ちょっと急ぎ足なのは、どうもおめかしで時間がかかったためだ、と敏豪は思った。
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「あ、あの・・・き、き、桐生君・・・です・・・か・・・?」
「ん?」
後ろを振り向く一樹。後ろにいるのは当然アリアネルゼ。
「は、は、はじめ、まして・・・あ、アリアネルゼ・トーラレイア・・・です・・・」
「え、と・・・こちらこそ初めまして・・・?桐生一樹です」
お互いにぎこちない挨拶をする二人。遠くでは敏豪が『一樹があんなんなるとか珍しいな』と言っていた。
「あ、あの、お、お手紙、見て、来てくれた、んですね?」
「あ、ああ。ラブレターは初めてもらったから・・・浮かれてて」
「そ、その、お手紙じゃ、えと、き、気持ちが伝わらないと思って・・・だ、だから、だから・・・」
一拍置いて、大きく息を吸って、アリアネルゼは言った。
「あ、改めて、私の告白、聞いてください!わ、私は、貴方のことが大好きです!ずっと想ってました!つ、付き合ってくれませんか!?」
大声での告白。アリアネルゼからすれば今まで出した事のない大声だった。ちなみに隠れていた咲夜華は驚いていた。
「・・・名前で呼ぶの面倒だし、アリアって呼んでいいか?」
「・・・ふぇ?」
アリアネルゼは一樹の声に上を向いた。その瞬間だった。
「ひゃうぅっ!?」
一樹に抱き締められ、上ずった声を上げる。
「寧ろ俺からお願いしたい!俺と付き合ってくれ、アリア!!」
「・・・はい・・・!はい・・・!!」
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「・・・おめでと、アリアちゃん」
「これで、俺達もお役御免、かな?」
「だね」
敏豪と咲夜華はこっそりと茂みから出て、帰路につく。
「あ、そうだ敏豪君」
「なんだよ咲夜k・・・ちょ、何抱きついてきてんだ!?」
「このままデートしようよ!リーアフォルテさんもいないし、二人きりだから、ね?」
「俺としてはもう帰りたいんだけど・・・ここで音羽に見つかったらまた何されるかわかんねーし・・・」
「いーの!というか敏豪君は私ばっかり見てればいいの!!」
(・・・なんという独占欲の塊・・・)
敏豪ががくんとうなだれた時。
「・・・あ、あのね、敏豪君・・・」
「今度はなんだよ」
「血、吸わせて?」
今ここでか、と思い、焦る敏豪。
「あのな?いきなり言われても俺の心の準備が出来てねーんだけど?それにここ人目につきやすいと思うけど?」
「でも・・・もう・・・我慢できないもん・・・」
「だから我慢しろっt「いただきまーす!」だから我慢しろってー!!」
結局敏豪は咲夜華に血を吸われる羽目になった・・・
次回もキャラが増えまーす。やっちまったなおい、みたいな気分でお待ちください。
後、増えるキャラに珍しく男性キャラが。・・・とはいえ彼もモブです。はい。