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三部

 俺は、笹波と道山の二人を落ち着く事のできる場所まで案内した。こうなってしまったからには、二人には事情を聞かなければならないだろう。

 さっきから二人が話していた『魔王』というのは一体何か? 復活してしまった『魔王』に、どう対処をしていくべきなのか?

 物が乱雑に置かれ、女物の服や菓子の袋でぐちゃぐちゃになった部屋で、座る場所さえない。そのへんにあるものを適当におしのけ、俺達は、ゴミの詰まれたテーブルを囲んで話し合っているところだった。

「何で私の家に来るのよ!」

 律儀にもお茶を淹れてやってきながら、文句を言った沙之。


 沙之の家に訪問をしたとき、最初は道山と笹波のけったいなかっこうを見た瞬間に、家のドアを閉めようとした。

 だが、俺はドアの間に足を挟んでそれを止めた。

 俺はぐっ……っと沙之に顔を近づけ、できるかぎり神妙な顔をして言う。

「お前にしか頼めないんだ。何も言わずに入れてくれ……」

 沙之はビン底メガネにちょんまげ頭の顔を赤くしてから、ドアを開けたのだった。


 今の沙之は、髪を整え、メガネをコンタクトに変えて学校の制服を着た姿であった。

「沙之さん。何で家でも制服を着ているんですか?」

 笹波は沙之に聞く。

「い……いえ、これは……」

 しどろもどろになる沙之。

「お前が何で巫女装束を着ているかの説明の方が先だと思うぞ」

 戦闘スーツを着ている俺に言えたことではない。だが、笹波にだって言えた事ではないはずだ。

「まあ僕から話そう。僕は聖剣の製法を受け継ぐ一族だ」

 道山が言うのに笹波が続く。

「私は魔王を封印する一族の末裔です」

 次は俺だろう……言いたくはないが言うしかない。

「俺は孤独なヒーローだ」

 聞いた沙之はキョトンをしていた。それはそうだろう。俺だってまったく意味が分からないのだから。

 そこにすかさず笹波が言った。

「そして、沙之さんは片付けられない女ですよ~」

「あんたらと一緒にするな!」

 そして、道山がすかさず言う。

「君の秘密の重大さも理解している。打ち明けてくれてありがとう」

「あんたらに比べてば全然重大じゃないわよ! それに、明かしたんじゃなくてあんたに発かれたの!」

 つっこみがいると……楽だ……

 笹波と道山がボケ倒すのを見て、俺は心の中で叫んでばかりだったが、直接にそれを指摘してくれる奴がいると、本当に助かる。

 非常識な奴らに、自分の常識をぶつけてくれる人間がいるから、感覚が麻痺しないですむ。

「さて、自己紹介も済んだところで、これからの事を話し合おう」

「私は自己紹介してないからね! 仲間じゃないからね!」

 沙之が言うのが聞こえていないかのようにして、そのまま道山が話し始めた。

 魔王は天空に城をかまえて、そこを根城にするらしい。

「窓から外を見てください」

 笹波が言うので、俺は部屋の窓から外を見てみる。

「……なんだあれ……」

 夜の空には、黒光りをする物体が浮かんでいた。

 魔王を封印していた、黒い棺のような色をした金属で作られた城で、遠目に見ても、大きさは金持ちの豪邸など比ではないくらいのデカさであると分かる。

 石作りではないにせよ、形は西洋の城のようであり、いかにも、魔王やらの居城にふさわしい雰囲気を持っていた。

「文献の通りです。魔王は城を作り、『けがれ』を空から地上にはなって、地上を混乱におとしいれます」

「すぐに問題が表面化するわけではないが、このままほうっておくと街は大惨事になるだろう」

 それで、俺はこの二人にどうするべきかを聞いた。

 すぐに魔王の城に乗り込んでいく。道山がすでに魔王を殺す事のできる剣を作って持ってきているため、準備は十分なのだという。

「すぐに行くぞ」

 俺達は沙之の部屋から外に出て行った。


 俺と沙之の家の前には子供用の広場があった。

 そこまで出てきた俺達は、全員で城の姿を確認する。

「ついてきちゃったけど、ここからはあんたらだけでがんばるのよね」

 沙之が言う。この場所から俺達が魔王の城に乗り込んでいくのを見送るつもりらしい。

 まあ、ついてきたところで何もできないわけだ。当然だろう。

 だが道山は、首を振って沙之の手をとった。

「君の力も頼りにしている」

 それに続いて、笹波も言い出す。

「そうですよ。旅は道連れっていうじゃありませんか」

 もう片方の手を、笹波がとる。

「それって、そっちの方から言う事じゃ、ないんじゃない……?」

 この二人は沙之も魔王の城への侵攻に巻き込むつもりらしい。

「俺たちは秘密を明かし合った仲間たちだ。どんな事があろうと一緒になって戦おう。死ぬときだって一緒だ」

 状況が合っていれば泣ける言葉にも聞こえただろう。だが、今の道山は沙之を巻き込むために、真面目な顔でとぼけた事を言っているのだ。

 よくもまあ、道山はあんな事を言っておいて顔がニヤつかないものだと、俺は心底から感心する。

 そこに沙之が勢いよく口を挟んだ。

「ちょっと待った! あんた達とは違って、私は一般人よ! そんな無茶についていけるわけが無いじゃない!」

 だが、俺はそれを無視した。他の二人も同じ態度だ。

 お互いに秘密を明かし合った仲であるのは変わりが無い。自分たちだけで危険に立ち向かうというのもバカらしい。どうせなら、こいつも巻き込んでしまおうというのが、俺の考えだった。おそらく他の二人も同じ考えだろう。

「さあ、沙之さん。つかまって」

 笹波は言うが、沙之が笹波につかまるというよりは、笹波が逃げようとしている沙之をつかんで逃がさないようにしている形だ。

「ちょっと! 人の話を聞きなさいって! こら!」

 ジタバタともがく沙之に、その背後でニヤリと黒い笑みを浮かべている笹波。その笑顔は、見ようによっては楽しそうにも見える。

 そして、沙之を掴んだまま、笹波は空に飛んでいった。

「こら! 飛ぶなぁ! ついていかないって言っているでしょう!」

 俺はあの城まで走っていった。

 天空に浮かんでいるのであるが、あの城の高さなら俺のジャンプでも十分届く。副会長も、何か城に乗り込む方法があるのだろう。俺の後ろを走っていく。

 ここに来てもまだ観念をする様子を見せない沙之が、笹波の腕の中で騒いでいる姿が、上空に見える。

「キャー! 降ろして! 降ろして!」

「降ろして欲しいの? それじゃあ」

 笹波はそう言い、沙之を掴んでいる手を放した。そして、沙之はそこから落下していく。

「いやぁぁぁぁあああ!」

 だが笹波は沙之を追いかけ、地面に叩きつけられる前に沙之を助け出した。

 恐怖から、肩で息をして震えている沙之を抱えながら、俺のスコープは満足そうにしている笹波の顔がとらえていた。

「どサドだ……」

 俺は言う。笹波はこちらを向いて小さくニコリと笑いかけてきた。

 彼女は聴力が強化されているのだろうか? 今の言葉は、どうやら聞かれてしまったようである。

 笹波は、それから意識を沙之に移していった。

「もう一度降ろしてあげましょうか? 『降ろして』って言ってみますか?」

 沙之は笹波の声を聞き、首を思いっきり横に振った。


 魔王城の入り口にいくと、重厚な黒鉄の扉が全員を出迎えた。

 高さが自分達の十倍以上ある扉を開けるのは並大抵の事ではないだろう。

「ったく……デカけりゃいいってもんじゃないだろう。こんな扉から、どうやって出入りしているんだよ? 魔王ってのは」

 俺は扉をぶん殴る。そうすると扉に人が一人通れるくらいの穴が開いた。

 中はまったく照明がついておらず、黒い壁があり、彫刻がいくつも並べられている、それが不気味な雰囲気をだしているのが見えた。

「中には何もいないな、デカイだけの城で一人暮らしなんてさびしい人生を送っている」

 俺はそう軽口を叩く。

「これから『けがれ』を使って作った手下を増やすつもりなんだろう」

 道山が言う。俺が作った穴を通り、城の中に入っていった。続いて俺が通り、笹波が通っていく。

「それじゃあ、私はここで待って……」

 沙之が全員が通った後でそう言いかけると、札をつなげて作られた縄のようなものが沙之をがんじがらめにして城の中へと引き込んだ。

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