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妹?観察記録  作者: 河上 誤停
リア充?編
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観察4:家族として

「お兄ちゃん。今日は終業式だね」

朝食中。いつものように雪奈と話しながら食べていた。

「それがどうしたんだ?」

「学校は午前だけなんだよ?」

「そうだな」

「これはデートに行くしかないよ」

「行かない。以上」

「普通に拒否られた!?」

だってメンドイし。家でゆっくりしたいし。

「ていうかアレだろ。デートってのは基本恋人同士でやるもんだろ」

もしくはそうなる可能性のある奴らとか。

「それなら問題ないよ。恋人ごっこはまだ続いてるもん」

……本当に続いてるよ。

「はぁ………じゃあ一応聞いとくけど、デートに行くとして、雪奈はどこ行きたい?」

「遊園地!」

「却下」

半日で行けるような距離にないからな。

「うぅ……じゃあ水族館」

「却下」

半日で行けるような(以下略)。

「動物園」

「却下」

半日で(以下略)。

「アメリカ」

「却下」

半日(以下略)。

「お兄ちゃ〜ん……どこだったら行けるの?」

なんだか泣きそうな感じで雪奈が言う。

「少なくともアメリカは無理だな」

ていうかアメリカで何するんだよ?

「じゃあさ、学校の近くの商店街に行こうよ」

商店街ねぇ………。

「それくらいなら大丈夫か」

たまにはぶらぶらするのもいいかもしれない。

「やった♪ じゃあ学校終わったらすぐだからね」

「はいはい。わかったよ」

こいつの面倒を見ると決めたのはオレだ。それにこいつの笑顔は好きだから。

「楽しもうな」

雪奈の願いは叶えよう。

「うん」


家族として。




「春休みだぁぁぁぁぁあ!!」

無駄に長い終業式も終わり、クラスで行われる最後のホームルームも終わったところで、永野が叫び声をあげた。

「お前さ……、これで最後なんだから少しは感慨深いものとか無いのか?」

「ない! 春休みを前にした俺にそんな殊勝な感情はない!」

「即物的だなぁ……」

ある意味尊敬するよ。

「よしっ、海原。町に遊びに行くぞ!」

「行かない。以上」

「話を勝手に打ち切るな!」

「いや、少し時間も迫ってるし。これ以上永野と話してたら遅れる」

「なんだよ。なんか先約があるのか?」

「あぁ。雪奈とちょっとな……」

確か、校門の前で待ち合わせだったな。時間はホームルームが終わり次第だったから急がないと。

「……まさかデートか?」

「……デート『ごっこ』だよ」

恋人ごっこの延長でやるんだからな。

「てめぇはギャルゲーの主人公か!?」

「したことないから分からんがたぶん違う」

雪奈には恋人同士でするものとは言ったが、そうでなくともデートと称して異性と遊びに行くことは誰にだってある経験だろう。たぶん。

「じゃあやっぱりあれか! リア充か!」

「だからリア充ってなんだよ?」

「くそぉ……リア充なんかリア充なんか……」

人の話本当に聞かないなぁ……。

「ヤンデレに氏なされてしまえぇぇぇぇぇええ!!」

そう言って永野はカバンも持たずに教室を飛び出して行った。

「……なんか永野の奴泣いてたな」

訳も分からないまま永野に同情するオレだった。



「もう! お兄ちゃんてば遅いよ!」

「悪い悪い。少しだけクラスにお別れをしてたんだ。一応今日で最後だからな」

校門につき、案の定怒っていた雪奈にオレは言い訳する。

「ぁ……そうだったんだ。ごめんね。怒ったりして」

本当にすまなそうに言う雪奈。こいつは疑うことを知らないんだろうか?

「嘘だよ」

「ぇ……?」

「本当は永野に捕まってただけだ。だから、遅れて本当に悪かった」

「ぅぅん……。やっぱり私がごめんなさいだよ。お友達は大切にしないと」

永野が友達かは保留にしといて、雪奈が教室では浮いてるのを思い出す。

(馬鹿かオレは…………)

オレは何も考えずに一目散にここに来るべきだった。雪奈が待ってるここに。だから……。

「やり直すか」

「ぇ……お兄ちゃん?」

「待ち合わせをやり直そう。オレが来るところから。今度は走ってくるから」

「ぁ、あの? お兄ちゃん?」

「すぐに来るから待ってろ」

オレは走って校舎へと戻った。



「はぁ……ふぅ……悪い雪奈。遅れちまって」

息を切らしながらオレは雪奈に謝る。校舎から校門まだはそう長くはないが全力疾走すればそれなりに疲れた。

「ぇ……ん……。ぅぅん。私も今来たところだよ」

「そっか。よかった」

「………………………」

「………っぷ……」

「ふふっ」

「なにしてんだ? オレたち」

「なんだか本当の恋人同士みたいだね」

「そうだな」

オレも雪奈もこらえきれずに笑い合う。

「……行くか」

オレは昨日と同じように雪奈の手をつ引き、歩き出す。

「ぁ……手……」

「いやか?」

「ぅぅん。いやじゃない」

「それはよかった」

「それとね、ありがとう」

「なにがありがとうかわからないけど、どういたしまして」

「それからね……お兄ちゃん大好き」

オレはなにも言わず、少しだけ手を強く握った。

「……ん」

雪奈も握り返してくれた。


この想いに素直になれたらと。雪奈の想いを信じれたらと。今までで一番そう思った日だった。

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