観察1:お似合い
「おはよう! お兄ちゃんお姉ちゃん」
朝。私は元気よくお兄ちゃんの家に入る。
(えへへ……お兄ちゃんのおかげだね)
今日の私はなんだか地に足がついてない。それはやっぱりお兄ちゃんのくれたいろいろなプレゼントのおかげだった。
「あら? おはよう雪奈」
お姉ちゃんが私に気づいて挨拶を返してくれる。お兄ちゃんは……。
「んー?……お兄ちゃんまだ寝てるの?」
お兄ちゃんの姿がリビングに見れない。早い時間だけど最近はお姉ちゃんと一緒に起きてたのに。
「俊行? 俊行ならバイトだって」
「バイト? 今日は学校だよ?」
休日はともかく平日でバイトなんてあるのかな?
「アンタへのプレゼントでお金がすっからかんだそうよ」
「えへへ……そんなに高かったんだ」
どうしようもなく顔がゆるむ。
「でもアレだよね。お兄ちゃんてば私に脈ありだよね?」
「……どういう意味よ?」
「だって初めてだったし、あんなプレゼント。昔の人と別れたらしいし、きっと私の想いに応えてくれるつもりなんだよ」
そうじゃなきゃ、あんなプレゼントくれるわけないもんね。
「……ねぇ雪奈。少し聞いていい?」
「んー? なにかな?」
今日の私は気分がいいからなんでも答えそうだよ。
「俊行の前で泣いたの?」
「むぅ……お兄ちゃんてばそんなことまで話してるんだ」
ちょっとショックかも。まぁお姉ちゃんだからいいけど。
「本当なのね。……なんで泣いたの?」
「えへへ……お兄ちゃんの言葉が……気持ちが嬉しかったからだよ」
優しかった……本当に。
「……最後にもう一つだけ。……雪奈は今、幸せ?」
「?……当たり前だよ」
お兄ちゃんがいて、お姉ちゃんがいて、ついでに昔の人がいて。それだけで私は幸せなんだから。
「これでお兄ちゃんが私の気持ちに応えてくれたら最高なんだけどね」
「……そう。そうなるといいわね」
「うん」
そうなるように、私もがんばらないと。
「(俊行が正しいのか、雪奈が正しいか分からないけど……)」
「? お姉ちゃんどうしたの?」
何か言ってたような……。
「別に。あんたと俊行はお似合いだと思っただけ」
「えへへ……そうかな?」
「(……本当に馬鹿二人、似合ってるわ)」
浮かれてた私は、お姉ちゃんのつぶやきは聞こえなかった。