観察36:プレゼント
「ねぇ俊行」
「何だよ?」
雪奈の誕生日も近いある日。夜の会瀬も終わった後、こころに話しかけられた。
「結局、俊行は雪奈に何をプレゼントするの?」
「オレ」
「気持ち悪いわね」
「全くだ」
自分で言って吐き気がした。
「本当な話、何をプレゼントする?」
「オレはアクセサリーか何かをやろうと思ってる」
「ふーん……いくらの?」
いきなりな質問してくるな……。
「……バイト代の半分はつぎ込もうと思ってる」
「ならけっこういい値段のを買うのね。買うのは何? 指輪? ネックレスとか?」
「さすがに雪奈には早いだろ。普通にペンダント辺りを買おうと思ってたけど」
「俊行が雪奈に似合いそうな奴を選べるの?」
「………………たぶん」
きっと。
「一応聞くけど、アクセサリーを買った事は?」
「………ない」
オレがつけるはずもないし、プレゼントするのも初めてだ。
「なら決まりね。買いに行くときはアタシか瑞菜さんを連れて行きなさい。少なくとも俊行よりは雪奈に似合うのを選べるだろうから」
「うぅ……自分で選びたかったんだが……」
初めて女の子らしい物をプレゼントするのに……。
「却下よ。どうせ俊行に任せたら、無駄に高いくせに雪奈には大して似合ってないのを買うはめになるんだから」
……初めてだからなんとも言えないが、否定出来ない。
「分かったよ。こころか瑞菜と一緒に買えばいいんだな?」
「そゆこと。……じゃあおやすみ」
「あぁ、おやすみ」
言うことを言ってこころはオレの部屋を出ていく。
「……プレゼント選びね」
どっちに頼もうかなぁ……。
「……ねぇ俊行」
「何だよ? こころ」
次の日。早速プレゼントを買いに来た所でこころが疑問の声を上げた。
「この状況はなに?」
「なにって……ペンダントを買いに来たんだろ?」
「そんなことは分かってるのよ。アタシが聞いてるのは……」
「あはは……私がいることじゃないかな?」
「そうよ。何で瑞菜さんが……」
「だって雪奈のペンダントを買うんだろ?」
「そうね」
「だからいろんな人の意見を聞いた方がいいだろ」
「…………………」
「あはは…………」
「ねぇ瑞菜さん」
「ん? なに?」
「なんだかんだ言って俊行は雪奈が一番大事みたいよ?」
「あはは……何を今さらなんだよ」
なぜだか呆れられるオレだった。
「ねぇ、俊行。これなんてアタシに似合ってない?」
「似合ってるけど……お前じゃなくて雪奈が似合うのを探せよ」
こころは紫色のの宝石のペンダントを着けていた。
「へぇ……でも本当に似合ってるな。なんて言う石だよ?」
「んー……バイオレットフローライトね」
どこか神秘的な感じが、こころの美しさに合っている。
「ねぇねぇとーくん。これ私に似合ってないかな?」
「うん。似合ってるな。なんだか瑞菜らしい」
優しい感じが瑞菜にぴったりだ。
「そのペンダントの石は?」
「ムーンストーンだよ」
本当に似合ってるよな……こころも瑞菜も。
「……まぁでも、まずは雪奈だな」
オレは探し始めた。
「……これなんかどうかな?」
オレは一つのペンダントをとり、二人に見せる。
「うわぁ……綺麗なんだよ」
「ふーん……俊行にしてはいいセンスしてるじゃない」
「雪奈に似合いそうか?」
「おーけーだよ」
「あの子なら似合うわね」
「よし。じゃあこれにするか」
オレは一つのペンダントを買った。
「今日はありがとな。二人とも」
家に帰りつき、オレは二人にお礼を言う。
「どういたしましてなんだよ」
「感謝しなさいよ」
「……本当にありがとう」
オレは二人にしてきた事を思い、少し複雑な思いをする。
「あはは……なんて言うかなぁ……」
「……馬鹿ね」
「なんだよ? 二人して?」
「まぁ……うん。今は私達の事より雪奈ちゃんの事を考えてね?」
「そういうこと。謝罪だろうと感謝だろうと後よ」
「……分かったけど。……本当は何か言いたいことがあったんじゃないのか?」
「あはは……」
「はぁ……」
……なんでまたオレは呆れられてるんだろう?
「とにかくまたね? とーくん」
「ああ。またな」
「それじゃ、瑞菜さん」
そうして瑞菜は家に入って行った。
「じゃ、オレ等も入るか」
「雪奈が一人でいじけてるかもね」
案の定雪奈が無駄に怒ってて、誤魔化したりが大変なオレとこころだった。