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妹?観察記録  作者: 河上 誤停
リア充?編
34/165

観察33:変わらないのに

『とーく~ん。おはよー』

朝。無駄にビブラートな感じで瑞菜の声が聞こえてくる。

「今日も来たわね。瑞菜さん」

こころが少し難しい顔をしてそう言う。

「そりゃお隣さんだからな」

「ただの幼なじみを毎日迎えに来るものかな?」

今度は雪奈が訝しげに聞いてくる。

「……今さらお前らに隠し事なんてしないよ」

「本当に?」

「ああ」

「大丈夫よ雪奈。隠し事はともかく、瑞菜さんと付き合ってないのは本当みたいだから」

隠し事ね……。こころには言われたくないが。

「とにかくオレは今日は先に行くな? 毎日お前らに合わせて瑞菜を待たせるのも悪いし」

「……やっぱり怪しいんだよ」

「ふーん……俊行、行ってらっしゃい」

オレはその場を離れた。



「……あの態度。やっぱりこころの奴気づいてるよな」

瑞菜と駅に向かって歩いている途中。オレはさっきのこころの態度を思い出して言う。

「? こころさんがどうかしたの?」

「いや、実はな――」

オレは瑞菜の耳元に口を寄せ、オレの考えを教える。

「――てことを考えてるんだが……」

「あはは……既にこころさんにはバレてるんだ」

「どうせこころにはそのうち言うんだから別にいいけどな」

でも隠し事がろくに出来ないのは悲しい。

「それで? 大丈夫そうか?」

「もちろんおーけーだよ」

「よかった。ありがとな」

オレは感謝の気持ちを言う。

「お礼なんていいよ。だって大切な幼なじみのお願いだもん」

幼なじみ。それがオレ達の関係。

「……だったらお前も、もっとオレに頼れよ?」

「あはは……とーくんがそういうならね」

そう言って笑う瑞菜。でも言葉とは裏腹にその苦笑は拒絶しているように見える。

(……そりゃそうだよな)

結局はオレのせいで別れたんだから。付き合ってたころと全く同じという訳にはいかない。

「あはは……とーくんてば難しい顔してる」

「……悪い」

誰よりも優しい奴だから。だから瑞菜はオレの気持ちに敏感だ。

「謝らなくていいよ。私が決めた事なんだから」

「……優しすぎるよ瑞菜は」

「とーくんは不器用すぎるかもね」

「全くだ」

「でも私は……そういうとーくんだから……」

「……だから?」

「……幼なじみでよかったって思うよ」

瑞菜は悲しそうな……苦笑したような表情をしてる。

「ありがとう」

そしてたぶん、オレも同じ表情をしてる。

「「あはは……」」

会話に困り二人一緒に苦笑する。

(……どうして別れたんだろう?)

こんなに可愛いくて優しい子と。付き合ってた頃と何も気持ちは変わってないのに。オレはもちろん、きっと瑞菜も。

「……(好きだよ)」

だからこそ、オレは何も聞こえなかった。ここで答えたら全て意味がなくなるから。瑞菜の優しさを台無しにするから。

(……オレもだよ)

だから、オレはただ心の中で呟いた。

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