観察20:暇な理由
「……なぁ、永野。どうしてオレはここにいるんだ?」
ゴールデンウィーク最終日。ずっと風邪で寝込んでいて、今日は瑞菜とデートしようと思っていた中、何故かオレはメイド中華永野亭にいた。
「店員が俺と海原と山野さんしかいないからだろ」
「…………は?」
それで仕事なんて出来るのか?
「今はお試し準備期間みたいなものだからな。まだ人数そろってないんだよ」
「もしかしなくてもオレが寝込んでた昨日までは店は休みだった?」
「そりゃ二人じゃさすがにきついからな」
「じゃあ今日も休みにしろよ……」
瑞菜とデートしたかったのに……。
「どうせお前は春日さんとデートにでも行くつもりだったんだろ? オレがそんなリア充なこと許すと思うか?」
「……思わないよ」
「まぁ俊行。そんなに落ち込むことないよ」
「……何がだよ? こころ」
今日はメイド服を着て開店準備を一人していたこころがやってくる。
「雪菜と瑞菜さん。ここに呼んだから」
「…………は?」
よりによってその二人を?こんな所で働いてるなんて知られたくないのに……。
「心配しなくても大丈夫よ。二人には俊行がアタシの制服姿に骨抜きにされてバイト始めたって言ってるから」
「う、嘘はいけないと思うぞ? こころ」
「ふーん……まぁいいけど」
確かにこころのチャイナ服姿は反則だったし、今日のメイド服姿も胸が強調されてたり、いつも後ろで縛られてる髪も下ろされていて新鮮だったりしてドキドキしたのは認めるけど………あくまでもオレがバイト始めたのは時給がいいからだ。
「……ていうか二人に言ったのか?」
「うん。一緒に来るって」
「……あの無駄に仲の悪い二人が?」
「アタシの話を聞いた後は仲がよさそうだったよ?」
「……なんて言うかアレだ」
「ドンマイだな海原」
「やってられない……」
「まぁ俊行。アタシのメイド姿でも見て癒されなさい」
「……うるさいよ」
「とかなんとか言ってしっかり見てるくせに」
「…………うるさいよ」
こころのメイド姿も反則だと思うオレだった。
「……てか、客来ないな」
お昼時なのに一応料理店であるこの店には人が一人もいなかった。
「こんな風俗まがいの店に真っ昼間から入る強者はいないんじゃない?俊行」
「……そんなことをこころが言ってるが?」
オレは不届きな事を言ったこころについて永野に意見を求める。
「否定は出来ない」
「……ダメだこいつら」
まぁオレも否定出来ないんだけど……。
「お兄ちゃーん!来たよ!」
「帰れ」
「いきなり拒絶された!?」
「あはは……とーくん、遊びに来たよ」
「いらっしゃい瑞菜」
「……この扱いの違いは何なのかな?」
いきなり叫んで店に入ったか入らなかったかの差だ。
「てか、お前ら本当に来たのかよ」
「それはこころお姉ちゃんに話を聞いたらね」
「うん。こころさんの話を聞いから」
「……一応確認しておくとどんなことを?」
「お兄ちゃんが変態ってこと」
「とーくんが鼻伸ばしてること」
「……………………」
あれ? 何ですぐに否定出来ないんだろう?
「俊行。どうでもいいけど、立ち話ばっかりしてないで席に案内しなさい。一応客よ」
「……そう言うお前がしろよ? こころ」
厨房で休んでいたこころが出てきた。
「あ♪ こころお姉……ちゃん?」
「うわぁ……こころさん可愛い」
「どう?可愛いでしょ」
こころは二人に制服姿を誇らしげに自慢する。やっぱり女の子って可愛い服とか好きなのかな?……まぁ人によるだろうけど。
「可愛いすぎるよ……」
「うん。とーくんが骨抜きにされるのも仕方ないかも」
いや、オレは瑞菜一筋ですよ?
「アタシ的にはチャイナ服の方が気に入ってるけどね」
「これより可愛いの?」
「うん。俊行が鼻血を出すくらい」
「「……………………」」
うわぁ……すごい軽蔑の視線が……。
「ところでとーくん」
「ん? 何だよ?」
「バイトはいつ上がるの?」
「知らない。永野次第だ」
「そっかぁ……じゃあ終わるまで待ってるね」
「ん?何かあるのか?」
「うん。こころさんの制服姿をみたらね」
「あぁ……服でも買いに行くのか?」
「うん。そうだよ」
「じゃあ、永野に話して、できるだけ早く上がれるように頼んどく」
「うん。よろしくね」
こうして瑞菜と買い物に行くことになった。




