観察23:関係
「それでこころ。何に乗りたい?」
遊園地に入り、オレは後ろを歩くこころの方を振り向きそう聞く。
「別に……なんでもいいわよ」
「……って、やっぱ聞くまでもないよな。ジェットコースターに決まってるんだから」
「…………そうね」
答えるこころはどこかそっけない。
「ほんと、そういうところって姉妹みたいだよな。雪奈と」
そのそっけなさを気にしないように、オレはできるだけおどけるようにしてそう言う。
「……姉妹……か」
「? どうかしたか?」
「ねぇ俊行。あたしがあの子の姉で、あんたがあの子の兄だって言うなら……あたしとあんたの関係って何なのかしらね」
「…………今はそういう話はいいだろ。楽しもうぜ」
「……そうね。嫌でもその話はすることになるんでしょうし」
「……ジェットコスターでいいんだよな?」
重い空気に少しだけ辟易しながらそう聞く。
「ええ。このさいだからおもいっきり乗るわ」
「………………まじですか」
「とりあえずぶっ通しで3時間いきましょうか」
笑顔でそういうこころに微妙な怒気のようなものを感じながら、オレはこころと一緒にジェットコスター乗り場に向かった。
「ふぅ……流石にぶっ通しはキツイな」
乗ってる時間より待ち時間のほうが長いが、それでも頭の中が揺れている感じがする。
「あたしは待ち時間のほうがきついわね」
待ち時間も待ち時間でこの暑さだ。単純に休憩時間というわけにはいかない。
「そうね……時間もそろそろだし、お昼にしましょうか」
「ん……お前どっち行く?」
預けている弁当を取りに行くかかりと休憩所での場所取り。そのどちらを担当したいか聞く。
「お弁当取りに行くわ。飲み物は炭酸じゃなければなんでもいい」
「了解」
こころから飲み物のオーダーも受け、オレたちは一旦別れた。
「んー……またサンドイッチか」
「贅沢言わないの。というよりこういう場所にきた時の定番じゃない」
オレの愚痴にこころは嘆息しながらそう言う。
「ま……こころのサンドイッチは久しぶりか」
怪我をしてからはサンドイッチが多かったが、それは雪奈が作っていた。こころも手伝ったりはしてたようだが。
「うん……うまい。なんだかんだでこころも料理うまいよな」
そう口につけたサンドイッチの感想を言う。お世辞抜きで美味しい。
「一応、雪奈の師匠だし……もう、あの子のほうが上手いけどね」
「ま、そうだな」
「少しは否定しなさいよ」
「別に料理に命かけてるんじゃないだろ? こんだけ上手ければ嫁の貰い手には苦労しないだろうよ」
「それはどうも。あんたにほめられても嬉しくないけどね」
「……可愛くない奴」
「誰のせいよ」
やっぱり無理やり連れてきた事に不満はあるらしい。
「やっぱり、さっさと話を終わらせたいのか?」
「聞くまでもないでしょ」
「……楽しめなかったか?」
「楽しめたわよ。あんたと……今の俊行と一緒にいる割には」
「あー……やっぱりバレてたか?」
「分かるわよ……緊張してるのバレバレ」
「んー……じゃあ、もう言っとくか」
「ちょ……あんたまさかここで……」
珍しく驚き焦っている様子のこころ。オレはそれを気にせず、
「こころ。オレ、お前のことが好きだ」
そう告白した。