観察22:用意周到
「てわけで、こころ。遊園地行くぞ」
朝。朝食の準備をしているこころにオレはそう言う。
「……は? いきなり何いってんの?」
「だから遊園地に行くぞって言ってるんだよ。リハビリも順調だし」
リハビリを初めて一週間。少し苦労はするがだいたいのことは出来るようにはなっていた。
「別にいいけど……あんまり気乗りはしないわね」
「例のお願いって言ってもか?」
「はぁ……それ言ったらあたしが断れないって知ってるくせに……嫌な男」
「悪いな。そんだけ一緒に行きたいってことにしてくれ」
「悪いとか全然思ってないくせに」
そりゃ、これくらいで悪いと思ってたらオレはこころを直視することすら出来ない。
「んー、それじゃお弁当も作りましょうか。三人分でいい? それとも瑞菜さんも呼ぶ?」
「いや、二人分でいいぞ」
「…………は?」
「だから二人分。オレとこころの分だけでいい」
「それってもしかして……」
「うん。デートだな」
「だ、だったらあたしは……!」
「だから言ったろ? 例のお願いだって」
こころと二人きりに拘らないなら雪奈から頼んでもらえばいいだけだ。
「なぁ、頼むよ。こころが無理って言いたくなるようなお願いはこれで最後だから」
そう言ってオレは手を合わせ頭を下げる。
「~~っ……分かったわよ。行けばいいんでしょ行けば」
「サンキュ。恩に着る」
「いいわよ別に。あんたは約束を守ってるだけなんだから」
「それでも……な。ありがと」
「ほんと……ひどい男」
そう、こころは不機嫌そうに言う。
「それで? 雪奈はどうすんのよ。あの子置いていくのは骨が折れるわよ?」
「雪奈は瑞菜が面倒見てくれるってよ。というか雪奈にも既に話は通してるから問題ない」
「……用意周到なことね」
「まぁ、それだけこころと一緒に行きたいと思ってくれ」
「なんだか嫌な予感がするわ……」
そんな感じでオレとこころは遊園地に行く事になった。