観察16:それぞれの想い
「ああは言ったものの……あれでよかったのかね」
ばふっとベッドに倒れ込みそう呟く。
『だって……あたし、もうどうしたらいいか……』
「どうしたらいいか分かんないのはオレの方だよ……」
今回のことだけじゃない。わからないのは全てだ。今まで分かっていたはずのことさえ自信がなくなってしまった。
(……そんだけ、こころに頼りきりだったってことだよな)
だからこころが崩れてしまえばオレも調子が狂う。
「ほんと……どうしたらいいのか……」
今のオレはうじうじと悩み袋小路に入るだけだった。
「あー! もうやめ! とりあえず寝る!」
ヤケクソ気味にそう言い電気を消して目を閉じる。
「……って、メールか」
マナーモードにしている携帯が揺れる。見ればメールが一件届いていた。
「瑞菜からか……内容は……」
メールを開き内容を確認し、そして返信をする。
そうした瑞菜とのメールのやり取りを何度か繰り返した。
「……俊行、今頃なにやってるかしら」
ばたんとベッドに倒れ込みあたしはそう呟く。
「今日は流石に俊行の所にいけないよね……」
というより怪我が治るまではいけるはずがない。
(……あれは結局あたしのわがままなんだから)
俊行と対等でいたいって思う傲慢な願い。でもあたしはそのままじゃ対等なんて思えないくらい自分が許せなくて……そのために俊行に罰をもらった。
(それが何よりも俊行を苦しめてるって分かってるのに……)
俊行の優しさに甘え続けた。だからもし今回の事故がなくても、あたしが俊行の傍にいる限り同じことが起きただろう。
(あたしは罪を重ね続けているんだから)
どちらにしても罪を罰で贖いきれなくなった今、あたしが俊行と対等でいることなんてできない。だから俊行に罰を求めるなんてわがままにもならない。
「……寝ようかな」
最近はいつも俊行の所に向かうか、そうでなければ何か用事をしていたからこう早く寝るのは久しぶりだ。
「……おやすみ」
電気を消して目を閉じる。そして一つのことを思ってしまう。
どうして自分が俊行のことを好きになってしまったのかと。
そうでなければこうして悩むことも……間違いを犯すこともなかっただろうにと。