観察8:ようこそ
「でも本当に良かったの? 俊行」
「良かったって何がだよ?」
「決まってるでしょ。あたしがここに居候することよ」
雪奈と仲直り(正確には新しいを関係を築いた)てから一週間くらい。こころはオレの家の居候になっていた。
「困ったときはお互い様って言うだろ?」
「いやでも、あんたや雪奈がそう言ってくれるのは嬉しいけど、子どもがそんなこと決めていいの?」
「一応この家の家主はオレってことになってるみたいだし。後見人である叔父には一応話は通してるよ」
「そっか。なら良かった」
「むしろお前の方は大丈夫なのか?」
「大丈夫よ。というより親と連絡取れなくて困ってたから。俊行が誘ってくれたのはほんとうに嬉しい」
「こっちとしても家事ができるやつがきてるくれのはありがたいからな」
今でこそ雪奈は家事万能だがこの頃はまだ全然だった。オレも同じようなものでこころがくるまでの食生活は酷いものだった。
「ギブアンドテイクってやつね。じゃあ、この事に関しては貸し借りはなしってことで」
「むしろオレの方が雪奈との事で貸し作ってるしなぁ……。今回のことで少しは返済できないか?」
「くすくす……俊行がそう言うならそうしてあげる」
「じゃあ、改めて……こころ、我が家にようこそ」
「うん。よろしく俊行」
きっかけはこころの親が失踪したことだった。ある日を境に家に帰ってこなくなったらしい。その結果、こころは自分の家に一人。家にあった金もなくなり公的機関に相談するかって状態になったらしい。
そうなればどのような結果になるかは分からないがオレや雪奈に会えなくなる可能性も大きい。そういったことをこころが伝えてきた所でオレが誘ったのだ。うちの家事の面倒を見てくれないかと。
そしていろいろな面倒な手続きは紘輔さんがしてくれたこともあり、トントン拍子でこころは我が家の一員になった。