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妹?観察記録  作者: 河上 誤停
リア充?編
14/165

観察13:風邪ひきと看病

「こほっこほっ……うぅ……」

「っくしゅん!……うぅ……」

「「……風邪引いた」」

休日の明けた月曜日。雨に濡れ続けたせいか雪奈は風邪を引いていた。

「あんたらバカでしょ?」

「うるさいよ」

冬ではないとはいえ、この時期の雨はまだまだ冷たい。風邪引いてもおかしくないだろう。

「傘持っていかせた意味ないじゃない」

「って言っても話をしてる間は雪奈にさしててオレ濡れてたし」

「私はお兄ちゃんがくるまでずっと濡れてたから」

その上、帰る頃には雨止んでたし。傘の意味が本当になかった。

「とりあえず今日は学校休みなさい」

「うぅ……母さんオレ学校行きたいよ」

「誰が母さんよ?」

「こころ」

「……大きな子どもね」

「え?お兄ちゃんはお姉ちゃんの子ども?じゃあ私もお姉ちゃんの子どもになるの?え?お姉ちゃんなのにお母さんなの?」

雪奈は重症かもしれない。

「こほっ……とにかく連絡の方は頼むな」

「はいはい。雪奈はしっかり治しなさいよ?」

「そっかぁ……今日はお兄ちゃんとふた…っくしゃん!…二人っきりなんだ」

「だとしても寝てるだけだぞ」

「別にそれでもいいもん」

さてはまた同じベッドで寝るつもりだな。

「分かってると思うがお前はこころのベッドで寝るんだからな?」

「えー……楽しみにしてたのに……」

するな。自分の年を考えろ。

「なんか雪奈も普通に元気そうなんだけど……」

「気のせいだろ」

「まぁいいわ。行ってくる」

「「行ってらっしゃい」」

オレと雪奈に見送られる中、こころは家を出発した。

「朝飯も食べたし寝るか」

「そうだね」

ピンポン

段取りを決めてるところでチャイムがなる。

「誰だ? こんな朝早くに」

「うーん……昔の人なんじゃない?」

「瑞菜?お見舞いでもしにきたのか?」

といっても登校前の忙しい時間帯だ。軽く顔を見に来ただけかもしれない。

そんな感じに思いながらも玄関に行き、扉を開ける。そこにはやはり瑞菜がいた。

「あ♪とーくんおはよう♪」

「……………………」

何これ怖い。

「とーくん♪聞いてくれる?」

「あ、あぁ……」

何?本当に何なのこのテンション。

「とーくん風邪なんだってね♪実は私も風邪引いたんだ♪」

「そ、そうですか……」

「ていう訳で私もとーくんの家で休ませてね♪」

「あ、うん。分かった……って、え?」

なんだって?

「雪奈ちゃんも風邪引いたんだってね♪だから私も一緒に休ませて♪」

「い、いや、普通に家で休めよ」

「親がいないから誰かが居るところで休みたいんだよ♪」

「そ、そうですか……」

何なんだろう? 今日の瑞菜は……。

「お兄ちゃん? やっぱり昔の人だったの?」

どうしようもなく困惑している所に雪奈がくる。

「あ♪ 雪奈ちゃんおはよう♪ 今日は一緒に休ませてね♪」

「ぇ……あ、うん……って、え?」

「私も風邪引いたんだ♪ 私達仲良しだね♪」

「そ、そうかな……?」

スゲー……わがまま猫娘が何か押されてる。今日の瑞菜は一味違う。

「一緒に風邪を治そうね♪」

「「はぁ…………」」

訳のわからないオレと雪奈だった。



「というわけで瑞菜も一緒に休むことになったんだが……ここで問題が一つ」

「なにかな?お兄ちゃん」

「とーくん♪何かな?」

「「……(一番の問題はこの人なんだけど)」」

それは置いといて。

「オレの家にはベッドは二つしかない」

毛布などは予備があるが、ベッドに関してはもともとあったオレの分とこころの分しかない。

「そんなの私がお兄ちゃんのベッドで一緒に寝れば大丈夫だよ」

「それだと瑞菜がこころのベッドを使うことになるだろうが。それは流石にいろいろ気まずいと思うぞ」

こころと瑞菜はまだ1週間ちょっとの付き合いだ。流石にどちらも抵抗があるだろう。

「だから瑞菜はオレのベッドで寝る。これは決定だな」

幼馴染だし、こころほど抵抗はないだろう。うん。オレが男で瑞菜が女だってのを無視すれば。

「それで大丈夫か?瑞菜。オレのベッドでも」

「………ん……ぇ?何の話かな?とーくん♪」

「寝るのはオレのベッドでいいか?」

「え♪とーくんと一緒のベッドで寝るの?」

「いや……そこまでは言ってないが……」

ていうか流石にそれはまずいだろう。倫理的に。……いや、雪奈とそんなことしてるオレが言うことじゃないけど。

「とにかく瑞菜はオレのベッドで寝ててくれ」

「了解だよ♪」

「……(本当に大丈夫かなぁ)」

かなり心配なんだけど……。

「じゃあ、お兄ちゃんと私が……っくしゅん……お姉ちゃんのベッドで寝るんだね」

「いや……こころのベッドで寝るのは雪奈だけだ」

「ふぇ?お兄ちゃんはどうするの?」

「お前らの看病」

「いや……お兄ちゃんも風邪じゃん」

「実はあれ嘘。こころを欺くための」

「……なんでそんなことを?」

「お前が風邪引いたからからだろうが」

「むぅ……お兄ちゃんて卑怯だよね」

「何がだよ?」

人がせっかく心配してわざわざ看病のために休んだのに……。

「聞く時点でもう……。でもよかったの?こころお姉ちゃんにばれたら大変だよ?」

あいつ自分が悪いことするのはいいくせに他人が悪いことするのは許さないからなぁ……。

「こころさんなら気づいてたみたいだよ♪」

「「……お母さんだ」」

どうやらあいつに嘘はつけないらしい。

「とにかくお前らは休んどけ。オレがしっかり面倒みてやるから」

寝てしまえば後は楽だし。

「分かったよお兄ちゃん」

「お休みとーくん」

それぞれ部屋へと向かっていく瑞菜と雪奈。

「とりあえず準備するのは……体温計か」

熱があったら氷枕も準備しないとな。

「雪奈のところから行くかな」

オレはこころの部屋へと向かった。



「ほら雪奈。とりあえず熱測れ」

オレはこころの部屋でベッドに腰かけている雪奈に体温計を渡す。

「むぅ……お兄ちゃんにおでこで測って欲しい」

「却下な」

恥ずかしいし、ありきたりだし。

「うぅ……じゃあ測るね」

雪奈は胸元を開け脇に体温計を入れる。

(……こうして見るとなんかエロいな)

「……なんだかお兄ちゃんの目がいやらしいんだよ」

「心配するな。仕草の問題であって別にお前事態には興奮してないから」

「すっごく失礼だからね」

「……だったらどうすんだよ?」

「私に興奮して」

「却下な」

「むぅ……」

そこでむくれるなよ。

「ん……やっぱり熱はないね」

電子音がして熱が測り終わったのを知らせる。やはり熱はないようだ。

「じゃあ、きっちり寝とけば大丈夫そうだな」

「うん。お昼まで寝てるね」

「あー……でもどうしよう?昼飯」

栄養のあるものを食べさせるか消化のいいものを食べさせるか。その両方を満たしたものを作るとなると少し自信がない

「あれ?気付いてなかったの?お姉ちゃんがちゃんと用意してたよ」

「……あいつも本当に気が利くやつだな」

あいつに弱点とかあるのだろうか?

「……ところでさ、お兄ちゃん」

「ん? なんだ?」

「お兄ちゃんて好きな人いるの?」

「くふっっ!?」

こいついきなり何言い出してんの?

「何をやぶからぼうに……」

「だって、昨日あんなことあったし……気になるよ」

「と、いわれてもなぁ……」

まさか本当のことを雪奈に言う訳にはいかないし……。

「とりあえずオレはお前で精一杯だからな。恋愛している暇はないよ」

「むぅ……それって答えになってないよ」

「どちらにせよもう答えないからな」

困るし。

「もしかして……昔の人が好きだとか?」

「……瑞菜?」

「うん。だって幼馴染なんでしょ? 自分のベッドをためらいなくわせるくらいだし……」

「それとこれとは恋愛感情とは別問題の気もするが……。まぁ、雪奈よりかは女の子として見てるかもな」

良くも悪くも雪奈は近すぎる。

「うぅ……お兄ちゃんは昔の人のことが忘れられないんだね……」

「すっごい不穏当なセリフありがとう」

「お兄ちゃんなんて昔の人のところに行けばいいんだ」

「言われなくてもそろそろ行くつもりだが……」

「行かないで!」

「どっちだよ!?」

「私を捨てないで!」

「……本気で捨ててこようかな」

「い、いや冗談だよ?だからそんな本気で悩むような顔しないで」

「はぁ……とにかく寝ろ。お前が寝るまではいてやるから」

「うん。ありがとう。おやすみなさい」

「おやすみ」

しばらくして可愛い寝息が聞こえてきた。それを聞き届けてオレはこころの部屋をそっと出た。

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