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「何してるの? とーくん」
あの日、あいつをなくした日から一週間と少し。オレは海辺で瑞菜に話し掛けられた。
「何もしてない。ただ、なんとなく海を眺めてる」
「ふーん……黄昏れてるんだね」
「……なんかようか?」
「だから、何してるのか聞いてるんだよ」
「……お前の言う通り黄昏れてるよ」
オレは何も話したくなく、そう言って話を終わらせようとする。
「雪奈ちゃんはとーくんがそうしていることを望んでないよ」
「……雪奈?……もう、オレには関係ないよ」
「雪奈ちゃんはとーくんが立ち直ることを望んでた」
「それで?」
「雪奈ちゃんの想いを無為にしないで欲しい」
「……なんで瑞菜がそんなことを言うんだよ」
あいつとは最後に話しただけ。そう言っていいほどほとんど繋がりはなかったはずだ。
「頼まれたからかな。とーくんのこと」
「……どちらにしろ、そんな気分じゃないよ」
今のオレは立ち直りたいなんて思えない。
「……仕方ないね」
と、瑞菜はオレを抱きしめてきた。
「瑞菜……?」
「大丈夫だよ……私は傍にずっといるよ」
そう言って、強くオレを抱きしめる。
「…………何がしたいんだよ?」
「んー……月並みだけど安心しない?」
「……する。けど同時に落ち着かない」
この温かさにオレは溺れていいのか。そんな資格はあるのかと。
「あはは……大丈夫だよ。誰もとーくんを責めたりしないから。私も……雪奈ちゃんも」
「だと……いいな」
そう願いながら瑞菜の見た目以上にやわらかい身体に深く自分を預ける。
「…………少しこのままでいいか?」
「好きなだけ貸してあげる。……私が一緒にいれなかった辛い時の分まで」
その言葉に甘え、オレは安心して眠りについた。
温かさに包まれ朧気な意識の中で思う。
この温かさがあの時、両親が死んだ時にあったらどうなっていただろうと。
何かが変わっていただろうか。
こんな結末になんてならなかっただろうか。
分からない。
分からないけど……。
そんな世界があってもいいんじゃないか。
ただ、そう願った。