観察18:点数稼ぎ
「……やっぱりわたしの考え分かりますか?」
「うん。ひどい偽善っぷりだね。それとも厚顔無恥って言うのかな?」
最初にお兄ちゃんのためって言っておきながら私の代わりなんて言い出すなんて。
「お兄ちゃんのためって言わなければ美談になったかもしれないのにね」
病気の友達、まともに授業受けられない友達の代わりに私がまじめに授業を受ける。よくある美談だ。
「でも、実際は好きな人へのただの点数稼ぎだよね」
「んー……点数稼ぎってのは否定ませんけど、やっぱりわたしって海原さんが好きなんでしょうか?」
「それくらい分からないの?」
「はい。わたし恋愛とかしたことないですから」
「じゃあ私が保証してあげる。加奈ちゃん、あなたは俊行さんが好きなんだよ」
「どうしてそんなにはっきりと言えるんですか? 人の気持ちなのに」
そんなのは決まってる。
「私があなたと同じ立場だったらきっと全く同じ事をしていたから」
「そうなんですか? 全く違う考えで同じ行動したってことは?」
「ねぇ、加奈ちゃん。あなたは嘘をついた?」
「? 嘘はついてないですよ」
「じゃあやっぱり同じだよ」
なんとなく分かった。どうしてお兄ちゃんが会って間もないこの子のことを気にかけるようになったのか。
(……私と似てるんだ)
本質的な部分で酷く。だからきっと会ったこともないお兄ちゃんに恋焦がれた。自分を見捨てない人を見ぬいた。
「そっか……わたしは海原さんの事が好きだったんですね」
「恋敵だね」
「そうなるんですかね」
「だからいいよ。友だちになってあげる」
「? この流れでどうして?」
「そんなの私にも得があるからに決まってるよ」
この子は打算で私に友だちになってと言ってきた。なら私も打算で友だちになればいい。
「お兄ちゃんもきっと私が加奈ちゃんと友だちになれば嬉しいだろうから。……点数稼ぎだよ」
「ひどい友人関係ですね」
「それを加奈ちゃんが言う?」
「……それもそうですね」
「はっきり言うとね、私加奈ちゃんのこと嫌いだよ。今日嫌いになった」
だって気づいたから。この子は私の大嫌いな白沢雪奈にそっくりだ。
「でも……お兄ちゃんを好きになったことだけは評価してあげる」
それは私が好きな唯一の私の部分だから。
「それに免じて……ね」