観察16:賭け?
「加奈の病気は簡単に言えば先天性免疫不全症だよ」
「免疫不全? それっておかしくないか?」
永野のいう病名は当然知っていた。どういう病気なのかも詳しくはないがある程度知っている。だが……。
「そうだな。免疫不全は白畑が最初に克服したとされる難病だ」
白畑の医療業界での台頭は人類史に残るほどのものだったらしい。近代史の一番最後で白畑によって人類が克服した難病を習った。その中には免疫不全症やガンも入っている。
「今では先天性や後天性関係なく免疫不全症の多くは完治する。それができない場合でも継続治療で日常生活を遅れるのがほとんどだ」
「じゃあ、どうして加奈ちゃんは……?」
「何事にも例外ってあるらしいぞ」
「……………………」
「まぁ、外に出ることができないだけでここにいれば大丈夫なんだ。そう難しく考えるなよ」
「ん……? あれ? そういえば免疫不全なのにオレとかに普通に会ってるが問題ないのか?」
ここに入るときに消毒とかした覚えもないし、加奈ちゃんが病院内を病院内を散歩したりしているのも手紙で知っていた。
「それがここの恐ろしいところなんだよ。ここは中庭とかも含めて敷地内はほぼ無菌状態らしい」
「…………………………は?」
「だいたいおかしいと思わなかったか? ここは白畑でさえ治せないような難病患者がいるところだ。当然人にうつる病気の患者もいる。だがここには研究室以外に立入禁止の場所がない」
「…………つまり?」
「白畑のとんでも技術で片っ端から消毒してるらしい。目に見えないだけでな」
「いわゆるナノマシンとかそういうのなのか?」
「とりあえず俺はそれで納得してるが……どちらにしろ普通じゃないな」
すごいすごいとは思ってたがSFみたいな技術力だな。
「まぁ白畑については考えても仕方ないって事で結論でてる。ここにいれば加奈は元気でやっていける。それだけで十分だよ」
そう言って笑う永野。
「……本当にそう思ってるのか?」
だがオレにはその笑顔が無理をしているようにしか思えなかった。
「さぁな」
そう言ってとぼけるようにまた永野は笑う。それがオレには気に食わなかった。
「よし、永野。また交換条件だ」
「交換条件? 何を聞きたいんだ?」
「お前の本当の気持ち」
「……交換条件は?」
「加奈ちゃんと雪奈が友達になれたらってのはどうだ?」
「……それって賭けになってないか?」
「そうかもしれない。けど……オレは賭けって言えるほど分の悪い話じゃないと思ってる」
「はぁ……まぁ分かったよ」
「約束だからな」
兄として、オレは永野の本当の気持ちを知りたいとそう思った。