観察12:恋文?
「……っと、こんな所かな」
昼休み。オレは書いたものを見直し一つ頷く。
「? 海原、飯も食わずに何をしてるんだ?」
「あぁ、永野。調度良かった」
オレはそれを用意していた封筒に入れ永野に手渡す。
「……なんだ? これ」
「見れば分かるだろ?」
「まぁ……手紙……だな」
「あはは……とーくんが授業中になんかまじめに手を動かしてると思ったら……」
「人がまじめに授業受けてる時に俊行は恋文書いてたのね」
弁当を食べ終わったのかこころと瑞菜もやってくる。昨日は少し気まずかったが今朝になったら瑞菜は元通りだった。
「恋文とか適当なこと言うな」
「…………誰にとか聞く必要はないよな? 海原」
「そりゃ、永野に渡したんだ。決まってるだろう」
「つまり…………海原は俺が好きだったのか」
「うるさい黙れぶっ食べるぞこのやろう」
「少しは冗談に乗ってくれても良くないですかね!?」
「なれないことして疲れてるんだよ。とにかくそれ加奈ちゃんに渡してくれ」
手紙なんてまともに書いたのいつ以来だろうか。もしかしたら授業以外でまともに書いたのは初めてかもしれない。
「けど俊行。なんでいきなり手紙?」
「あはは……まぁ、昨日の様子見てなければ分からないかもね」
「そゆこと。まともに話せる状態じゃないからなぁ」
とりあえず手紙でオレというのを知ってもらえればいいかなと。
「ふーん……よく分からないけど、俊行ってそういうところは変にマメよね」
「じゃなきゃ雪奈の面倒なんてやってられないよ」
手をかけるところはとことんかける。そうしなきゃ、あいつの面倒は見れない。大事な所で手を抜いたらきっとあいつは折れてしまっていたから。
(……まぁその分、それ以外の部分では存外な扱いしてるけど)
「とりあえず海原。これを加奈に渡せばいいんだな?」
「ああ。頼む」
しばらくはそんな感じで接触を図ろう。流石に普通に話せるようにはなってみたい。
「お兄ちゃんご飯食べよー」
「噂をすれば……ね」
「あはは……雪奈ちゃんって本当とーくんとこころさんの前だと違うよね」
「? どうしたの?」
やってきた雪奈は二人の言葉に疑問符を浮かべる。
「なんでもないだろ。それより雪奈。遅かったじゃないか」
「うーん……よく分からないけど先生に怒られてた」
「はぁ? 何したんだよ」
「授業をまじめに受けろとか何とか」
「……呼び出しくらうくらいとかどんだけ悪いんだよ」
「そんなこといいじゃん。それよりもうお兄ちゃんたちは食べちゃった?」
「オレ以外はもう食べ終わってるな」
「? よく分かんないけどじゃあ早く食べよ」
「はいはい。分かったよ」
放課後、また空いた時間にこいつのことについて聞いてみないといけないかもしれないとオレは思った。