観察10:似ている
「あ、いたいた。お兄ちゃん」
「ん? 雪奈にこころか」
屋上で永野と適当に喋ってる所に雪奈とこころがくる。
「なんだよ? 少し早くないか?」
「無茶言わないでよ。瑞菜さんと違ってあたし達は話すこととか本当にないんだから」
「うん。自己紹介してお兄ちゃんのことどう思ってるか聞いてそれでもう話題なくなっちゃった」
「……おい」
さり気なくとんでもないこと聞いてくれるなよ。
「まぁでもどうして俊行があの子の事を気にかけてるのかは分かったからあたしは目的果たせたかな」
「え?なになに? それ私聞いてないよ」
「雪奈が気づいてないのは意外……ってそうか。近すぎるのね」
「? オレにも意味がわからないんだが……」
「……俊行には言ってたほうが面白そうだから教えときましょうか」
そう言ってこころは近づきオレの耳元に口を近づける。
「(……あの子、雪奈に似てるわね)」
「…………そうか?」
雪奈を猫にたとえるなら加奈ちゃんは犬っぽい気がするが。
「……ま、あたしがそう思っただけだしね。もしかしたらただの一目惚れかもしれないしね」
「残念ながら一目惚れ出来るほど美人に耐性がないわけじゃないからな」
「うわぁ……その発言にはさすがの私もドン引きだよ……」
「久しぶりに海原にリア充氏ねと言いたくなったんだが……」
「……うん。今のは少し自分でも引いた」
「はいはい。馬鹿言ってないで。そろそろ俊行はあの子の所行きなさいよ。流石の瑞菜さんもそろそろ話題が厳しい気がするわよ」
「ん……そうだな。お前らはどうするんだ?」
「あたし達は瑞菜さんと一緒にもう帰ろうかしらね」
「そっか。なら気をつけて帰れよ」
「おいしいご飯作って待ってるから遅くなっちゃ嫌だよ?」
「分かってるよ。……じゃ、また後でな」
そう言ってオレは屋上から病室へと向かった。