観察7:女の匂い
「よ、海原。今日は両手に花だったな」
「おはよ永野。……片方は花って言うには棘がありすぎるというか……」
朝。登校して席に座った所で永野がいつものように話しかけてくる。
「……何よ俊行。あたしに何か文句あるの?」
話を聞いていたのか荷物を席に置いてこころもやってくる。
「別にお前とは言ってないだろうが」
「あはは……それじゃ私なのかな?」
「それはないが……」
……棘云々よりどっちも一筋縄にはいかないからなぁ。オレにとっては。
「相変わらず海原達は楽しそうだな」
「褒め言葉として受け取っておく。それで永野。今日もまた行ってみていいか?」
「ん? まぁいいが。お前も物好きだな」
そりゃ、雪奈に付き合ってたら物好きになるしかない。
「?……なんだか女の匂いがするわね」
「この場にいる女はお前と瑞菜だけだ」
「あはは……そういう意味じゃないと思うんだけど……」
ありがとう瑞菜。律儀に突っ込んでくれて。
「よし。永野、あたし達も俊行と一緒に連れていきなさい」
「あはは……あたし達ってやっぱり私も含まれてるのかな?」
おそらく。そしてこころが行くなら当然雪奈もくることになる。
「……永野、無理なら無理って言ったほうがいいぞ」
「んー……俺としては別に問題ないぞ。4人だろ? 海原以外は皆女の子だし」
「…………いいのか?」
「なんでダメなんだ?」
「いや……そこらへんの機微はオレにはよく分からないが」
普通の所に入院してるわけじゃないのに。そんなに赤の他人を連れていけるものなんだろうか。
「海原が心配してることはなんとなく分かるが春日さんが来るならどうにかなるだろう」
「? 私がどうかしたの?」
「春日さんもちょうどいい機会になるかもしれないってこと」
分かりやすいくらいに瑞菜は疑問符を浮かべている。そういうオレも同じような顔をしているだろう。ポーカーフェイスなのか、単に興味が無いのか、こころはいつものように涼しい顔をしているが。
「まぁそこらへんの選択は春日さんに任せるとして、海原達は今日行くんだな」
「ん、そうらしい」
そんなこんなで今日はこころ達もついてくることになった。