観察4:拍子抜け
「それで海原。何か質問あるか?」
「いや……ない」
ここに着た時点で大体の疑問は解けた。そして新しくできた疑問を問いかける覚悟なんてオレにはない。
「お見舞いして話し相手になればいいんだよな?」
「そうだな。そうするだけであいつは喜ぶよ」
「……ならさっさと行こう」
多分今ここで深く考えてもいい方向になんていかない。
(……あったことのない子への同情なんて)
そんなのオレなんかが持っても偽善にしかならない。
白畑病院。そこへオレたちは入っていった。
「加奈。入るぞ?」
「兄様? はい。大丈夫ですよ」
楚々とした声の返事を受け永野は病室へと入る。それへと続きオレも入る。
「兄様いらっしゃいま……せ?……って、え?」
「どうしたんだ加奈? そんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔して」
「な、な、なんで海原さんがここに!?」
「それはお見舞いにきたに決まってるだろう」
「お、お見舞い?」
「それ以外が良かったか?」
「そんなことないですけど……」
「……オレは来なかった方がよかったか?」
入院患者がこんなにはしゃいでいいんだろうか?
「そんなことありません!」
……叫ぶところはなんか永野の妹って感じがするな。
「そ、それで……本物の海原さんですか?」
「オレの偽物がいるとか聞いたことはないな」
そっくりさんはいるかもしれないが。同姓同名かつ同じ顔の奴なんてさすがにいないだろう。
「………………」
「? 加奈? 何を固まってるんだ?」
「……………………きゅぅ」
パタンと音を立て永野妹はベッドに倒れ込む。
「……気絶してるな」
「……個性的な妹さんだな」
「…………」
「…………」
「……起きるまで待っててくれるか?」
「……ここで帰ったら何しにきたんだってなるだろ」
オレはなんだか拍子抜けした気持ちになってため息を付いた。