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怪奇事変

怪奇事変 清美坂大橋

掲載日:2026/07/14

投稿遅れて申し訳ありません!

 第三十八怪 清美坂大橋


 名所とも呼ばれる橋がある——有名ではあるが、在り来たりな話で、そして現実にある話。

 地元では()()()()とも呼ばれており、学生時代に数人で行った時の話だ。

 当時は大学生で車の免許を持ちたての友人がドライブに誘い夜の街に駆り出したのがきっかけ。

 そこから曰く付きの名所を周るようになった。

 初めはただの遊びにすぎなかったが、たまたま撮った動画がSNSでバズったことで調子に乗った俺達は心霊スポットを巡礼する集団となっていた。

 数百本の動画を出し、終わりのない編集作業と動画投稿に追われながらも確かに収益は出ており、それが俺達の確かな証となっていた。


 「今日もバズってるな、そろそろショートでも出すか?」


 「外部のSNSから人を誘うってことか?まぁ皆やってるしな……」


 「此処まで人気が出てればそれなりの収穫はあるんじゃないか?チャンネル登録数も順調に増えてるし」


 「まぁー……そうだな」


 「俺達も心霊系のジャンルでは人気が出てるし——」


 「だからこそ、そろそろ考えないとな~」


 それはネタの詰まりでもあった。

 曰く付きの場所を巡礼し、視聴者から行ってみてほしい場所も巡礼する。

 だが、いい加減行き過ぎてネタが切れてき始めていた。

 路線変更も視野に入れた方が良いんじゃないかと思っていたが、数字が伸びてる以上下手な路線変更は自身の首を絞めるきっかけになる。

 収入が多い分、支出も大きい……今の生活を維持しながらも今後のことを真剣に考える必要があると前々から感じていた。


 「なー、今後だけど——」


 「いや、路線変更はしないぞ!お前も自分の動画見て今が調子良いって分かってるだろ!?」


 「それは分かるけど……でもよ、前は4人でやってたのに今は2人だし、それに——」


 「いや!俺は止めないぞ!お前が辞めても俺は続ける!」


 「……結論から言えばこのままやり続けるのもネタ切れだし、それに元居たメンバーの2人は——」


 「普通の生活に戻っただけだろ!?それがどうした!」


 「声を荒げるなって、あの2人がどうなったかお前も知ってるだろ?」


 「絶対ありえない!」


 「……」


 実は今後について考えなければならない理由としてもう1つあるのだ。

 元々この心霊ジャンルで活動していた初期メンバーは今の俺達を含めて残り2人居たのだ。

 それが問題なのだ、元々居たメンバーも俺達同様に活動をしていたかったが、ある心霊スポットに行ってから調子が悪くなってしまったのだ。

 最初は体調不良だと思われていたが、連絡が取れなくなった後に消息を絶った。

 相棒はソレがバズると考えて動画にした。

 当然、利益もあるが心配もしていた、だが結局見つかることがなく今も捜索が続いているらしい。

 当時はご親族から辛辣な言葉と共に、行方不明になったメンバーも探さず活動をする俺達に対して叱責と暴言を吐いていたが、今では何もない。

 結局何が起きたのか、分からず終いだと思っていたが一件のコメントでその認識は大きく変わり波紋を呼んだ。


 「“呪い”なんてありえない!俺達はどれだけ心スポ巡礼したと思ってるんだよ!」


 「でもヤバイのも実際あったろう……」


 「そりゃ……でもそれで活動を変えるって今から何をするんだよ!これ以上に上手い話なんてないぞ!」


 「……まぁ、そう…だな」

 

 しばらくの沈黙のあと口を開いたのは相棒の方だった。


 「よし!ならコメントの奴等にもアレが“呪い”なんかじゃなかったってもう一度“あの橋”に行こう」


 「“清美坂大橋”か」


 ——清美坂大橋——


 地元の有名な心霊スポット。

 大きな橋の前に急な坂があり、橋の上から見る下流の流れはとても澄んで綺麗なことから清美坂大橋と名付けられた由来がある。

 だが、何時からかそこは有名な心霊スポット——基、自殺名所のスポットになり、その名を穢す事になった。

 当然定期的な警察の巡回は有れど全てを守ることはできなかった。

 そこでの自殺は有名で常に橋に設置された飲み物や花が添えられるような状態であるからだ。

 当然、地元の人間はそこに立ちいかないし、車でも通りたがらない。

 以前、心霊を特撮している方とのコラボで何故此処まで自殺が多いか?そんな議題を話したことがある。

 他にもテレビにも特集されており、専門家たちの話では怨念が立ち込め既に幽霊たちの力場となっているとまで言われているが、相棒に関しては鼻で笑っていたな。

 

 「確かに以前は撮影したけど、鉄柱を打つような音でビビって逃げたんだっけ?」


 「ああ、リベンジでやれば再生数回せるだろ?」


 「心霊だが物証にもなるだろうしな」


 「ああ!今日にでも準備していこう!」


 こう言う所での行動力は凄まじいのだ、うちの相棒は。

 そんな突如決まった話だが、あの時行くのを止めておけば良かったと後悔するのは、この先の未来で知る話だった。




 清美坂大橋に着くと、どんよりとした思い空気が周囲を支配していた。

 ライトで照らしても奥まで光が届かざ、まるで暗いカーテンで遮られているかのようだ。

 カメラやスピリットボックスなどを準備をして実際に検証を開始する前に、挨拶の手順や機材の細かな調整を進めて行く。

 そして——

 

 『こんばんは!心霊ハンターズです!』


 撮影を開始。

 俺達の声は虚空に響き、木魂する声が不気味に感じた。

 と、途端にカタンっと言う金属音を叩くような音が響く。

 急いでカメラをそちらに向けるも何も見えないが、まるで圧迫されるような感覚を味わう。

 まるでこれ以上は立ち入るなと言われた様な感覚にすらなる。


 「何か聞こえたか?」


 「いや、何も……」


 パキ、カン、ゴン!っと鈍い音だけが響く。

 俺達はすっかりとその異常とも言える空気に飲まれながらも手をしっかりとカメラを握り前えと進む。


 『皆さん、此処で音がなりました。何も……居ないですね、これから検証していきたいと思います』


 手の合図で1人1人で検証していくことにした。

 心霊現象は1人の時に起きやすいと言う今までの経験だ、俺は相棒からゆっくりと離れて行きながらも周囲を撮影しつつ、気になる橋の下も撮影するも、真っ暗な闇一面で何も見えない状態だ。

 微かに水の流れる音が聞こえるがそれ以上の成果はない。

 あとは相棒の検証が終わるまで待機しつつ、順番になったら今度は俺が行くと言う流れだ。

 予め買っておいた、コンビニの握り飯を食べながら待つ。

 凡そ30分程度の検証で交代制、その間もこっちは念入りにカメラやノートPCで確認するも特に異常はない。

 暗視状態にしているから暗くてもこちらには手に取るように場所が分かる。

 

 「……ん?」


 何か黒い影のようなモノが見えたような気がする。

 あくまで見えたようなだけ、だが特段変化はない。

 オーブが映ったりする程度と同様ならば特段気にする必要性はないと感じそのまま放置しやり過ごしていが、俺は気づけなかった。

 徐々に右端の下から黒い影がカメラを侵食している状況に。

 

 30分経つと相方が戻ってきて準備OKといった合図を手でしてくる。

 

 『それでは行ってきます』


 次の検証は俺になる。

 とは言えども何度もやっていることなんで、ある程度は慣れてしまった。

 橋の中心が所謂、自殺名所となる飛び降りなどが確認されている場所で、そこで待機することになる。

 捧げられた水や花が置いてあり、直近で事故でもあったのかがわかる。


 『誰か亡くなったんでしょうか……』


 カメラに向けて小声で話す。

 だがそれにこたえる様にカン!バン!っと橋を叩くような音が聞こえる。

 勢いでそちらにカメラを向けるも何も映らない。

 反対方向からの音だったが、それ以上の情報は得られなかった。

 

 『では、スピリットボックスを起動させていきます』


 砂嵐のノイズのような音が響く。

 

 『え~、誰かいらっしゃいますか?先程音が聞こえましたが、近くに居るんでしょうか?』


 しかしノイズの音だけで何も聞こえない。

 稀に声が入ることもあるが、此処は以前も同様に何も声が入ることはなかったのだ。

 試しにもう一度、橋の下を覗いているが闇が広がるだけ、試しに特別な懐中電灯で照らしてみるも闇が広がっているだけだ。


 30分経ったと言ったところで何も成果がないことを確認して引き上げることにしたが、ふと手を肩に置かれた様な感触ですぐさま振り返る。

 だがそこには誰も居なかった。

 更には幻聴なのか?聞いたことがあるような声まで聞こえた。

 それは以前活動を共にしていたメンバーの声に似ていた。


 ——タスケテクレ——


 そう聞こえた。


 『き、聞こえましたか?』


 不安になりカメラに向けて声を出すも、当然返事が返ってくることはない。

 だが話さずにはいられなかった。

 そうしなければ不安と恐怖でその場から走り出しそうな気分だったからだ。


 「どうだった?」

 

 相棒が声をかけてくる、だが頭の中は真っ白だ。


 「い、いや、何も……」


 「撮れ高なしか、地元なのに此処はビックリするぐらい、音以外は何もないよな~」


 「うん」


 「地元だから絶対穴場になると思ったのに、帰ろ帰ろ」


 「……ああ」


 俺だけだろうか?

 その後帰宅後に編集した動画を再生しても、その声は聞こえてこなかった。

 リベンジにもならない動画は没となるところではあったが、何も出さないのも楽しみに待っている視聴者に迷惑だと感じて出すことにした。

 もしかしたら俺達には聞こえなかった声が聞こえる人もいるかもしれないし、気づけない所に気づいてくれる人も居るかもしれない。

 そう信じて動画を出して2週間後に不幸な出来事が起きた。

 それは相棒の転落事故、幸い命に別除はないがたまたま高い所から足を踏み外して落ちてしまったのが原因らしいが——本人は違った。


 「……押されたんだ」

 

 「え?」


 「いや、変なことを言ってるのは分かる、でも確かに俺はあの時、後ろから誰かに付き押されたんだ」


 「……でも周りには——」


 「ああ、誰も居なかった!それも間違いねぇ!なのに押されたって感覚は肌に残ってるんだ!」


 「……」


 この時、以前居た2人のメンバーを思い出していた。

 2人もあの橋に行ってから異変のような形で転落事故を起こしていた。

 最初は大袈裟だと思っていたが、1人が消息を絶ってから2人目が同じ状況になって、そして消えたことで信じる他なかった。


 「2人の時もそうだったよな?」


 「……気のせいだよ、周りには誰も居なかった」


 「そう……なんだよな」


 「ああ、気のせいだ」


 そうしなければならない、深く考えてはいけないと思考に待ったがかけられる。

 状況を詮索してはならない、しないことこそ、安全性を確立させるための方法だと感じていたからだ。




 そして1週間後、清掃の仕事でたまたま俺は二階から足を踏み外して地面に転落した。

 幸い植木があったことで、それがクッションの代わりとなり助かったが、相棒の言っていた言葉を思い出す。


 『なのに押されたって感覚は肌に残ってるんだ!』


 「……押された?」


 二階には俺しか居なく、担当が分かれていたため、誰も居なかったはずだ。

 なのに——()()()()()()()がした。

 確かに、背中を押されたような感覚を味わったのだ。


 「(気のせいだ、あり得ないことに思考を巡らせるな、俺は誰にも押されてない、足を滑らせただけだ)」

 

 そう自分に言い聞かせて仕事を終わらせる。

 帰宅後はいつも相棒と次の撮影について話し合いをすることになっているが、何時もと違って相棒は家に居なかった。

 念のために連絡をしたが繋がらず、数年前に似た状況に繋がる。

 数時間待ったが何の連絡もなく、結局その日に帰ってくることはなかった。


 翌日、清美坂大橋の下で転落死している相棒の姿がテレビに映し出された。

 名前も、容姿も、全て同一人物。

 分からないのは、自分の車でその場所に行ったわけではなく徒歩で行ったことと、何故あの橋に向かったのか?

 理由が解明できないまま、俺達のチャンネルはこれ以上続行が不可能となりチャンネルを解散することを決める。


 その数週間後から、背筋から視線を感じるようになる。

 確かに一歩進むごとに誰かが後ろから付いてくるような感覚……恐らく相棒はこれを味わっていたのだろう。

 後ろを振り向くどころか、部屋に居ても横や後ろを気にしてしまう。

 何も起きてないのに、何かがソコに居るかのように。

 これはあの橋に到着した時に感じる重圧のようなものに似ている、まるで傍にあの橋があるかのように。


 そう、これは仮説だ。

 仮にあの大橋が呪われていたとして、その場で呪殺される訳ではないのかもしれない。

 呪いは確かに侵食し、必ずアナタを呪い殺しにやってくるのかもしれない。

 あの真っ暗な闇のように、制限なく降りかかる見えない魔の手に掴まれて、生活をしなければならない。

 その生活から逃れたいのであれば……再び呪いと向き合わなければならないのかもしれない。


 あの橋に行くことを。


 第三十八怪 呪殺橋

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