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交わらない君と私

作者: 山口甘利
掲載日:2026/02/20

 同じ推しの友達がいる。それだけで私は幸せだったはずなのに、いつのまにか彼に私は恋をしていた。


 普通、喧嘩ではないけど気まずくなったり、自然と喋らなくなった子とまた仲良くなりたいなんて思うものなのかな。しかもそれは異性。

 私たちは何度も行動を起こした。同じ推しを持っているからこそ、私たちの縁は切れそうで切れていなかった。多分これは運命で、もしこのまま学校が離れても、いつかばったりどこかの駅で会う、そんな予感がした。ずっと一緒にいたい、それぐらい私は彼を好きになった。

 私の初恋の人──黒川碧君。呼び捨てで呼び合いたかったな。ラブラブな恋人同士みたいに。

 どこが好きかと聞かれるときっと私は“雰囲気”って答える。男子も女子も少しだけ近寄りがたい雰囲気を持ってて、目が合えば優しい表情をする彼に私は一目惚れした。

 思い返せば、思い返すほど息苦しくなるあの思い出の日。誰が悪いとか、そんなの分からない。

 ただ、中三に上がった私が今までに学んだことは、奇数で遊ぶのはよくないこと。誘われた時に、唯奈も誘おう、と言わなかった自分を後悔する。でも唯奈は嫌いだったから、一緒に遊びたくなんかなかった。

 大勢の前では良い子を装い、私と話す時は、あんな人とも私は話せる、あの人と話すのは辛いとか、愚痴ばっか。じゃあその子たちと仲良くなんなかったら良かったじゃん。仲良くなったのは自分でしょ?

 他にも、私が友達のいないあの子とも仲良くしてあげてますよ、って教室の端にいる子に上から目線。勇者気取りの人が私は何よりも大嫌いで、まさにその枠にぴったり当てはまるのが彼女だ。

 多分あの日の出来事はみんな悪いんだ。確かに碧君が途中から私と陽毬の輪を抜けたのは悪い。でもそこでそのまま二人で会話を続けていた。あぁ、もう思い出したくなんかないのに、あの日の光景が鮮明に脳内で再生される。

 あの日のことがあり、その後に陽毬が碧君にLINEを送った後も私たちの関係は続いていた。あの日以来同じクラスになったこともないし、喋ってもないし、目も合わせていないけどLINEは続いて、途切れてを繰り返していた。

 彼が私のことを好きだったのは去年知った。中二に上がったタイミングで、唯奈から聞いた。そんな気はしてたけど本当かは分かっていなかった。両思いだったならもっと早く、仲が良かった時に想い伝えたかったな...。

 碧君とは、中一の喧嘩した12月の最後の方でLINEが途切れた。お互いにLINEを始める勇気もなく、そのまま約10ヶ月が過ぎた時にLINEが来た。

(前みたいに話そう。)って。

 私はそのLINEがくる少し前に、碧君に嫌われてるのかどうかを知りたくて、彼と仲良い友達に聞いたことがあった。多分それが本人に伝わり、LINEがきた気がする。

 でもそれも少しすると途切れてしまった。もう、無理なのかなと思っていたけど、そのまた約6ヶ月後に、彼と同じ部活だった仲井君に、碧君のことが嫌いかと聞かれた。

 これは前と逆のような状態になり、私は仲井君に聞かれた数日後にLINEをした。

 でもまたそれも途切れてしまった。こうやって、彼とは途切れて、つながりを繰り返しているのだ。

 彼とLINEをすれば、止まらないくらい楽しい。だからまたLINEをしたいし、もう一度遊びにだって行きたいけど、もう無理だよね。

 時計を見れば、もう夜の1:30。寝てる間に、良いアイデアが浮かびますように、と祈り目を閉じる。


 それから数日。私はいつも通りの生活を送っている。朝起きて、学校行って授業を受けて、家に帰ってって。彼とは相変わらず何もない。

 こんな感じで話せたらな、あんな場所に行ってみたいな、って妄想が限界。

 今日はそんなことを忘れて、『LOVE YOU』の初ライブ。当選した時からずっと楽しみだったライブ。学校が終わって、そのまま電車に乗る。

 碧君はまだマナ推しかな。また話せるようになったら、推しの話したいな…。そんなことを思いながらライブ会場の席を探す。

 席の列を見ると、私の隣の席には見たことのある背中がある。いやいや、そんなはずない。そんな漫画みたいな展開起きるはずないよね。

 そう思いながら席に座り、隣を見ると、見間違えじゃなかった…碧君がいた。

「えっ…。」

 彼はポカンとした表情で私を見た。

「あおいくん、、だよね?」

 碧君はコクっと小さく頷く。

「ひさしぶり。仁美だよね?」

「うん。久しぶり。前はLINEとかで話してたけど、対面で話すのって何年振りぐらい?」

 そう言って彼は、小さく微笑む。その優しい表情を見ると、この彼が私の初恋の人だって感じる。やっぱり好き。

「だね。またこうやって喋れて嬉しい。」

 いつのまにか顔が熱くなる。会場はそこまで明るくないから、碧君には見えてないよね。

「僕も。これからも前みたいに話そう。」

「うん。じゃあさ今日一緒に帰ろっ。」

 ここから家までは約一時間。碧君の家は私の最寄りの駅の次の次だったはず。

「うん。もちろんもちろん。」

「よかったー。てかさ、私碧って呼んでもいい?」

「うん。呼んで呼んで、逆に嬉しい。」

 いつか呼べる日が来たらいいと思っていたけど、本当に来るなんて。

「そういえば、碧にこれ渡そっかな。」

 私はカバンの中からある物を取り出す。

「はい。これ、良かったら。」

「これって、チョコ?」

「そう。手作り、上手くできてるか分かんないけど。」

 今日はバレンタイン。私がもし碧に渡せる時があれば渡して、なかったら自分で食べるように作った物だ。こんな風に渡せるなんて夢にも思っていなかった。

「絶対美味しいでしょ、これは。ありがとう。」

 彼は嬉しそうに、チョコレートをカバンの中にしまう。

「また感想聞かせてよ。中一の12月に気まずくなったから、結局渡すの初めてだね。」

「ほんとだ。なんか思い返せば、あんなにも短い期間だったけど、お互い仲良くなったのはあのメンバーが初めて。お互いにみんな気が合ってたんだろうね。」

 碧は、懐かしそうにどこか遠くを見る。私はそんな彼をそっと見つめる。

「ね。あのさ、」

 ドクン、ドクン、と心臓の音が身体中に響き渡る。きっと学校全員の前で発表する時よりも、今は緊張している気がする。

「好き。」

 私はずっと溜めていた想いを伝えた。彼が私のことをどう思っていようが、私はこの想いを伝えずにはいられなかった。

「俺も好き。付き合って下さい。」

 えっ、と私は小さく言い、口元に手を当てる。

「嬉しい。じゃあ、よろしくお願いします!、であってるよね?」

「多分。よろしくお願いします。」

 そう言って、互いに気まずそうに、嬉しそうに微笑む。

 この恋はきっと、私たちの推しが繋いでくれたんだ、きっと。


 その後、ライブが始まる。

 生で聞いてみたかったマナとあのメンバーのハモリ。曲調が大好きな初恋の曲と夏祭りの曲に片想いの曲。

 隣を見れば、私と同じように幸せな表情をした、彼がいる。そんな彼の手をそっと取る。温かくて優しい手を。私が彼の手を握れば、彼も優しく私の手を握り返す。好きだよ、碧。きっと電車では、気まずかった期間の話でいっぱいだよね。ライブの話もしたいよね。愛してる、碧。


 ずっと交わらなかった、私と君は交わった。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

この作品は、結構前に書いた作品なので思い出しながら書いてみました!

本当は前作で終わらせる予定でしたが、少し前に短編小説の中でたくさんの方が読んでくれていると知り、続編として、前回の主人公とは違う目線で書いてみました。

中学生の交わったり、交わらなかったり、そんなモヤモヤした気持ちを書いてみました!

前作を読んでいない方はぜひ、読んでみてください!

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