交戦①
(どういう事だ・・・コレは!)
自分の武器を持って、駐屯のテントを出て前衛を見た時だった。
前衛の騎士は、自分達の倍はある様なオーガに押されていた。
(オーガとはこんなに大きいヤツだったか?)
騎士達も人としては大男の部類に入る・・・だが、それを上回る体格のオーガが10匹(人)が行く手を阻んでいた。
しかも質素な装備からして、彼らは魔王軍の一般兵クラスだろう・・・
「な、何をしている!・・・オーガごとき、一閃出来るだろう!」
慌てふためきながら、副団長は指示を飛ばしている。
「カザンダ、どういう事か説明して貰おう」
ユカタが声を掛けると、ガザンダと呼ばれた副団長は怯えた様にユカタに擦り寄って来た。
「・・・オーガってこんなに強かったのかよ!《闘技場》じゃ、大きいだけの力任せな鈍重な存在だったのに・・・」
そのガザンダの言葉に、ユカタもハッ!とした。
この光景を見るまで、ユカタもガザンダと同意見だったのだ。
オーガなど、聖騎士ならば倒せて当然・・・登竜門と考えていたが、それは自惚れだったようだ。
(コイツは、指揮官職、事務職ばかりで前線はほとんど経験してきてないのか・・・だから、こんな命令を下したのか?)
多少は副団長を務めてるから剣の腕もあるのだろうが、それは《限られた環境》だけの話なのだろう。
「・・・一体に数人掛かりで丁寧に倒せ!その間は他の者が攻撃を防いで時間稼ぎをしろ!」
そうユカタは指示を飛ばすと、自らも腰の剣を抜いてオーガに立ち向かった。
(コレが野良の魔物の強さか・・・この先が思いやられるぞ)
何とか死者どころか重怪我人を出さずに撃退出来たが・・・これからの課題が残った。
(人間領での強さの基準は、ここでは通用しないかもしれないぞ)
魔王城に近づけば近づくほどに強力な魔物と戦う事になるだろう・・・・
(そもそも・・・この急遽な《奪還》作戦は、やはり《罠》だったのかもしれん・・・)
まるで初めから《手際》が良すぎた・・・ユカタ達親衛隊が聖都を離れたタイミングで、視察先が《火事》になったのだ。
しかも、その時点で・・・追加の聖騎士団と勇者が現れるなんてあり得ないからだ。
(・・・今回の火事と爆破も、我々から《何か》を遠ざける為の仕業・・・)
やはり、この集団の中に別な意図で動いている者、ユカタの邪魔をしようとしているヤツがいるのは間違いない。
(聖都に居た頃より、慎重に行動せねば・・・)
そう決意をしようとした時だった。
「ユカタ団長!大変です・・・勇者アベル様一行が、魔王城に向かいました」
その報告に、ユカタは目を丸くした。
(まさか・・・先程のオーガとの戦闘を理解していないのか?)
タイミング的に考えれば、自分達がオーガと戦ってる最中に出て行った事になる・・・
「・・・勇者を引き止めに行くぞ!・・・まさかとは思うが、彼らも魔物を甘く見てる可能性があるからな」