序章②
(・・・何かが変しい・・・)
ユカタは旅人のカッコをして、魔王ラムトスの傘下の魔物の街に紛れ込んだ。
ユカタは聖騎士団であり、彼女はその4番隊の隊長をしている。
そして彼女の本来の目的は、《見捨てられし村》という魔族達に連れ去られた者達が逃げ延びて隠れ住んでいた村を、聖国が最近《保護》したので・・・現地視察をしてほしいと、王に依頼されたのだ。
ところが、ユカタら視察団が向かおうと王都を離れた所で、村が魔族に襲われたという報告が来たのだ。
そして魔族らは焼き払い、村の住人を奴隷にするべく連れ去ったのだと報告されたのだが・・・
(だったら何故、怪我人をこの街に?)
今、ユカタは宿屋の2階から街の様子を見ていた。
その様子は、聖国の城下街よりも、活気がある様に思えたのだ。
ユカタが聖国で聞いた話では、この辺は魔族達の巣窟・・・人間など奴隷の様に扱われ、日々虐げられている。となっていたが、全然にそんな感じは受けない。
むしろ、魔族や魔物達と人々(主に商人や旅人)は、笑い合って仲良く暮らしているようにさえ見える。
(村の人達を《助ける》為にココに来たけど・・・何か報告とは違うような気がする・・・)
明日、《知り合いかもしれない》と嘘を付き、その村人と初対面が出来るように計らって貰った。
(明日になれば分かる・・・・)
そう思って、ユカタが窓を離れた時であった。
ドカンッ!
爆発音が響いた。
何事かとユカタが窓の外に顔を出すと、燃えてるのは村人が介護されていると言われたこの街の長の家だ。
(何事が起きた?)
その時、階段を駆け上がってくる数人の足音がして、ユカタの部屋の扉が開いた。
「ユカタ様、大変です!・・・あの村人達が殺害され、《証拠隠滅》の様に燃やされました」
そう言って入って来たのは、ユカタの親衛隊のメンバーだった。
「・・・どういう事?」
たしか、あの建物にはこの街では珍しく見張りを立てる徹底振りだった筈だ。
「はい。まだ詳しい事はわかりませんが・・・何者かが見張り達を倒し、侵入して殺したそうです・・・」
「犯人は分からないみたいですが、どうやら人間だと言う話ですが・・・我々が一番に面識の無い余所者と言う事で・・・」
後に喋った男が、そう言葉を濁す。
「・・・つまり、私達が疑われている訳ね?・・・では、私が自ら長の所に行って・・・」
ユカタは服を着替えて出ようとすると、もう一人が2階に上がって来て・・・
「・・・その必要は無い!いま、本国からの命令で200の兵が魔王ラムトス城に進軍を始めた!」
その言葉に皆が顔を見合わせる。
皆、そんな話は聞いていないからだ。
「・・・どうせコイツらは《下等》な魔物達だ!我々の言葉など信用するはずが無い!話し合いなど時間の無駄だろう・・・」
そう言うと彼は用意されていたかの様に、裏口から出る様にユカタ達を誘う。
「いや、待て!お前が行って進軍を止めよ・・・私達は疑いを晴らしに行く」
ユカタはそう言うと、長の元に向かって行ってしまった。
「貴女は、何を考えてるのだ?・・・今は大義を果たすべき時だろう・・・そんな些細な事など放置せよ!」