序章①
「ラムトス様・・・《例》の獣騎小鬼の1団が到着しました!」
部下である大鬼騎士の言葉に、ラムトスは目を開いた。
「連れて来い・・・状況を聞きたい!」
その命令にオーガナイトは頭を下げ、部屋を出ようとするが、何かを思ったのか振り返った。
「《捨てられし民》も一緒でよろしいのですか?・・・何でしたら彼らは外で待って・・・」
そのオーガナイトの言葉に、ラムトスは玉座から立ち上がった。
ラムトスは、大柄なオーガナイトに負けない様な、全身鎧に包まれた大男であった。
「・・・いま、何と言った?・・・ワタシは彼らを《保護》する為にココに連れて来いと言った筈だが?」
そのラムトスの言葉の圧に、オーガナイトもひれ伏した。
「申し訳御座いません・・・ですが、彼らは一度は人間共が《愚かな言い訳》で勝手に《支配》した村・・・今更、我らが手を出せば・・・」
オーガナイトは、人間達と戦争になるのではないか?と心配しているのだ。
もちろん負けるとかの話ではない・・・
魔王ラムトス軍の強さは、オーガナイトは分かっている・・・人間の兵など数万居ても自分達が勝てるだろう。
「・・・だから《見殺し》にしても構わぬと?・・・助けを求められたのなら答えるのがスジだろう?」
ラムトスの領土ではないが、そこは《魔王領側》は間違いない。
それに何か裏がある様に思えたのだ。
「おぬしは変な事を気にするな・・・それで《戦争》にはならぬよ」
そう言うとラムトスは、王座に座り直した。
「・・・では、怪我人はただちに《治癒所》に連れて行きます・・・動ける者だけブリンライダー達と共にココに連れて参りますね」
オーガナイトは、そう言うとこの場を去って行った。
(・・・ま〜アヤツの言う通り、たしかにわざわざ助ける必要はなかったかもしれんが・・・)
だがラムトスは知っていた。
あの村の者達が、人間にも受け入れられていない事を・・・人間共があの地を手に入れたのは《見え透いた建前の慈悲》だと・・・
真の目的は、安い労働力と土地の豊かさを狙っていた事を・・・
(・・・人間も愚かに成りつつあるの〜)
平和になる事も、また新たな問題を起こす事なのかもしれないとラムトスは思った。
と、その時であった。
「ラムトス様、大変です・・・聖国から200の兵がこちらに向かっているそうです」
別な部下が慌てた様に、ラムトスの元にやって来てそう報告してきた。
(200人?・・ずいぶん少ないな?
いや、ゴブリンライダーから《住民》を取り返すだけなら、それで充分だと考えたか?)
それに思っていたよりも対応が早い・・・ラムトスの見込みでは、こちらに住人が到着し終わった頃にやっと動きがあると思っていたが・・・
(まるで《火事》になる事を見越して報告に本国(人間領)に行ってる人が居るようだな?)
ここまで来るつもりなら、一戦交える事になるかもしれない・・・