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23 貿易都市カーベ

 貿易都市、カーベ。北側をみればムーカン山脈が拡がり、南側は海に面した外敵からはやや攻めにくい位置関係にある都市国家である。人口は約十万程度とこの世界の中ではほどほどの人口をほこる。


 "Ωの叛乱"とよばれた人工知能の暴走による先の大戦により、世界人口は大幅に低下していたがここ、カーベは戦後に大きく復興した都市の一つになる。大陸地域の流通の要になった要所であり、大戦後は自国から独立して自治区として貿易都市の役割を担っている。


 今では以前より、商業や工業などに重きを置き世界経済の復興に貢献するような立ち位置になっているカーベだが、その大きな役割を果たしたのがこの都市を象徴するような巨大な風車をもつ風力発電である。化石燃料がほぼ枯渇しているこの世界では電力が大きなエネルギーとなる。


 しかし大戦末期に反応兵器がばら撒かれた結果、その反応そのものをを起こさせない物質が一部の環境保護団体により世界中にばら撒かれ、反応兵器に使われていた物質による発電も出来なくなった。

 化石燃料はその流れで徐々に枯渇していき、そんな状況では限られた資材と技術でいかに有用な発電所を作るかが重要であった。その中で山から吹き下ろす風や海からの風が安定して吹くこの地域に作られた風力発電は産業を発展させるのに大きな貢献を果たしている。


 とはいえ、所詮は風力発電。そこまでの発電量は期待できず大戦前ならばこの都市の人口に対してまかなえる発電量ではなかった。しかし、現在では電力を使用する機器が極端に少ない為、この発電量があれば工業までまかなえている。


 カーベは大陸と異国の文化が織り混ざり、他の都市よりも多国籍の人間が入り混じって生活している異文化の情緒あふれる街だ。

 大戦の直接被害は少なかったとはいえ、各所を繋ぐハブ都市であったため、当時はそれなりの攻撃が頻繁に行われたのだが、その悉くを退けてきた軍備も整えられていた都市となっている。街を囲む様にして掘られた堀がその当時から、そして今も続く外敵の脅威から街を守っていた。

 そんな特徴から色々な人々が出入りする都市は秘密結社ニルヴァーナが隠れ蓑にするのに大変都合がよかった。


 施設の外、といっても傍目には普通の大手財閥系の子会社にしかみえないが、敷地の外をしばらく出たら街がすぐそこにある。

 やや、離れているのは有事の際に一般市民に被害を出さない為と言われていた。とはいえ中にあるのは変わりがないので同じ街に施設があるといってもいいだろう。


 街の雰囲気は多国籍文化がごちゃ混ぜになっている感じで多種多様な人や食べ物が街を飾っている。

 人力車や馬車、自転車もあり車も少しだが走っている。数はかなり少ないが。

 大戦以降、技術の衰退が目立ち、都市部であるこの街全体でもそれほど多くの電気製品がある訳ではない。それでも、他の都市に比べるとかなり発展している。その状況を考えれば大戦前の技術が多く残っているニルヴァーナの設備は異常ともいえた。


 今日はソータがサイボーグ化して初めてのまともな街への外出である。

 前回、街には出たもののすぐに外に出ているので、自分のいる街を見るのはこれが初めてになる。

 前回の任務への報酬の一部という事だが勿論、一人ではなくコレットは当然としてジャンヌも同行していた。コレットはパートナーという事で、ジャンヌは監視役であった。


 住んでいた町と違う都会の雰囲気に圧倒されキョロキョロと露天を見たり、通りすがる肌の色が異なる人を見てはコレットに嗜められる事を繰り返していた。


 そんなコレットは、「リードがないだけのペットの散歩みたいなもんじゃない」とか出かける前には言っていたが、今はお小遣いを握りしめてどれを食べようかと露店を吟味していた。


 現金なものだなとソータは思いながらも少し落ち着いて周りを見渡してみる。

 この通りは露店が多く色々な食べ物が並んでいた。蒸篭からは湯気が勢いよく立ち上っていて、活気に満ちている雰囲気があって、ないはずの胃が鳴るような食欲をそそられた。

 前回の事もあって、色々食べてみようと思ったソータは露店の一つで気になったものを購入してみる。肉まんの分厚い皮で角煮を包んだ食べ物で香ばしい匂いが湯気と一緒に辺りを包み込む。


 一口齧ると肉汁が皮に染み込み、またそれが甘辛くておいしい。今度、食堂のおばちゃんにリクエストしてみようかとソータは本気で考えていた。若干偏食気味の自分が別の食べ物を食べるなら喜んで作ってくれそうな気もしそうだ。


 コレットはとみると、ベビーカステラが全部繋がっているような塊を見つけて即購入、かぶりついていた。見た目が美少女だけになんだか残念な光景だが、満面の笑みで美味しそうに食べているの見ているもこっちまで幸せな気分になりそうに感じた。


 肉まんもどきを頬張りながら、特に欲しい物があるわけでもないので、ぶらぶらと観光気分で街を散策してみる。

 近々、祭りでもあるのだろうか、街を通る人通りが多いし、各所に飾り付けが沢山してある。そしてお面やらキラキラ系のグッズがやたら出店に出ていた。

 横に一緒に歩いているジャンヌの服の裾をちょいちょいと引っ張り声をかけてみる。


「ねぇ、ジャンヌ? なんかお祭りあるの?」


「春節祭だ。見た事ぐらいあるだろ」


「寝たきり生活だったから外の世界をまともに見たのはこの身体になってからだよ」


 ソータの町には春節祭なる祭りはなかった。ましてや、幼い時から病気が進み出しロクに外に出た事はないソータはこの状況が平常運転なのかも区別ができない。


「そうだったな……。来月にある春節祭の飾り付けや準備だな。新年を祝う祭だがこの辺りのは派手でな。爆竹を鳴らしたりして賑やかな祭りになるぞ」


 なるほど、それでこんなにキンキラしたグッズばかり売ってる訳になるのかと納得する。

 初めての都会で、いきなり祭り前の雰囲気という事で、街を歩く人の熱量は高くそれに当てられたソータらは興奮気味にあちこちの露店を回っては街の中を探索していった。


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