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異世界の中華屋さん  作者: 鏡石 錬


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51/52

51食目、蝦餃

「ただいま、ユーリ、ユナ」

「母さん」

「ママ」


 先月辺りにカナリアが看病の手伝いをしたユカリとその子供であるユーリとユナ。

 5年間分のお金を既に払って貰い、今は中華大衆食堂「悠」の2階で朝・昼・夜食事付きで寝泊まりをしてもらっている。

 母親であるユカリは、カナリアの看病のかいもあって冒険者へと復帰し、疎らだが任務に出掛けた後、3日後には必ず帰って来てる。


「ユーリ様ユナ様ユカリ様、ご注文はお決まりでしょうか?」

「カナリア姉ちゃん」

「お姉ちゃん」

「カナリア様、お手数お掛けします」


 1日に最低2回は見れる恒例行事と化している。3人を相手するのはカナリアだと、珍しくカナリア自ら手を挙げた。


「いいえ、カナリアが好きでやっているだけですので」


 ユーリとユナをお世話するカナリアは、満面な笑顔になる。まるで、末っ子の弟や妹を見守る姉みたいな雰囲気だ。


「カナリア姉ちゃん、俺これが良い」

蝦餃ハーガオ、海老の蒸し餃子ですね」

「私はこれ」

「黄金炒飯、卵のみのシンプルな炒飯になります」

「そうね、海老粥にしようかしら。あれから粥にハマってしまいまして」


 3人の料理が決まった。ユーリは餃子、ユナは炒飯、ユカリは中華粥で、毎回違う味を試している。


 厨房内


 フェイフェイが【見えざる手(ゴッドハンド)】で調理過程を同時に進める。


 タケノコを、お湯でゆがき臭み取りをし、微塵切りにする。

 豚の背脂をお湯で温め、ほぐれたらキッチンペーパーで拭き取り微塵切り。

 海老のハラワタを取り除き微塵切りにし、塩・グラニュー糖・タケノコ・豚の背脂・卵白・胡椒・ごま油を良く混ぜ合わせる。この際に空気抜きをする事。これにより、均等に熱が伝わり安くなる。

 そこに片栗粉を混ぜ合わせ、2時間程冷蔵庫に冷やし固める。【時短機】で2時間を2分に短縮させる。

 時間を操作する魔法は制御が難しい。魔導師であるフェイフェイは一応出来るが、こんなピンポイントな操作は無理。

 それに、なおさら魔道具にするなんて到底無理だ。だから、口に出さないが黄昏であるカイトを密かに尊敬している。


 これで具材の下拵えは終わった。


 次は皮作り。


 具材だけではなく、包む皮にもフェイフェイの拘りがある。フェイフェイ独自にブレンドした粉に熱湯を回し掛け、コネコネと捏ねて行く。

 耳たぶ位の固さになると、伸ばし棒で1枚1枚丁寧に、そして素早く丸く伸ばしていく。

 皮の厚さを見極めるのに1番難しい餃子は、蒸し餃子とフェイフェイは考える。

 焼き餃子のように薄くても水餃子のように厚くても駄目。蒸した際に半透明になり、且つ箸で持った際に破れぬ事が条件となる。


「こんなものかしら?」


 納得出来る皮が出来、次々と2時間冷蔵庫に冷やしていた具材を包んで行く。包む際のヒダの数は7~10がちょうど良いとされる。

 セイロに包んだ先から並べ、蓋を被せると、お湯を張った中華鍋にセットする。

 これで約8分蒸せば出来上がりだ。モクモクと湯気が立ち上り、海老の匂いが充満する。


「後はタレね」


 やはり蝦餃ハーガオに合うのは同じ海老から抽出した蝦油シャーユだろう。サラダ油に海老の風味を移した香味油だ。

 サラダ油に大量の海老の殻を揚げ、薄い褐色になるまで約10分ほど。こんがりと殻がカリカリと焦げていく。

 殻を上げると、そこには海老の風味が漂う油が爆誕していた。普段廃棄する箇所でも使い道はあるものだ。それが極端に出てる料理が中華といえよう。


 極上な蝦油シャーユにフェイフェイ特製ブレンドした調味料を加えると、蝦餃ハーガオに良く合うタレの完成だ。

 ただ、蝦餃ハーガオに合うために作ったため、それ以外の料理には合わない。が、蝦油シャーユなら海老を使った料理なら合いそうだ。

 ペロッとタレを味見すると、鼻腔から強烈な海老の風味が抜けていき、脳裏に海老が住んでいた環境が思い浮かんでくる。


 タレの味に堪能してると、蒸し上がる時間となった。セイロの蓋を開けると、湯気と共に海老の匂いが鼻腔を駆け巡る。

 餃子の皮が半透明となり具材の色が透けて見え、綺麗な模様となって浮かび上がり、まるで太陽の光が当たる海のようだ。


「綺麗に出来た」


 見ただけで分かる。箸で持ち上げても破けないだろう。【鑑定】で確認したから間違い無し。

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