表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の中華屋さん  作者: 鏡石 錬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/50

50食目、油淋鶏その2

 下味を漬けた鶏肉をトングで持ち、皮が縮むまでお湯を掛ける。こうする事で、皮がパリっと仕上がりやすくなる。

 皮が縮んだら、キッチンペーパーで水気を拭き取りハケでお酢を全面に塗る。

 お酢を塗ったら、パッドに移し冷蔵庫で1時間程乾かすところだが、【時短機】で1分に短縮。


 揚げる前にタレ作り。長ネギ1/4本を微塵切り、生姜一欠片を微塵切り、ニンニク1/2片を擦り降ろし、醤油大匙2、お酒大匙2、砂糖大匙2、胡麻油大匙1を掻き混ぜてタレは完成。



 鶏の脂で取った鶏油チーユで揚げる。鶏なら鶏で取った油の方が良く合う。

 それに市販よりも自家製の方が成分を調節出来、料理によって変化をつけられるが、手間暇時間が掛かるので、そこは人の好みだ。

 

「揚げる」


 ガウンが鶏油の中に鶏肉を滑らせるように入れた瞬間に香ばしい匂いと音が充満する。


 ジュワジュワ


 鶏肉が鶏油の中で音を響かせながら皮をカリカリに、中はジューシーに肉汁を閉じ込めながら揚げる。

 八割程、火が通ったら鍋の網に上げ、お玉で油を回し掛ける程10分で黄金色に皮がパリッとなったら食べ易い大きさに切り盛り付け。


 最後にタレを回し掛けて完成だ。カリカリに揚がった皮に掛かり、ジュワジュワといっている。


「出来た」

「はいネ」


 レンメイが油淋鶏ゆーりんちーをセシリーがいる席へ運ぶ。


「お待たせしたネ。油淋鶏ゆーりんちーヨ」

「これが油淋鶏ゆーりんちー


 メニューの説明では鶏肉を揚げた料理だと書かれていた。一般的に鶏肉は卵が産めなくなった年老いた老鶏しか出回らないのが常識。

 若くて柔らかい鶏肉は、貴族御用達の店が降ろされ、先ず一般庶民の口には入らない。正確には、お金さえ払えれば、貴族御用達のドレスコードが必要な高級料理店なら食えるチャンスはある。


 でも、この油淋鶏ゆーりんちーは違う気がする。揚げる時に使った油の匂いだろう。その匂いだけで鼻腔を擽り、脳天に直接『美味い』と響く感じる。

 1回だけ若鶏のステーキを食べた事があるが、その時の匂いと段違いに油淋鶏ゆーりんちーの方がある。


「いただきます」


 ステーキとは違い、1切れ1切れ切ってある。食べ易い。口に入れると、油の匂いが際立って分かる。

 鶏肉も柔らかく、けして老鶏ではない美味しさ。皮はパリッと中はジューシーに、料理法でここまで違うのか。

 ステーキの時は、もっと硬かった。筋張ったというか焼き過ぎと言った方が正しい。

 この油淋鶏ゆーりんちーを目の前にすると、あのステーキはクズ肉に成り下がる。


 それに油ぽさが、タレの酸味とネギの辛味によって中和され、上手い事に匂いだけを残し、味だけじゃなく匂いまでも楽しませてくれる。


「あっ無くなっちゃった」


 全然足りない。食べてみて分かった。これにはエールが合うと。今日は久し振りの休日。飲んでも構わないだろう。


「すみません。同じのを1皿とエールを」

油淋鶏ゆーりんちーと生ですね」


 ここでは、エールを生と言うのか。呼び名は、場所が変われば変化する物は多い。


「お待たせしました。油淋鶏ゆーりんちーと生です」


 注文してから5分も経っていない。生なら兎も角、油淋鶏ゆーりんちーを出すのが速過ぎる気がする。

 高級料理店でも同じ料理を頼む時でも同じ時間か、それ以上は掛かるものだ。


 だけど、気になるが今は目の前の料理に集中する。


「食べてから、ゴクッと流し込む」


 プハァ、想像以上に合う。普段は仕事柄、清楚を装っているが、この2つを目の前にすると、その清楚が崩れてしまう。


「くぅー、堪らないわ。エール…………じゃなくて、生ね。冷やすと、ここまで美味くなるなんて」


 今まで飲んだエールは、もう飲めない。あんなの泥水と等しい。

 それに、このグラスも見事な物だ。ここまで均等な厚さで作るなんて、これ程のガラス職人は古都にはもちろん、王都でも見つかるかどうか怪しい。


「氷以外の方法で冷やす方法…………魔道具があれば売れそうね」


 エールだけじゃなく、食べ物全般にいえることだ。冷やせば、保存が効くし長持ちする。それは昔から分かっていたが、なにせ氷が高い。

 貴族や王族でも毎回氷を使うのは不可能に近い。このエールを、どうやって冷やしているのか知りたい。

 だけど、教えてくれないだろう。メニューでの値段は、常温のそれと変わらない。これ程の技術は秘匿されるべきだ。


「カイト様なら、何か素敵な案があったりしないかしら?」


 今度、聞いて見る事にしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ