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異世界の中華屋さん  作者: 鏡石 錬


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45/50

45食目、白菜キムチ

「ここがクロウぱいせんとカイトきゅんがオススメしてたお店ねぇ」


 中華大衆食堂「悠」を眺めてる1人の女性がいた。緑色の髪に緑の瞳で、この世界には場違いであるギャルな服装をしている。ただし、緑1色である。

 だが、意外にと目立ちはしない。場違いであれど、似たような服装は多々ある。例えば、女性魔法使いで奇抜な服装を着てる者も多い。


 そんな奇抜な服装を着てる彼女は、実は8体いる龍の王の一角である緑龍王アースその人である。

 彼女は、黒龍王クロウと同じく偏食家の1人。クロウが激辛好きに対して、アースは野菜好きなのである。


 チリンチリーン


「いらっしゃいませ。おひとり様ですか?」

「1人よ」

「席へご案内致します」


 カパネラがアースを席へ案内する。オシボリとお冷、メニューを渡し、お辞儀をしてカパネラは後にする。


「これがカイトきゅんの世界の料理なのねぇ」


 写真がないアークグラウンドで、メニューに貼ってある料理の写真がアースには新鮮に映り、目をキラキラと輝かせている。


「これなんかクロウぱいせんが好きそうな激辛に見えるわぁ。でも、そこまで辛そうに思えないわぁ」


 アースの目端に映ったのは、真っ赤に染まった白菜のキムチだ。一見、辛そうに見えるがアースの直感で、そこまで辛くないんじゃないかと判断した。


「確か、このボタンを押すんだよね?」


 ピンポーン


 錬金術師の最上位職である黄昏に唯一選ばれたカイトが作ったとされる魔道具であるボタン。

 対となる受信機に席の番号が送信され、それを確認したホールを担当してるカパネラ・カナリア・レンメイ・スンメイの誰かが客の元へ赴く仕組み。


「お待たせしました。注文は何でしょうか?」

「この白菜のキムチをお願いねぇ。それと、赤ワインをお願い」

「畏まりました」


 中国料理ならワインは出ないが、ここは中華大衆食堂。多少の融通は聞く。中国酒の他にワイン・ビール・日本酒その他の外国の酒なんか要望があれば用意する。


「白菜のキムチと赤ワイン入りました」

「はいよ」


 白菜のキムチを入れてキムチは、ツボに3ヶ月漬けていた物を切り分け盛り付けるだけなので、そんなに時間は掛からない。

 本場の韓国や中国以外では勘違いされやすいが、ただ単に野菜を唐辛子で調合した漬け汁に漬けて置くだけと。

 それは間違いで、唐辛子も大事だが、キムチは発酵食品。意外にと魚介類と他の野菜を多く練り込む事で、辛さの他に複雑で豊かな味わいが生まれる。


 オキアミの塩辛、小魚の塩辛、カニの塩辛、黒ごま、白ゴマ、クルミ、松の実、ニンニク、リンゴ、ナシ、ワケギ、昆布、生牡蠣、アワビなどを唐辛子と一緒に混ぜ合わせた物を、白菜の葉1枚1枚に念入りに根元から擦り込み1株出来たら、ツボに入れ3ヶ月間発酵させる。

 乳酸発酵の旨みと魚介の旨みの相乗効果で、タダ唐辛子だけで漬けた物とは比べるのがバカらしい程に旨く仕上がる。


「白菜のキムチあがったよ」

「はーい」


 レンメイが、白菜のキムチが乗った小皿とワイングラスに赤ワインのビンを持ち、アースのテーブルへと運んだ。


「お待たせしましたのよ」


 ゴトっと白菜のキムチをアーマーの目の前に置き、ワイングラスに赤ワインをドボドボと注ぐ。


「白菜のキムチと赤ワインでございます」

「これがキムチ?」


 見事に赤く染まってる白菜に戸惑うアース。赤い野菜はトマトやビーツに赤ピーマンなどがあるけれど、どの赤とも似ているようで違う。

 匂いも辛さから来る独特なツーンとした刺激臭がして初見だと顔を顰めてしまう。だが、何故だろう?直感で美味しいはずだと思ってしまう。


「頂きます」


 パクっ………もぐもぐ


「うまっ!確かに辛いけど、物凄く辛いわけじゃないわぁ。白菜だけじゃなくて、何だろ?昔、青龍王ルカちゃんに食わされた魚や貝のような味がするわぁ」


 だけど、それだけじゃない。複数の木の実や果物も混じってるようだ。複雑に絡み合って、アースには食材全部は分からない。

 分からないが、美味なのは確かだ。この程度の辛さなら食べれる。まぁクロウぱいせんには物足りないと思うが。


 パクっ…………もぐもぐ


「無くなってしまったわぁ」


 あの程度では全然足りない。今は人間の姿をしてるが、元の姿は龍だ。全然龍の腹の足しにはならない。

 

 ピンポーン


「はーい」

「同じのを山盛りでお願いするわぁ」

「畏まりました」


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