36食目、佛跳牆
「キッヒヒヒ、ウワサになってる中華大衆食堂かね。カイトがススめていたが」
如何にも怪しいローブを着用してる老婆が、悠真の店を見上げてる。看板の文字は読めないが、熟練な錬金術師は【鑑定】で未知な文字を読めるという。
この老婆も熟練な錬金術師の1人であり、錬金術師ギルドのギルドマスターを務める人物の1人である。
「普段外食しない儂にも美味しく食べれると言っていたが…………蛇が出るか鬼が出るか」
何処の料理屋でも油ぽいものが多く、この年になると油ぽいものは寄せ付けなくなる。
だから、老婆は普段自分で料理を作る。錬金術を応用すれば、料理は出来るから外食する必要はないのだが、どうしてもとカイトに押し切られた形である。
「それにしても扉にガラスを使うとはのぉ」
職人柄というべきか職人病というべきか、先ずは扉に填められてるガラス板に目が行く。
不純物が一切ない透明度が高く、均等な厚さに延ばされされている。一流なガラス職人でも中々作れない。
そのガラスを惜しげもなく扉に使うとは、何処かの貴族のボンボンが気紛れで始めた店だと思いきや、話を聞くとそうじゃないらしい。
そんな料理屋が出来たのは、まだ一年も経ってないと聞く。それでいて、瞬く間に繁盛店になったらしい。
「キッヒヒヒヒ、どんな料理が出るか楽しみじゃわい」
ガラガラガラガラ
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
「あぁそうだよ」
「では、お席にご案内致します」
ふむ、見た事のない服装。成る程、最初は物珍しさで客を釣る作戦か。それに男共が好きそうな服装だ。今の儂には出せない身体のラインを強調していて、老婆の儂でも目がいってしまう。
「こちらへどうぞ。メニューになります。文字は読めますか?」
「問題ないよ」
「こちらお冷となっております」
お水が入ったグラスが頼んでないが出て来た。
「頼んでいないよ」
「こちらサービスとなっております」
サービス?お水がサービスだと?!つまり、タダという事か!お水を恐る恐る飲むと美味しい。
「お決まりになりましたら、こちらのボタンを押して下さいませ」
これは魔道具か?他の料理屋では見たことのない。食べる料理が決まったら、これを押せば良いと言っていたが?
それはさて置き、食べる料理を決めてしまおう。メニューとやらを開くと、そこにはカラフルな絵と料理名に説明書が記載されている。
「これは、何処かの高名な画家に書いて貰ったのか?」
それにしてはリアル過ぎる気がする。おぅ、いかんいかん。料理を選ばなければ…………これは?
「これにするかね。これを押すんだったな」
ポチッ
ピンポーン、音がなると迷いなく儂の席に案内してくれたのとは違う女中が颯爽と来た。
「お決まりでしょうか?」
「これを頼むかね」
「こちらは五人前となっており1時間程頂きますが、宜しいでしょうか?食べ切れない場合はお持ち帰りも可能となっております」
「それで構わないよ」
「畏まりました」
〜厨房〜
「佛跳牆を頂きました」
「了解だ」
佛跳牆は、悠真が作る。中華の中でもトップレベルに高級なスープになる。有名なフカヒレやアワビなど目がない程に高い。
その美味さから断食中の僧侶が塀を飛び越えて食べに来るとか、死者をも蘇させる程の美味さとかの逸話がある。
それもそのはず、高級な乾物を十数種類も入れて作るスープなのだから不味いはずがない。
ただし、店によって作り方は様々。安いものがあれば、俺の店のように高級な乾物をふんだんに使うところもある。
「先ずは乾物を水で戻す」
使う乾物は、魚翅・海参・椎茸・乾鮑・乾貝・燕窩・ 蝦米・木耳・竹蓀をふんだんに使う。
乾物を水に戻してる間に下処理を行う。
里芋の皮を剥き200℃の油でキツネ色になるまで揚げる。豚バラ肉を食べやすい大きさに切り、同じく揚げる。茹でたウズラのタマゴを卵と小麦粉をまぶして揚げる。
筍・木耳を糸状に切り、白菜はぶつ切りで熱湯を掛けた後、氷水で冷やす。こうする事で、シャキシャキ感が失われない。




