35食目、三聴
チロチロ
「ココがワレにもハイレルミセか?」
人間を含めた種族の中には魔物の血を色濃く受け継いた者もいる。その代表例として蜥蜴人族がいる。
見た目は、言葉や知能を有してる以外だと2足歩行の大きなトカゲだ。国によるが、蜥蜴人族みたいに魔物の血が濃い種族の入国を禁止しており、それに加え差別が横行してる国がある。
だが、エリュン王国は、どんな種族でも入国出来る国である。その反面、差別や奴隷を完璧には無くなってない。その影響で、入れないお店が少なからずある。
このオレ、蜥蜴人族のスクリューズも少なからず過去に差別を受けたり、奴隷として捕まる寸前であった事がある。
だが、冒険者として抗い続ける事、早十年でAランクまで上がった。多少差別が受けるが、最早ほぼ差別や奴隷とは無縁の地位まで登り詰めた訳だ。
チリーン
「いらっしゃいませ」
「コシツでタノム」
「個室の代金も頂きますが」
「カマワナイ」
「はーい、ご案内致します」
今までに見た事ない服装のオナゴに案内される。ここら辺で、こういう服装が流行ってるのか?
まぁ他の種族が考え付く事は理解し難い。でも、ワレも男だ。こういう服装に興奮しないと言うとウソになる。
「こちらメニューになりますりご注文がお決まりましたら、こちらのボタンを押して下さいませ。では、ごゆっくり」
うん、良い部屋だ。騒々しかったテーブル席やカウンター席とは違い静かだ。色んな種族が乱雑しており、そちらでも良かったが、ワレにはまだ荷が重い。
「ナニにスルカ?」
メニューなるものを見渡すと、絵付きで説明文も書いており親切設計になっている。どれも美味しそうに見えるが、ワレが一層目を引いた料理がこれだ。
「コレをオスノダッタナ」
暫くすると、案内された女給が注文を取りに来た。他の料理屋では先ずない呼び方だ。態々呼びに行かなくても良いとは便利である。
「ワレはコレニスル。アトは金門高粱酒にスル」
指を差して注文をする。写真入りだから分かり易い。それと、酒には目がない。
「三聴と金門高粱酒ですね」
スクリューズは知らないが、三聴を含むグロテスクな料理は個室でなければ、ご注文が出来ない。何故なら種族によっては、それらの料理を見ただけで不快に思ってしまうからだ。
「三聴と金門高粱酒を頂きました」
三聴は料理というより食材そのもので食べ方が名前の由来となっている。
本来なら竹鼠の産まれたての赤ちゃんをタレに漬けて生きたまま食べる。所謂、踊り食いという食べ方だ。
箸で掴む時・タレに就ける時・歯で噛む時に鳴き声が響く事からつけられた。
だが、竹鼠は手に入らない。代用品として砂鼠という魔物の赤ちゃんを使う。だがこれも中々見つけ難く、その捕獲の難易度からAランク寄りのBランクという難易度になっている。
しかし、黄昏であるカイトが養殖しており、提供的に仕入れてくれるから助かっている。
毛がまだ生えておらず、本当に産まれたてではないと使えない。鼠というからには成長が早く直ぐに骨が固くなってしまうからだ。味は、ウサギと似てるという。
これに漬けるタレは、甜麺醤・特製XO醤に微塵切りにした唐辛子を入れ、ゴマを少々入れて完成。
「お待たせ致しました。三聴と金門高粱酒でございます」
「マッテタ」
三聴らしき器には蓋を被せてある。微かに中で動いてる音が響いてる。
「三聴は、このタレに漬けてお召上がりください。金門高粱酒は、酒精が強いので、こちらのグラスで少しずつお飲みくださいませ。では、失礼致します」
三聴が入ってる器の蓋を開けると、案の定蠢いている。人間から見たら吐きそうな光景。だが、スクリューズの視線から見たら美味しそうにしか写っていない。
「イタダコウ」
箸で掴むと『チューチュー』と鳴き、タレに漬けて二度目の『チューチュー』、そして歯で噛み締めての三度目の『チューチュー』と鳴り響く。
「オイシイ」
タレが生臭さを消して食感も良い。骨が柔らかいから全て食べられる。それに他の種族はどうか知らないが、この鳴き声が心地良い。
そして、飲み込んだ時にこの酒をクイッと飲むのが格別だ。確かに酒精は強いが実に良く合う。
ポリポリ、クイッとゴクン。
つい食べる手が止まらない。だが、手が止まった。もう器の中身は空になっていた。ワレは、また同じものを注文するためにボタンを押した。




