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33食目、東坡肉

「ここが兄貴が絶賛してた中華大衆食堂「悠」とやらか」


 俺は、このエクスドを含めた領地、ガイウス領を任されてる領主:アイン・ガイウス。

 かのエリュン王国国王:オリバー王の実の弟なのだ。次男という事もあり、長男であるオリバー王が国王に就いた訳だ。

 その代わりに次男である俺は王都隣に位置するガイウス領の領主を任されてる。

 その俺が領主内にあるエクスドにとある飯屋が流行ってるとか貴族内でも度々名前を聞く。

 俺は、そこまで食事に関心を持てなかったが、俺の兄貴が絶賛しては自慢してくるのだ。これは是非行かねばとなるだろう。


「ふむ、庶民の店の扉にガラスだと?」


 それも透明度が高い。庶民の家の扉は大抵、全部が木製だ。ガラスは多少窓に使うだけで、それも透明度は低い。

 しかし、この店のガラスは貴族が使ってもおかしくない。それに中から灯りが漏れてくる。灯りを点灯し続けるには油が必須。その油もタダではない。

 ただし、魔道具による灯りという可能性もあるが、魔道具は高価だ。一般市民が手に入るものではない。


「入ってみるか」


 入ってみれば分かる事だ。


「いらっしゃいませ。お一人様でしょうか?」

「そうだ。個室はあるかね?」

「えぇ料金を頂きますがご用意出来ます」

「なら、個室で頼む」

「はーい、1名様ご案内」


 兄貴から事前に聞いていた。貴族や商人などは個室を使うものだと。成る程、見渡せば色んな種族が、ごった返している。静かな食事が常な貴族なら個室を選ぶのも納得出来る。


「こちらの部屋になります。こちらがメニューです。ごゆっくりどうぞ」

「うむ、ごくろう」


 メニューを開くと、どれも見たり聞いた事のない料理ばかりだ。それに、この絵がリアルで態々高名な画家にでも描かせたのか気になる。


「うん、これが良いな。これを押せば良いのか?」


 チャリーン


「はーい、ただいま。こちらお冷になります。ご注文をどうぞ」

「この東坡肉トンポーロを頼む」

「お時間を1時間頂きますが、宜しいでしょうか?」

「1時間か…………大丈夫だ」

「かしこまりました」


 ふむ、態々時間を伝えるなんて中々出来る事ではない。大抵の料理人は大雑把なところがあるから、注文を忘れているんじゃないだろうかと感じてしまう程に遅い事がある。

 家で雇ってる料理人も時間にルーズな時がある。だが、時間を知る手段は最近手に入れた時計となる魔道具と太陽の登り沈みの角度を確認するしかない。時計は私の部屋しかない。

 それとアインは、さっき出されたグラスを見詰め水を飲み干す。


「水も美味しい。これを無料で提供するとは、この店はどうなってる?」


 〜厨房〜


東坡肉トンポーロ、しっかり作る」


 手間を掛けないと、出来の悪い豚肉の煮込みとなってしまう。第一にやって置く事、それは下処理だ。


「豚の三枚肉の毛を剃る」


 肉も大事。ちゃんと脂が付いた三枚肉を使う。肉の毛をカミソリで剃ると、剃り残した毛が無いようにコンロの炎で軽く炙る。


「茹でる」


 寸胴鍋に貯めた水が沸騰したら三枚肉を入れ、軽く茹でる。こうする事で、肉の中までタレが染み渡りやすくなる。


「油で表面を揚げる」


 焼く前に、表面に酒と醤油を染み込ませる。そして、油を引いた中華鍋で揚げる。中まで火を通す訳ではない。表面にコンガリと焼き目と香りをつける程度で引き上げる。

 その肉を脂身を下にして深皿に移し、醤油・紹興酒・砂糖・オイスターソースを入れ、肉の上から八角スターアニス花椒ホアジャオ・ニンニクを入れる。この時に炭酸水を一緒に入れると蒸す時間が短縮になる。

 本来なら蒸す時間が3時間のところ、炭酸水を入れる事で1時間までで良くなる。


「後は待つだけ」


 深皿と共に蒸し器に入れ、蒸し挙がるのを待つだけ。待ってる間が勿体無いので、その間に他の注文を片付ける。


 1時間後

「うん、出来た」


 蒸し器の蓋を開けると、湯気と共に香辛料とタレを吸った三枚肉が目の前に現れた。

 盛り付けで食いやすい大きさに切り分け、肉の味が滲み出たスープを回し掛け提供する。


「お待たせ致しました。東坡肉トンポーロでございます」

「これが東坡肉トンポーロとやらか」


 食べる前から食欲が唆る匂いが鼻につき、ゴクンとノドを鳴らす。貴族であり領主であるアインが食べる前には毒味役という役職に就いてる者が先に毒が入ってないか味見する。

 それ故に、アインに料理が届く頃には大抵冷めてしまい、いつも味気無いと感じていた。

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