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31食目、水餃子

 どんな餃子にするかフェイフェイは悩んでいた。具材を変えるか?皮を変えるか?調理法を変えるか?

 バリエーションが豊富な料理は困り物である。ユウマに頼まれたからには成功させるしか選択肢はない。


「アレに決めた」


 先ずは皮作りから。


 強力粉と薄力粉を同じ分量に入れたボールにお湯を入れる。コネコネと捏ねて、パン生地みたく寝かせるところだが、フェイフェイは魔法使いだ。

 魔法で発酵をやる事で、時間短縮が可能だ。1時間のところ、ほんの数秒で済む。


「うん、完璧」


 水分が全体に行き渡り、モチモチな触感を感じる。このモチモチ触感が水餃子には大事な要素となる。

 後は麺棒で丸く成形する。この時に、焼餃子より厚くする事。そうする事で、モチモチ感は失われずに具材が飛び出さず密閉出来る。


 具材は何にしよう?


 白菜・ニラを細かく微塵切りにし、エビをミンチ状にすり潰す。それをボールで挽き肉と合わせ、ごま油を繋ぎとして回し掛けタネが出来た。

 茹でた際に挽き肉の肉汁とエビの出汁が融合して何とも言えない風味と美味しさが爆発するはず。


 出来たタネを手作りの皮に隙間がないように包み込む。皮が分厚い分、タネを包み込むのは焼餃子より難しい。

 茹でてる間に皮が剥がれないよう、しっかりと水で接着させる必要がある。具材が飛び出たら見た目が悪くなるし、台無しになる。


「こんなものかな」


 包み終わった。焼餃子なら、この後焼いてから蒸し焼きにするが、水餃子はスープで煮る。水だけで煮ては味気ない。

 そこで選んだスープは、鶏ガラスープだ。ラーメンにも使ってる鶏ガラと野菜の切れ端を使う。

 店長が鶏ガラを仕入れてるが、何処で仕入れてるのか誰も知らない。


「凄い透き通ってる」


 ここまで黄金色に透き通ってるスープはフェイは知らない。透き通ってるだけで良いなら、薄い塩のスープがあるが、アレは味が薄過ぎて本当に貧乏な者が食べるもので、卑しくて料理とはいえない代物。


 その一方、鶏ガラスープは黄金に透き通ってるのに味が濃厚で、まるで鶏肉そのものを噛んでるような感覚に陥る。

 これだけでも美味しいスープに、これもまた店長が何処で手に入れたのか?醤油という調味料を入れ、贅沢に香辛料を入れて味を整える。


 香辛料は、定期的に来るカイトという錬金術師から仕入れて来る。こんな上等な香辛料は中々手に入らないと断言出来る。もし買うとしたら余裕で1kg金貨十数枚はとぶ。

 そんな高級品を最低職業とされる錬金術師が手に入れられるとは到底思えない。

 何処かで盗んだのか?それとも錬金術で作製したのか?それは分からないが、フェイの主であるユウマが盗品を使うはずもないと信用はしている。


「包んだ餃子を入れて」


 餃子からも肉とエビのエキスが染みて、それが鶏ガラスープと混ざり合い、複雑な香りを作り出してる。


「出来たのです」


 スープと一緒に餃子を容器に盛り付けする。最後に刻みネギとゴマを一掴み振り掛ければ完成だ。


「お待たせしました。ユーリ様、水餃子でございます」

「早く早く」

「あらあら、そんなに慌てなくても逃げないわよ」


 カナリアが運び、ユーリの前に置く。まだ湯気が立っており、匂いだけで食欲が唆られる。


「こちらのポン酢をお漬けになられ、召し上がって下さいませ」

「これに漬けるのか」


 スープから水餃子を取り上げ、ポン酢にチョンチョンと漬けて口に運ぶ。一口では入り切らず、半分に歯で噛み千切ると中から肉汁とエビの出汁が溢れる。


「モチモチで中からジュワーってなる」


 それにポン酢というタレに漬けるとサッパリして美味しい。焼いた方も好きだが、スープに入れても美味しいのか。


 ゴクン

「うーーまぁぁい」


 このスープも極上に美味しい。こんなの飲んだら他のものが食べれなくなる。色々絡み合って何のスープなのか?検討もつかない。


「お兄ちゃん」

「ユナ、これはお兄ちゃんのだぞ」

「ユナの分けてあげるから」

「交換するか」

「うんっ!」


 それぞれ小皿に盛り付け、お互いに分け与えた。一口二口程度しか量がないが、食べてみたくて仕方なかった。

 水餃子も美味しいが、この炒飯も美味しい。もっと食べたいが、ユナの皿には既に炒飯は無かった。残りの水餃子とスープを飲み干して、ご馳走さまをするのであった。


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