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異世界の中華屋さん  作者: 鏡石 錬


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27/50

27食目、チャーシュー麺その2

 チャーシュー1枚を食べた事により隙間が出来た。その隙間から金色な麺と透き通ってるスープが見える。


「次はスープから」


 箸からレンゲに持ち替え、ゴクンと飲んだ。ラーメンの出来はスープを見れば大抵の事は見て取れる。一番時間とお金を掛けて作るのがスープだから。

 スープがダメなら麺や他の材料もダメにしてしまう。でも、あんなにチャーシューが、トロトロで美味しいなら期待は出来る。


 ズーッ


「ゴクン……………これは!」


 何と素晴らしい。リオウだから分かる。大きく分けて2種のスープをブレンドしている。1つ目は、鶏ガラから取ったスープ。


 鶏ガラから丁寧に血管を取り除き下処理をする。下処理をしないとするのでは、匂いや味に天と地の差がついてしまう。

 下処理済の鶏ガラ、長ねぎの緑の部分、生姜を寸胴鍋に入れ水で煮込む。およそ3時間程煮込み続け、その間にアクを取り除き続ける。アクを完璧に取り除いてこそ、この透き通ったスープとなる。


 もう一つは、様々な野菜類を煮込んで作ったコンソメスープ。それもダブルコンソメと呼ばれるもの。一回目で作ったコンソメで、更にコンソメを作る。倍の時間が掛かるコンソメである。

 そのままでも美味しいが、鶏ガラスープと合わすと言葉では言い表せない程に美味しくなるらしいユウマのダブルコンソメ。


 料理神であるリオウですら、ダブルコンソメに使われてる具材が何なのか言い当てる事は不可能に近い。分かるのは、玉ねぎ、ニンジン、ジャガイモ、セロリくらいか。

 他にも使われてるのが理解出来るくらいで、何が使用されてるのか分からない。

 それ程に複雑で、スープなのに飲むのではなく、まるで噛んで食してるかのようだ。

 そのダブルスープに合わさる醤油タレが、味の深みに誘ってくれる。魚醤ならここまでの旨味にはならない。大豆で作った醤油だからこその旨味だ。


「さて、メインの麺はどうだ」


 ズズーッ


 何の躊躇いもなく麺を啜った。本来ならお行儀が悪い作法だが、ここは中華大衆食堂「悠」というお店だ。

 地球から召喚されたユウマの店なら、むしろ麺を啜る行為は逆に作法というものだ。

 地球で勉強した甲斐があったものだ。向こうの神にバレないよう神気を抑えるのに苦労はしたが、そんな事は些細な事だ。


 そして、肝心の麺の味の方はというと、至福の一時である。最早寸分違わずの茹で加減と小麦粉に加える冠水の絶妙な量で全然冠水臭くない。素晴らしい麺だ。

 それと、麺はストレート麺にしてある。ちぢれ麺の方がスープを絡むと思いがちだが、そうではない。

 ストレート麺、ピーンと張った麺の方がスープに良く絡み合う。ちぢれ麺よりストレート麺を使ってるラーメン店の方が美味しい店の可能性が高い。


 ズズーッ


 ヤバい、一回啜ると止められない。たまにチャーシューを口に運び、残りの麺と具材を探す。


 パリポリ 


 良い塩加減で食感も良いメンマ。これがタケノコで出来てるなんて、教えて貰わないと分からない。

 繊維質でラーメンには欠かせない裏方的な具材だ。適度な食感で少しの箸休めに、ちょうど良い。


 それに忘れていけないのが、ナルトだ。この渦巻き模様が何とも可愛らしい。

 パクッと口に放り込むと、スープが染み込んでおり、口の中に流れ込む。これが元々魚だったとは信じられない。


 残りのチャーシューを食べ進めると、生では敬遠されがちな卵が顔を覗かせた。

 当然ながら、茹でてある茹で卵だ。たが、白くなく濃い茶色な色合いをしてる。


「これが噂に聞く味付け卵」


 色合いからするに、チャーシューと一緒のタレで煮込んでるのだろう。チャーシューが、あれだけトロトロでウマウマだったんだ。

 きっと、この味受け卵も美味しいに違いない。


 パクっ


「うぅぅぅぅまぁぁぁぁ」


 これは不意打ちだ。白身が固まっていたから、中身の黄身まで固まってると勝手に想像していた。

 だが、現実は違う。これは半熟というべきものだ。チャーシューとは、また違うベクトルのトロトロ加減で口の中に広がる。

 これを食べたら他の卵なんて食べれなくなる。だから、この卵が1個しか入っていないのが堪らなく悔しい。もっと味わいながら食せば良かったぁ。


 悔いながらも残りのチャーシューを平らげ、ドンブリを持ち上げるとゴクゴクとスープを全部飲み干した。


「ふぅご馳走様でした」


 他の中華も試してみたいが、下界に降りて来る条件として神気を抑えなければならない。

 神気を抑えなければ、まだ食べれる。いっその事、全メニューを制覇出来る。

 でも、楽しみは取っとく事にする。そうすれば、神の仕事も捗るものだ。

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