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異世界の中華屋さん  作者: 鏡石 錬


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21/50

21食目、全鴨席その5

「これも美味だな」


 国王陛下は、オレンジジュースをいたく気に入ったようだ。王妃様や王女殿下二人も満面な笑みを浮かばせている。

 中世に近いこの世界では、砂糖は貴重品だ。その故、甘味はとてつもなく少ない。


「宜しければ、お帰りになさる際にお土産としてお持ち下さいませ」

「おぉ、良いのか?」

「はい、またご来店して貰えれば、当店も嬉しゅうございます」


 個室を使って貰えるお客様には、気に入った料理や飲み物があれば、お土産として持たせている。

 そうする事で、この店の事を通例真実とウソを取り混ぜたみたく、広めてくれたらと宣伝の意味を込めてる。


「次で最後の料理出ございます」


 ちょうど到着した。大皿に乗ってるのは、一番最初に出て来た北京ダックよりも3倍はあろうかという巨大北京ダックであった。


「これは!」

「なんという大きさなの?!」

「うわぁおおきい」


 壮観だが、驚きはあれど食べたいと言えば遠慮したい。お笑いや手品マジックで同じネタをやられても飽きられるように、まだ食べれるが同じ料理を出されても手が進まなくなる。


 ドーン

「では、ナイフを入れさせて頂きます」


 最初の北京ダックとは違い、皮を剥がさずにそのままテーブルの中央へ置いた。そして、悠真が北京ダックの中央付近をナイフで切れ込みを入れると、まるで魔法が起きたかのような出来事が起こった。


 ザクザク

「これが最後の料理となります。檸檬鶏レンモンカイ、唐揚げのレモンソース掛けでございます。たくさん食べられていたご様子なので、最後にはサッパリとしたものをご用意致しました」


 ナイフで切ったのは薄皮一枚だけで、外観だけ北京ダックで中身は山盛りの唐揚げが納まっていた。

 テレビで見た事ないだろうか?結婚式で見るウェディングケーキの代わりとして巨大焼売の中に普通サイズの焼売が入ってるヤツを見た事ないだろうか?


 まさにそれだ。


「まぁ切った中から、たくさん出て来ましたわ」

「ほぉ、これは驚きだ。素晴らしい」

「うわぁ面白くて楽しい」

「こんなの見た事ない。香りが、ここまで来るわ」


 驚愕してくれて作った甲斐があったものだ。驚きの演出という面あるが、香りを強める効果がある。

 皮の中で、香りが充満し、皮を切り裂くと一気に香りの爆弾のごとく、匂いが拡散される。

 料理を楽しむのは舌だけではない。目で色合いを楽しみ、鼻で匂いを楽しんでから、舌で味を楽しみ、歯で感触を楽しむ。

 世界に色んな料理があれど中華程に、ここまで料理を追求してる料理体系は中々ない。


「どうぞ、お召し上がり下さいませ」


 切り裂いた皮を撤去し、山盛りな檸檬鶏レンモンカイの全容が見えるようになる。

 一見、こんなにも多い揚げ物を見ると胸焼けを起こす者も多いだろうが食べて見ると、あら不思議。

 見た目に反して全然油ぽくなくしつこくない。むしろ、檸檬の酸味が油を中和して、サッパリとするではないか!


「おほ、これはいくらでも食べられるようだ」

「酸っぱいけど、身体に染み渡るようね」

「酸っぱい。でも、美味しい」

「たくさん食べたのに、お腹が空いてきちゃった」


 ポーカーフェイスを極めてるが、悠真自身実は心底驚いてる。悠真自身、包んでお持ち帰りを推奨しようと頭の中では考えていた。

 だが、お持ち帰りを奨める前に山盛りの檸檬鶏レンモンカイが既に失くなる寸前であった。


「この檸檬鶏レンモンカイとやらをお代わり出来るか?これと同じ量で」

「はい、今直ぐにお持ち致します」


 あの量でお代わりをご所望された!急ぎ、厨房へ戻り大急ぎで作らなければ。

 中華料理に限らず、下準備・下処理をしっかりと行っておれば短時間で料理を提供する事が出来る。

 その上、一部の料理を除けば、中華は速度スピード命だ。豪快に炎を操り、数種類の料理を並行して作る事も珍しくない。


「お待たせ致しました」


 流石に皮の中に詰め込む作業は時間が掛かり過ぎる。そこで、大皿に乗るクローシュで蓋をし、提供サーブする。

 演出はないが、香りを幾らか閉じ込める作用がある。クローシュを開けた途端に、あの香りが再び舞い上がる。


「この香りを嗅ぐと、また腹が減るようだ」

「これ、ウチで作れないかしら」

料理長コックに、お願いしてみたらどうだ?」

「えぇ、そうね」


 この後、見事に完食し、城にお持ち帰り用として10名分程ご注文入ったのである。

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