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20食目、全鴨席その4

「お待たせ致しました。こちら麻辣鴨掌マーラーヤージャンでござきます」


 香辛料スパイスによって赤く染まった鴨掌ヤージャン。見た目以外は食欲を唆る香りと色合いに思わず手に取ってしまう。


「これは鳥の足か?」

「はい、正確には水掻きでございます」


 先ずは、その形を見詰め匂いを嗅ぐ。思わず手に取って見たが、見た目が見た目だ。口に運ぶのに躊躇してしまう。

 悠真でさえ、中華の道を選んでいなかったら一生扱う事はない食材だろう。


「どれ、頂こう」

「父様!」

「あなた!」

「父さま!」


 何も切り分けされてない北京ダックに憤慨しそうになった国王陛下だが、麻辣鴨掌マーラーヤージャンを躊躇なく口に運んだ。


 パクっ

「これは!歯応えがコリコリとして面白い。辛いがクセになる美味しさ。お前達も食べてみなさい」


 国王陛下に習って三人とも意を決して食べて見た。

 綺麗に整ってる料理よりもこういうグロテスクな食材を使った料理の方が美味しかったりする。


 パクパク

「辛いわね。でも、不思議な感覚だわ。辛いはずなのに手が止まらない」

「辛い。でも、美味しい。でも、辛い」


 パリポリ

「骨まで食べれて肉とは違った食感が面白い」


 軟骨じゃないから本来は骨は残す。だけど、ここは異世界。調理次第では骨まで食べれる程に柔らかくなるようだ。


「お気に召されたのは、こちらもどうぞ」


 次にテーブルへ並べられたのは、細長い何か。色味は似ている。匂いも香辛料スパイスぽい香りで、こちらも似ている。

 タダ違うのは形だけに見える。


「こちらは家鴨の首を同じく香辛料スパイスを用いて煮込んだものでございます。麻辣鴨頸マーラーヤーボーと言います」


 一見、赤いイモムシにも見えなくもないが、国王陛下を含め王妃様・王女殿下二人も平気のようだ。

 中華でも昆虫を使ったりする。悠真がこちらに転生してからは虫は見た事はない。

 だが、虫型の魔物モンスターを食用として用いる事はあるようだ。


「これは足よりも辛いが食いごたえがあるな。余はこちらの方が好みだ」

「これはアテナには早いかしら?」

「ハァハァ、か、辛い」


 モグモグ

「母さま、アテナは平気です。これ美味しいです」

「まぁメイラの方がダメでしたわね」

「くっ、私だって食えます。バクッ、か、辛い」


 端から見ても今にでも口から火を吹き出してしまうように唇が余計に真っ赤に染まり、ヒリヒリと痛そうだ。


「こちらをどうぞ。牛乳でございます。水よりも牛乳の方が辛さを和らげてくれます」

「ちょ、ちょうだい!」


 ゴクゴク

「あら、本当に辛くなくなったわ」


 一気に牛乳を飲み干したメイラ王女。だけど、辛さが消えた後も麻辣鴨頸マーラーヤーボーに手を付ける事はなかった。


「国王陛下、こちらをお試しを」


 クンクン

「これは酒精か?」

「はい、紹興酒の3年物でございます」


 日本でも有名な中国のお酒、紹興酒。ワインやブランデー等と同じく賞味期間がないお酒で、十数年寝かせると味わいが変わる酒の一種。


「そんなに保存して大丈夫なのか?!」


 こちらでは、むしろ酒を寝かせないのだろうか?アルコール度数が高い酒は、むしろ寝かせる事で味わいが変わって面白い。

 しかし、アルコール度数が低いビールやコンビニで売ってるワインや日本酒等は、寝かせる事に耐えられない。


「えぇ匂いを嗅いで貰い理解したと思いますが、酒精が強いのです。酒精が強いと寝かせる事で味わいが変化して行くのです」


 ゴクッ

「うむ、酒精は強い分ガツンと来るがフレッシュな味わいで、とてつもなく美味だ」

「あなた、妾にも」


 ごくん

「まぁ美味しい」

「アテナにも」

「アテナには早いわよ」

「代わりにオレンジジュースをご用意致しました」


 果物系の飲み物でも辛さを和らげてくれる。お酒を飲めない子供なら喜んでくれるはずだ。


 ゴクッ

「甘くて美味しい」


 ゴクゴク

 ぷはぁーっと一気に飲み干した。お代わりと指し示すように空のグラスを、こちらに差し向けて来た。トクトクとオレンジジュースを注ぐと、満足そうに口にする。


「余にもくれないか?」

「妾にも」

「ワタクシにも」


 見た事のない色をしている飲み物に気になり、全員がオレンジジュースを所望した。

 甘味と酸味が複雑に絡み合い、途中で口に運ぶ手が止まらずに全員が一気に飲み干した。

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