1話:初恋シンドローム
・1話:初恋シンドローム
俺は鷹月綾人。
今日から高校生だ。
急だが高校生になったら何したい?と聞かれたら大体の奴が『恋人作って、青春を楽しむ!』などと言う呆れる野郎がいるだろう。
ほんとに呆れる。高校で付き合えたとしても結局卒業したら別れる。
学生がする恋愛なんてしょうもない物だ。
だから俺は恋愛に関しては無関心だ。どうでもいいと思っている。
そんな事を考えながら歩いていたら、もう学校の近くだった。
この学校は私立霞ヶ浦高校だまあまあ偏差値高めの学校で良い学校だ。
今日から俺はこの学校に毎日通うのかあなんて考えていたら
「おはよう」と後ろから肩を叩かれながら声を掛けてきたのは俺の小学校からの親友の月宮蓮だった。
「おはよう、偶然だな」
「後ろから見たことあるやついたから綾人じゃね?って思って声掛けた」
「いや、間違えたらどうすんだよ」
「大丈夫しょ!仲良くしようぜうえーい的な感じで話せば」
「あーそれなら大丈夫だな」と言ったが内心では俺みたいな陰キャだったら絶対ついていけないだろ!!!
そんなことを思っていたら、蓮が思い出したかのように
「てか、クラスどうなるんだろうな同じクラスがいーよなー」と言ってきた。
「まじそれ、同じクラスがいいわ」
「うちも、れんちーと同じクラスがいーわー」
突然後ろから声を掛けてきたのは蓮の彼女の鈴宮夏希だ。
夏希と蓮は中学2年生から付き合っているお似合いカップルだ。
「おい、急に来るなよ。びっくりするだろ」
「びっくりさせる為にしたんだから当たり前でしょ?」と夏希はにへらと笑う。
「こいつ、会わないうちに前より性格悪くなりやがって」
「性格悪くないよ!?何言ってるの?!」
「まあまあ、いつもの事だろ許したれよ綾人」
「だよね!いつもの事だよー!」
「そういう所が性格悪いって言ってんだよ!」
「お前ら仲良いよな」
「「仲良くない!」」
「あ、ハモった」
言い返そうかと思ったが、色々と疲れたため失せてしまった。
夏希は蓮に頬を膨らませながら怒っている。
「てか、さっさとクラス確認しようぜ」と言いながら名前が書いてある紙を見ながら自分たちの名前を探していく。
「全然見つかんねー」と独り言を言っていたら横で夏希が子供みたいに飛び跳ねていた。
「あ!うちの名前あった!1-B組だって!蓮は見つかったー?」
「んー、あ、あった俺も1-B組だわ」
「マジ!?やっぱうちら運命の赤い糸で繋がっているんだよ!」
「だよなぁ、どする?結婚しちゃう??」
「えーどうしよっかなーえへへ」
「あのーお取り込み中申し訳ないんだけど、俺のまだ見つかってないから手伝ってくんね?」
「まだ見つけてないの?しょうがないなあ夏希様が見つけてあげる」
「はいはい、ありがとうございます」
うぜぇ、ただでさえウザイのにリア充重なってもっとウザイ
「綾人のあったぞ、俺らと同じクラスじゃん」と蓮が見つけてくれた。
「まじか!良かったわぁこれでぼっちは回避したわ」俺は安堵に包まれて飛び跳ねた。
「何飛び跳ねてんの?キモイんですけど」
「うっせぇ、さっきお前もやってただろうが」
「うちは女の子だからいいんですー」
「そんな屁理屈通ってたまるか」
「だから2人ともそんな仲良くしてないで早く教室に行こうぜ」
「「仲良くないってば!!」」
横で、むーとする夏希だが流石に疲れたのか、ささっと蓮の横へと走っていった。
「綾人、置いてくよー?」と言いながら舌を出してべーとしている。
子供かよと思い、笑った。
また新たなスタートがここから始まるのか、頑張るかぁ。そして俺は蓮達の所へと走った。
始業式も終わり、クラスの人達が仲良く話している。友達とか沢山作っているやついるんだろうなぁ。
あ、もちろん俺にも新しい友達いるからね??
なんてことを1人で脳内会話をしていたら前から蓮が来た。
「綾人ートイレいかねー?」
「いよー、ちょうど俺も行きたかった」
「改めて、めっちゃ綺麗だよな」
「それな、さすが私立って感じ」
手洗いは冷温の機能がついているまるでホテルのトイレみたいだ。
俺は濡れた手を拭くためにポケットからハンカチを取ろうとしたが中は何もなかった。
「やべ、ハンカチ忘れた、バッグの中かな」
「何やってんだよ、俺2つ持ってるから片方貸したるわ」
「まじありがと、洗って返すわ」
「おっけ、てかC組行かね?」
「ん?どうして??」
「なんかめっちゃ美少女いるらしくて見てみたくない?」
あーなるほどな、アニメとかでよくあるテンプレの流れか初日に人気出て男達が取り合う流れ
「俺は別にどっちでもいいんだけど、ついっていってあげるわ、その子の顔わかるん?」
「さっき、クラスの女子に見せてもらった」
「いや、見たならそれで十分やろ」
「綾人は分かってないなあ、実物見てから可愛いか可愛くないか判断するんだよ」
それは本当によく分からなかったが長く語られるのも面倒だから俺は適当に相槌を打った。
「うん、まぁとりま行こ行こ」
「てかさー綾人も彼女作ろうぜー?」
「なんでだよ、俺、恋愛に興味無いから」
「勿体ないな、綾人ちょっとはかっこいいのに」
「ちょっとは余計だこの野郎」
と蓮の頭にチョップを入れた。
くだらない話をしているとB組の廊下がやけに騒がしい。
周りからは「C組のあの美少女がB組の男子呼び出してるんだって」
「うそ、まじ?もう告白するのかな」
キャーなどとはやし立てている。
つーか、告白とかどうでもいいし、女子多すぎてどれが美少女なのかわかんねえよ。
とりあえず、近くにいると言うことがわかったので自分たちのクラスに戻ることにした人混みは嫌いだからな。
俺たちが教室に入った瞬間ずっと呼んでいただろうと思われる女の子が大声で「あの!皆さんがお話してる中すみませんけど!とり月君いますか!」と言った。それによりクラスの奴らや廊下でキャーキャー言ってた奴らが急に黙った。
「なあ、蓮俺たちのクラスにとり月ってやついたっけ?」
「いなかったはずだぞ、月がつく男は俺と綾人だけだ、少なくとも俺じゃないからお前行ってこい」
「えぇ…なんでだよ」
俺は困惑した。
「だって、○月ってつくやつお前しかいないだろ、俺だったら最初に月つくやろ」
不覚にも確かにと思ってしまった。
「わかった、とりあえず行ってみるわ」
「おう」
俺はその美少女と呼ばれる女の子の所まで行った。
行った途端周りのやつらが「うわ、陰キャかよ、これは告白じゃないなつまんな」などと愚痴を言っている。悪かったな陰キャでよ。
その女の子は綺麗な長い茶髪で、絵に描いたような美少女だった。
周りが美少女と呼ぶのも無理ない。
「あの、もしかして鷹月ですか?」
「え、これ鷹月って読むんですか???」
そう言いながら、美少女はハンカチを俺に差し出してきた。
「あ、そのハンカチ俺のだわ、ありがとう」
そういって俺はハンカチを受け取った。
「たかつきって読むの?」
俺は首を縦に振って頷いた。
「名前読み間違えてごめんなさい!」
美少女は頭を下げて謝ってきた。
耳が真っ赤になっている。
照れ屋なのかな、まじでアニメから出てきたヒロインかよ。
「い、いいよ、大丈夫だから頭あげて?」
まじで困るから上げてくれ!理解出来ていない周りのやつらの視線がやばいから!
「わかりました、あの、下の名前も教えてくれませんか?」
「鷹月綾人だよ」
「鷹月綾人君ね、私は紗倉美音」
「紗倉って言うのか、よろしく」
その時ちょうどHRのチャイムが鳴った。
「あ、教室戻らなきゃ」
紗倉はそういい教室へと走りだし、1度こちらを振り返り笑顔で
「鷹月君これからよろしくね!」と言った。
これからなんて来るのかなぁ、あんな美少女、陰キャみたいな俺には絶対合わないな。
なんだろう。さっきから胸の奥が痛い。
さっきの笑顔が脳裏から離れない。
そんな事を考えながら、蓮と夏希のもとへと歩いていき、高校から恋愛なんて無駄な時間だと思っていた俺が遂に言った。
「俺、恋してるかも」
10秒ぐらいだろうか、2人は俺の方をきょとんとした顔で見ている。
そしてようやく口が開いた。
「「は?」」