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「次、そこのウーマン、ウーマンの悩みは何ですか?カモンカモン、恥ずかしがらずに」

ウエバヤシが、若い1人の女性に尋ねる。周囲に彼女の知り合いらしき人間はいない。1人でこのセミナーに参加するくらいなのだから悩みは当たり前のようにあるだろう。


「さあさあ、ウーマン カモンカモン」

ウーマンもヒューマンだ。と心の中でつっこんだ男に対してウエバヤシにぞっこんの光一。大好きな女性芸能人の握手会に来ているような表情をしている。


「私は、欠点ばっかりなんです。顔もこうですから、他人に気持ち悪がられますし、このように枯れたような声で聞こえづらいなんて言われます。いい所がないんです」

「頭もよくないし、体力もない。体を壊しやすいし、人に優しくもない、長所って呼べるものがないんです」

女性の悩みは、男にも当てはまる。男も自分には長所がないと思っている。


「ソーリー、ウエバヤシには理解できなかった。ウーマンの悩みは結局何ですか?」

「理解ができませんでした、分かりやすくお願いします」


「長所です。 長所が欲しいです」

「何か、何でもいいから私に長所をください、私の長所って何ですか?」


「なるほど~どうだろう、ウエバヤシにはその悩み もう解決しているようにルック……そう、見えますけど、いや、そもそも悩みですらないかもしれません」


「では、一緒に考えてみましょうか?」

「人に優しくない、それは合ってますね。自分に優しくない人が他人に優しくなれるはずはないとウエバヤシは思います!」

「しかし、頭もよくないし、体力もないというのはどなた基準ですか?どなたがそう言ったんですか?どうでしょう、仮にウエバヤシが5000人のヒューマンを集め、学力テストを開いたら、ウーマンが最下位になるんですか?体力テストを開いたらウーマンが最下位になるんですか?」


「それは分かりませんけど、上位にはなれないことは分かってますよ」

「私なんて、どうせ、どうせ 分かってますよ」


「では、ウーマン、質問を1つ」

「パンはパンでも、イート出来ないけど、ミートを炒めることができるパンは何でしょう?」


「えっ?フライパン」

あまりにも馬鹿馬鹿しい問題と、途中に英語を挟んできたことが面白くて、男はつい、笑ってしまった。


「はい、25点 ウーマンはすでに25点手に入りました。4900人がこの問題に答えられなかったので、ウーマンは答えられた100人のうちの1人です、素晴らしい ウーマンは暫定1位タイです」


「こんな簡単な問題、誰でも分かるでしょう?」


「ノット……」

「ウーマンにとっては、誰にでもというのは間違っています、得意不得意はそれぞれにあります。簡単な問題に見える問題でも他のヒューマンにとっては難しい問題に見えたのでしょう」

「ウーマンの頭がよくないというのは嘘ですね。つまり欠点ではない。むしろ頭がいいという長所になりました。ウーマンは頭が悪いわけではありません」

「頭がよいという長所があるのにも関わらず、それを認めていないってことは更なる高みをウーマンは目指しているんですね、ナイスウーマン、ナイスウーマン、素晴らしいことだとウエバヤシは思います」

「小さいところでは満足しない、向上心がある。ウーマンの調書がまた見つかりました。向上心がある。胸を張っていいと思います。おめでとうございます おめでとうございます」


「ど、どうでしょう?……」

「私は、向上心があるなんて思ったことはなかったですけど」


「大丈夫です、ウエバヤシが長所だと認めます!」


「ところで ウーマン、ワーク 仕事は?」

「仕事はしてるしてない?どっちウーマン?」


「仕事はしています」

「私は、ファミリーレストランの調理スタッフとして働いてます。もう5年にもなるのにオーダーを聞き間違えたり、ご飯を炊くのを忘れてたりと、何かとミスが多いんです」


「なるほど、オッケー ウーマン」

「今のウーマンの話の中にも2つ長所をウエバヤシは見つけました」


「1つ目は、5年も継続して働いているなんてブラボー。1つのことを根気強く続けられるのはウーマンの才能です。やめることもできたでしょうに続けられているのは素晴らしいです。みんながみんなできることではありません。誇りにもっていいとウエバヤシは思います」


「2つ目は、オーダーを聞き間違えたりっていいましたけど、それは、連携ミスもあるんじゃないですか?ウーマンだけのせいじゃないと思います。それなのに一切 他人のせいにしないウーマンはブラボー。誰でも他人のせいにしたくなるのに素晴らしい」

女性と目からゆっくりと涙が落ちる。ずっと抱えてきた辛い思いや誰かに認めてもらいたい気持ちが、彼の気持ちによって爆発したのか。いつになっても誰かに誉められると嬉しいし、怒られると悲しい。


「5年も継続して働いているなんてブラボー」

俺はどうだ?と男は考える。男は、現在無職で何をすることもなくただ、1日1日が過ぎるのを待つだけ。楽しみは新作映画に女優の濡れ場があるかを確認することと、何か間違いが起こって明日 目が覚めたら大金持ちになっていることを期待しながら寝るときくらいか。


「自分 長所がないなんて悩んでいるウーマンいや全てのヒューマンに1つヒントを与えましょう」

「履歴書を書いてみましょう。履歴書には生年月日に、学歴・職歴、特技、好きなことに自己PR。あらゆる情報を記入する欄があります。就職試験に応募するつもりで書くと、履歴書の中身はヒューマンのいいことばかりで埋まります。自分を見つめ直すきっかけにもなると思います」



「すごいねー、ウエバヤシさん」

「この短時間で、2つも悩みを解決してるよ~」

光一はもう、ウエバヤシのとりこだから、何を言ってもそんな感想をもつのではないか。


「はい、第2の悩み解決しました~~」

「ウエバヤシの力ではなく、ウーマンの力で解決しました。皆さん、ウーマンに大きな拍手を、大きな拍手を……」


会場がいい雰囲気に包まれているというのに、1人だけひねくれた考えの男が……

「俺に悩みを聞け、俺に聞けば解決できないような悩みを質問してやるから」

こういうことを言うやつは1人か2人は必ずと言っていいほどいる。


「うぉーー 俺なら絶対に見破れるぞーー」

テレビで見たマジックに対し、自分ならトリックを見破ることが出来るというやつ


「見破られない、俺なら見破られない」

そんな機会は訪れることはないだろうに心を読む男に勝手に勝負を申し込むやつ

そういうやつに限って、いとも簡単に見破られてしまう。



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