③
男は、再び 狭い部屋の中に隔離されていた。家具・家電どころか、箱ティッシュさえも置かれていない。ただの部屋で、ここは刑務所なのかと男は感じる。気付いたらこの部屋、ドアすらない。さっきのことがあるからくまなく探すがどこにも見当たらない。
「何だここは、誰か 助けてくれ!」
と男が叫びそうになったとき、 壁をすり抜けて女性が部屋に入ってくるやいなや、変な挨拶と変な自己紹介を始める。 「こんばちわ、サラキと申します。この世界を終えた人が次へ行く世界の管理人をしております。その世界では、生命の命を全て、私が握っております!」
「さっきのやつだ~~!」
名前はサラキといったものの、前に出てきたシラキと瓜二つ。背丈も顔も同じで、ただ違うところといえばこのサラキ、眼鏡をかけている。
「さっき会いましたよ、またあなたですか、シラキさん」
「違いますよ。私はシラキではありません、サラキです。シラキはこの世界の管理人をしています、私は、次の世界の管理人です。残念ながら今のあなたに手を加えることは出来ませんので、心配ありません」
「ただ、あなたがこちらに来たがっていると聞いたもんで、1度会っておこうと思っただけです。イケメンだと聞いていたので……」
イケメンという言葉はからかわれているだけだろうと思いそのことには触れなかった男。男は、イケメンではない。
「あなた、死にたいんですよね?」
「死んでもいいと思ってますよ。痛くなかったり怖くなければ、死ねば終わるじゃないですか、何もかも……生きていても面白くもないし、幸せでもないので、生きている意味もないです。死ねるのなら死にたいですよ」
「死んでも、終わりませんよ」
「あなたは、死後、天国か地獄に行けると思ってます?行けませんよ!死後は、こちらの世界て生活してもらいますよ。ちなみにこちらの世界1日が48時間になってますので、余計にツラいと思いますけど、楽しい時間も倍ですが、辛い時間も倍です」
「あと、こちらの世界にはあなたのお父さんもお母さんもいないですよ。まだ死んでいない以上はこちらにこれませんから……」
「働かないといけませんねすぐに……嫌でも、紙幣も全く違うので1からですね。0からのスタートですから」
サラキの方がシラキよりは言い方は優しいが話の内容はサラキの方が生々しく厳しい。
「1から生まれ変わると聞いてましたけど、あなたによく似た方からは」
「その情報は間違っています。どの状態から、何歳から生まれ変わるかは私が全て決めます。生まれ変わるという表現も相応しくないかもしれませんね。私は、罪人と自らで死んだ人には厳しいので、楽には生活させませんから」
「なんですか、それ。それなら、死にたくないです」
「辛いから、楽になりたいから死ぬのにそれでは楽になれないじゃないですか?」
「言い忘れてましたけど、1度自殺をしてしまった人は、自殺出来ませんからね?」
「こちらでの寿命に比べて、そちらで残した分の寿命の3倍を足します。こちらでの平均寿命は300歳なので、こちらに来てから長いですよ」
「しかも、先ほどいった通り、こちらの世界は、罪人と自殺で引っ越して来た人に対して厳しいですから……単純それが300年続くんですよ」
「自殺なんてしない方がいいと思いますけど、どうせどんなにあがいてもあと70年もすれば死ぬのですから」
「死んでもいいと思ってましたとは言いましたが、自殺するとは言ってませんよ」
「ええ、そうですか……!」
そういうと、サラキは、左胸ポケットにしまっていた青い拳銃を取り出すと男に向けた。
「では、私が今 あなたのことをこれで撃ってもいいわけですね?」
「ダメですよ、ダメ 死んでしまいますよ」
男は、身の危険を感じたため、サラキの設定を忘れていた。サラキの話だと サラキは、次の世界の管理人で、男に手を加えることは出来ないはず。
「でも、あなたは、死んでもいいですと答えました。ということはこの部屋であなたのことを私が撃ってもいいわけですよね?」
「それは命乞いですか?矛盾してますね」
「デジャブ……」
男はそう感じた。また、いちいち説明しなくてはならないのか、さっきとほとんど一緒でめんどくさいなあ。
「死んでもいいとはいったけど、意味不明な部屋で、いきなり死ぬっていうのは不本意だ、そしてこれは殺人事件になるでしょう?それは嫌です、何かと」
「大丈夫です。殺人事件にはなりませんよ」
「本物と思いました?これはただの水鉄砲ですよ。撃っても死にませんよ」
「だけど撃つことを認めてくれなかったあなたはまだ、生きようとしているわけですね」
「それは、痛いからです。銃で撃たれたら痛くて痛くて痛みながら死ぬことになるでしょう?あくまで痛くなかった死にたいと言ったんです」
「銃で撃たれたら痛いんですか?」
「それは痛いでしょう?」
「撃たれたことあるんですか?撃たれたことないんなら分からないですよね?」
「いや、世間体的に銃で撃たれたら痛いって決まってるんですよ」
「じゃあ、試してみましょうか?」
そう言うと、サラキは左胸のポケットから、もう一丁、拳銃を取り出した。今度は真っ黒の拳銃で、本物っぽそうだ。
「えっ?」
「いいじゃないですか、試しに撃っても、生きる気がない人間を撃っても別に構わないでしょう」
「自殺した人間はそれで全て終わると思っているかもしれませんが、残された方は悲しくて、辛くて、痛くて、苦しいんですよ。自殺する方だけ楽に死ぬって許せません。せめてすごく苦しみながら死になさい」
サラキはそう言い終えたあと、笑顔で男の胸に向けて発砲した。
拳銃は水鉄砲ではなかったが、麻酔銃だったようで、男はただ、眠るだけ……
そのまま、向こうの世界に戻されるのだ。




