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「貴様、全ての世界で、1番最強の存在は誰だ?」
ザルサンスはカッコいい表現を選んだつもりかもしれないが、その言葉使いは違和感がある。最強の意味が、最も強い状態にあること、一番強い事であるため、そこに1番という言葉をつけてしまうと、1番1番強いになる。
「そ、それは、ザッ、ザルサンス様です」
男は、途中で笑いかけたもののザルサンスが喜ぶだろうとそう答えた。
「惜しい、惜しいが、我輩は暫定3位だ」
「現在1位は、ダークマタスーテス星の隣星であるレプチュード星の帝王 ディフェンラッコラだ。やつは恐ろしいぞ、目を瞑るだけでやつの半径5㎞以内にものは全て跡形もなくなる。やつを殺すことができるのは、おそらく俺しかいない、他が行った所で2秒で片付けられるだろう」
「2位は我輩の師匠であるアマンラ様。我輩の能力に 逸速く気づき、戦いのノウハウを教えてくれた。我輩は、最大の恩返しは、師を越えることだと思う。そのためにディフェンラッコラを倒し、レプチュード星を我輩のものにする」
師匠、最強の敵、好敵手、相棒
この病気の患者は、 こういった存在を作りたがる。
「それなら、地球は関係ないでしょう」
「そのレプ何とか星を征服しにいけばいいでしょう」
男の言うとおり、7億光年離れている星からはるばる地球にやってくる時間があったら他にすることがあったろう。この手の患者は設定を壮大に作りすぎるため、のちのちボロが出たり辻褄が合わなくなったりする。
「地球は、完全なる我輩の気まぐれだ」
「我輩の庭はたくさんあってもいいと思っているからな。すでに我輩は21つも、庭を持っている」
「ちなみに、貴様は、いくつ庭を持っているんだ?」
「えーっと、自宅に庭はないので、ゼロです」
「フン、ゼロか……」
「2つか3つほどなら分けてやらんこともないが、貴様、所持金はいくらだ?何かをもらうためには何かを手放さなければならない。これはどこだって常識だろう?」
男は思った。これって何の時間だ?
さっきから中途半端な質問をされては答える。答えてはまた、中途半端な質問をされる。
「そろそろ次のところに行かせてくれ」
男がそう思うが、ザルサンスも思いは同じだ。いやむしろ彼の方が強く思っているだろう。どう終わらせればいいのか分からない。
悪の帝王である以上何もせずに帰るわけにはいかない。だけど何もできない。本当は悪の帝王ではないから。
「ザルサンス、貴様 本当に力はあるのか?ただのペテン師じゃないのか?」
「能力がないのなら、今すぐにでも、ザコサンスって名前に変えた方がいいんじゃないですか?」
男は、わざとらしくザルサンスのことを煽った。
「き、貴様……馬鹿にしおって!」
案の定 分かりやすくザルサンスはキレた。
「貴様、我輩のエレクトロニックラインの餌食になりたいようだな!」
「いいだろう、そんなに望むのなら食らわしてやろう 命乞いをしても、もう遅い!」
「フッフッフ、フッハッハ 貴様は、我輩を怒らせたのだからな、その時点で貴様の命は終わっている」
弱い犬ほどよく吠えるとよく言われたもんだ。
ザルサンスは左手を広げ、男に向けると、呪文を唱えた。
「エレクトロニックライン」
何も起こらないと思いきや、黄色いビームが
ザルサンスの左手から発射された。
「ま、ま、マジで~」
あまりの眩しさに目を閉じた男、眩しい光ではあるが殺傷能力はないようだ。
もう、次の場面へと移り変わろうとしていた。




