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男は、小さな村で目を覚ました。

藁でできた家の中で、藁の敷き布団の上で藁の掛け布団を掛けてもらい寝ていた。


20歳くらいの三つ編みの女性が男に優しく声を掛ける。

「お目覚めになられましたか、私はヨアサンと言います」

「あなたが川で溺れていた所を、兄が助けたんですよ。大変だったでしょう。ゆっくり休んでくださいね」


川で溺れていた?

男にそんな記憶はなかったが、助けてもらったというのならと、とりあえず感謝の気持ちを伝えた。


「ありがとうございます」

「助けていただいたというお兄さんにもお礼をしたいのですが……」


「兄は今、山に柴狩りに行ってるので 少ししたら帰ってくると思うので、せっかくなんでゆっくりしてってください。何もないところですけど……」


「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて」

お言葉に甘えないと、男はどうやってこの村に来たのかも、帰り方も分からない。



「チョコちゃん、エサの時間だよ~」

ヨアサンが、タヌキに食パンをちぎってを手渡しであげていた。猫や犬を飼うように可愛がっている。その姿を男は不思議に思う。


「あれ?」

「これは、タヌキですよね?ペットとして飼ってるんですか?」


「あ、そうなんですよ。他の所から来た方は、大体 珍しがられるんですけど、ここらでは珍しいことではないんですよ。昔からこの村では、幸運を招くって言われているので、普通に、キツネかタヌキをペットとして飼ってるんですよ」

これが文化の違いというやつか……

男にとっては、珍しいと思うことでもこの村では当たり前のことなのである。


これは別に村や町単位に限ったことではない。もっと狭い家庭という環境を見てもある。その家庭では当たり前に行われていたが、外に出てみたらそれは、おかしなことだと指摘される。



「うちでは、家に出るときは、家に対していってきます、家に帰って来たときは、家に対してただいまっていうの、帰る場所があるってことに感謝をするために」


「うちのカレーには、必ずもやしが入っているんです。普通は入れないんですってね、衝撃でしたわ~すっごく美味しいのに」


「うちは、母、姉、僕、妹と女家庭で育ったこともあって、外出先でトイレに行く時、小は、ピアニッシモしてきますで、大はフォルテシモしてきますって言わないといけませんでした。家族間なのに隠語を使わさせられました」


その家庭独自でやられていたこと、いわゆる「家族ルール」と呼ばれるやつである。



「うちは、父と母ともに、私が10才の時に亡くなってからというもの、5つ上の兄が1人で私のことを育ててくれたんです」

「それなのに 私は、ワガママを言って困らせたこともありました」

「この子は、兄が村の人に頭を下げやっとの思いで譲ってもらったらしいのですが、タヌキは嫌だ、キツネじゃないと嫌だって ただをこねて、今ではこの子にして良かったなーって思うんですけど、あの時はキツネの方が可愛く見えて」

父と母を若いときに亡くして、兄弟2人で頑張って生活してきたヨアサンと兄。

男の両親は幸い健康で、なに不自由なく男をここまで育ててくれた。


「俺が、10才の時に両親を亡くしていたら俺は弟を守れたのだろうか?そもそも自分自身も生きていけたのだろうか……」

その答えは恐らく、NOだ。

それどころか、今 両親が、亡くなったとしても生きていくことは不可能だろう。

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